「うぃ〜っく、ぷはー」
暗闇にぽっかり浮かぶ満月。
上等の酒。
「あー・・やっぱ一人で飲むと味気ねぇな」
足りないのは晩酌の相手。
たまには・・・と思って部屋で一人で飲んでみたが
どうにも駄目だ。
騒ぐのに慣れちまうと一人になった時が妙に寒々しい。
俺は飲みかけの酒を部屋に放置して
もう眠ってるだろう部下の誰かを叩き起こして、話し相手をさせようと
ふらふらとドアを開いて部屋の外に出た。
そして直ぐに部下の一人を見つけた。
本当に「すぐ」だった。
何たってそいつは、俺の部屋と茶の間を繋ぐ廊下で
すやすやと寝入ってやがったんだから。
俺は、転がっているそいつを足で引っくり返した。
そうすると、いとも簡単にうつ伏せから仰向けになる。
・・・起きやしねー。
「何やってんだ、こいつは・・」
部下の奇怪極まりない行動に、頭をがしがしと掻きながらも
俺はそいつの前にしゃがみこんで、間近で声をかけてやる。
「おい、ー!」
名前を連呼しても一向に起きない。
それどころか益々眠りの深いところに行っちまった気すらする。
「・・・・・・・・ったく、親切な隊長様に感謝しろよ。ガキ」
年頃だってのに恥じらい一つなく大の字で廊下に転がるこの馬鹿を肩に担いで
俺は自分の部屋に入りなおした。
今日はまだ使ってなかったおかげで、ベッドはまだ綺麗な状態だ。
そこにを寝かせる。
一応、起こさないように・・・いつもより丁寧に扱って。
「ふぅ・・ん・・・・・・ぐぅ〜・・・・・ぐぅ・・」
「呑気にイビキなんかかきやがって・・・・・こっちの立場も考えろっつの」
そう悪態づきながら、ベッドの傍らに座り
マジマジとの顔を見つめる。
枕に寝そべる薄色の茶髪。
過剰に長くはないが、量が多くて黒々とした睫。
ぷっくりとして熟れたさくらんぼのような唇。
触ってもすぐに形が戻る柔らかで弾力のある頬。
ふわんと香る女特有の甘くて柔からかい匂い。
喰ったら、さぞかし甘酸っぱいんだろうと思わせる年頃の
見た目だけは立派な女になったやつが
警戒心を全く働かせず。自分を好いてる野郎のベッドで寝るなんて・・・
無邪気を通り越して、いっそ馬鹿だ。
はっきり言って、男にとってこれ以上最高のシチュエーションはねぇだろ。
「起きねーと襲うぞ、コラ」
起こす気なんて無いのが丸分かりの声。
本気で起こしたいなら
一発耳元で叫んでやるか、擽るでもして起こしゃいい。
それをしないのは起こす気なんて更々ないからで
「起きるなよ・・・まだ、起きんな」
こっちが本音。
まだ見ていたい。
成長は見届けてやれなかったが
こいつは紛れも無く
俺が拾ってきた俺のもんだ。
これからは、ずっと
俺の傍にいさせる・・・・・・・。
「まだ起きるんじゃねーぞ・・・・・・・・もうちっと顔、見せとけ」
起きたら、すぐ動き回っちまって
こうやってゆっくり顔見れやしねーんだからよ。
「たまにでイイ、ちゃんと俺に顔見せろ」
元気を押し付けてくる
あの笑顔も堪らなく愛しいが
あどけなく眠る
この寝顔もどうにも捨てがたく
どっちも掛け替えのない宝。
「俺の残りの人生、全部お前にくれてやらぁ。・・・・だからよ」
人工的な光が部屋から消える。
差し込む月明かりが
眠り姫と、傍らの獅子をそっと包みこむ。
獅子は姫に近づき、指先一つ触れずに囁いた。
「お前もこれからの人生・・・・俺に捧げろ」
そして月を睨んでこうも言った。
俺はもう、一生こいつを逃がさない・・・・・・と。
*あとがき*
意外とナチュラルに書けました。何故かラストは物語風(意味はありません)
隊長がヒロインに抱いてるのは多分恋心じゃなくて
父性愛と独占欲と愛護心が入り混じった、純粋な愛情なんだと・・・妄想していいですか?(聞くな)