「高松ぅー!」
「どうしたんですか、ブロウ」
「あのさ・・・ちょっと相談したいんだけど・・・・・」
来たとたんに赤く染まった顔で、すがるような眼で私を見上げる。
まったく・・・しばらく手元から放しているうちに、一体何処でそんな仕草を覚えたのやら。
うっかり鼻血が出るところだったじゃないですか・・・。
「高松?」
「いえ、気にしないでいいですよ。・・・それで何です?相談って」
焦りを表情に出さないように、落ち着きを取り戻してから
ブロウの相談とやらを問い返す。
するとブロウは少しばかりたじろぎながら、
「実はさ・・・・・診てほしいところがあるんだ」
「また何処か怪我でもしたんですか?」
「いや、怪我じゃないくて・・・」
「それじゃあ・・・・まあいいです、とにかく座んなさい」
私は取り合えず立ったままのブロウを
患者用の椅子にと座らせた。
「私になにを診てほしいんです?」
「えっと、ちょい待って。今見せるから・・・」
そう言うとブロウは突然上着を脱ぎ始めた。
驚きのあまり突っ込むのを忘れている私を尻目に、更にハーフパンツも脱ぎすて
最終的には昔に私が作ってあげたアンダーウェアだけとなる。
見せびらかしても決して恥ずかしくない瑞々しい張りのある四肢が
私の眼前に晒された。
「(・・・・・・これは、誘われているんでしょうか・・・?)」
ブロウにそんなつもりがあるワケが無いと分かっていても期待してしまう。
どうしようもないほど悲しい男の性。
さっきは寸止めできた鼻血も、今は濁流のごとく流れ落ち床を汚している。
「高松!?鼻血すげぇよッ?」
「アンタのせいですよ、アンタの・・・」
己の鼻から、垂れるを通り越して流れている赤々とした液体を止めるため
私は手近にあったタオルで鼻を覆うようにして抑える。
・・・それにしても、こんな大出血は久々ですね。
「何のつもりか知りませんけど、さっさと服を着なさい」
「え、診てくんねーの?」
「・・・・・見てほしいんですか?」
素肌を、私に。
更に流れる鼻血。
ブロウがこくりと頷けば、その勢いは増すばかり。
流れる鼻血の量は既に体内の水分量を超えている。
「うん。ほら、なんか体中に変な赤いの出来ちゃったんだよ」
「赤い・・・?どれですか?」
差し出された手には確かに、小さな湿疹のような赤みが幾つも見られる。
よくよく見てみれば手だけでなく足にも背中や腹部にも。
「おやまあ、一体いつからです?」
「朝から。もう痒くって痒くって・・・」
「そりゃそうでしょうね、蕁麻疹ですから。そのへんに落ちてたものでも食べたんじゃないでしょうね」
「拾い食いなんかしてねーよ!!」
「それなら・・・・ん?ブロウ、ちょっと顔見せなさい」
「え、」
ブロウが頷く前に、顎を掴んで顔を引き寄せる。
傍から見たらまるでキスでもする直前のように。
近づいた顔に驚いてかブロウの顔が、ぼっと火照った。
「赤くならないでください、肌が診にくいじゃないですか」
「んなこと言ったって・・・いきなり吃驚するだろ!馬鹿松」
「ばっ・・・・あとで覚えておきなさい、じっくりお仕置きしてやりますからね」
「ぐぅ・・・ごめんなさい」
お仕置きという言葉に、少なからず動揺して素直に謝るブロウ。
その頬をそっと撫でてみるが指から凹凸は感じない。
「ふむ、顔には無いようですけど・・・・なにか思い当たることはないですか?」
「うーん・・・・あ!そういえば・・・」
「なんです?」
「昨日マーカーが中国土産に買ってきた薬湯の風呂に入った」
「それですね。湯船に長く浸かってたせいで顔以外に発疹が出たんですよ」
中国製の薬湯は効果が強いものが多いから
きっとブロウの肌には、まだ合わなかったんでしょう。
私は薬品棚の奥から、被れに効く軟膏クリームを取り出して蓋を開けた。
中身は半分ほど残っており、これならブロウの全身に塗っても事足りる。
「ブロウ、こっちのベッドにうつ伏せで寝そべってください」
「りょーかい」
「今着てるそのウェアも脱いで、ですからね」
「げっ、やだよ。真っ裸なんて!」
「我侭言ってんじゃないですよ。前は兎も角、後ろは自分じゃ塗りきれないでしょうが」
「うぅ・・・・でも・・・・・」
「でももへったくれもありません。それとも自分で脱げないなら私が手伝いましょうか?」
「〜〜〜っわかったよ!!自分で脱ぐからこっち見るな!」
「支度が出来たら呼ぶんですよ」
真っ赤になってカーテンで私との間を遮断する。
カーテン越しに微かに聞こえる布ずれの音が、耳に悪い。
ったく、こっちの心境も知らずに勝手なこと言ってくれますね。
私がどんだけ堪えてると思ってるんですか・・・。
「ブロウ。脱ぎましたか?」
「・・・・・・うん」
「それじゃあ入りますよ」
さっ、とカーテンを引いてすぐにしめる。
軽く息を吐いてから、ゆっくりベッドを見ると
当然ながら、そこには薄っぺらいシーツで首から下をすっぽりと隠しているブロウがいた。
自分で促したこととは言え、正直、心臓に悪い。
シーツ一枚剥いでしまえば、ブロウは生まれたままの姿。
恐らく誰にも触らせた事がないであろう無垢な身体。
口内から乾いた咽に、生唾が落ちた。
「さあ、うつ伏せになってください。」
「・・・わかってるよ」
これ以上ないくらいに赤く染まりあがっているブロウの顔を見るだけで
むしろ仰向けに押し倒したい衝動に駆られる。
シーツの中でもぞもぞと動いてる様子を見るだけで
すぐにでもその布を奪い、手足を抑えつけたくなる。
理性を総動員させて、一刻も早く平静を取り戻そうと
ブロウに気づかれないように深呼吸をして、余計なことを考えないようにする。
・・・が、その努力もブロウの姿を少し瞳に映すだけで、
情けないほどに、あっけなく、無駄に終わる。
「・・・・・・高松?薬塗るんじゃねーの?」
「ッ!・・・・え、ええ。今塗ります」
恥ずかしさから多少なりとも脱出したのか、
それとも開き直っただけか。
どちらかは分からないが、ブロウは自分から治療を催促する。
私はブロウの背中を覆っているシーツを、静かに退かした。
肩から腰まで華奢な背が私の眼に触れる。
指先に軟膏クリームをたっぷりとつけ、背筋に沿って塗りつけた。
「ひぃッ!」
「色気のない声ですね・・・。あんた一応もう17でしょう?」
「うるせー。色気なんかなくっていいもん」
薬が背に満遍なく行き渡るように、丁寧に手のひらで塗りつける。
発疹はあるものの、肌自体は滑らかで
手入れをしていないのが信じられないほどに撫で心地がいい。
「あ〜・・・・・ん〜・・・」
「なに唸ってるんですか?」
「・・高松の手、気持ちいい・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・」
思わず溜息を吐く。
「・・・終わりましたよ。あとは自分でやってください」
「あ、うん。わかった」
ブロウの顔の横に薬を置いて、早々にカーテンの外に出る。
やっとまともに息が吸える。
「これだから頭悪いやつは・・・」
しかも無自覚で言っているんだから余計に性質が悪すぎる。
「あの状況であんなこと言って・・・・私に何をさせる気なんだか」
育て方は間違えたかもしれません。
でも、
育ち方は間違っていなかった。
ブロウの発育ぶりをこの目で確認して、それだけは断言できる、とある日のこと。
あとがき。
いつもよりちょっと長くなりました。
仕方ありません。だって高松の話し方こむずかしいんですもの!!(人のせい)
ロッドとかハーレムなら短くて済む物言いも、この人だと一々長い・・・。