「けッ、どいつもこいつも骨がねーなァ」




瓦礫の一角に腰を落ち着けて、手持ちの酒を煽りながらぼやいた。
靴裏にゴロゴロ感じる感触はさっき吹き飛ばしたビルの破片。

濡れた砂利を踏んでるようにザラついているのは、敵兵の血肉。




「誰でもいいからよぉ…もっと俺を楽しませてみろや、なぁ?」




転がってた頭を足蹴にする。
当たり前だが、返事は無い。





退屈で仕方なかったんで任せっきりだった前線に降りてみたっつーのに…





周辺には半壊した町並みしかない。


十数人いた武装兵はアイサツ代わりの眼魔砲一発であらかたが片付き、
運良く残った者も今頃はご先祖様と感動のご対面でもしている頃だ。






あまりの手ごたえの無さに腹が立ってくる。

酒瓶を垂直にして飲むと、口元から色濃い液体が零れ落ちるのと相まって、
癖のある苦味と辛味がダイレクトに喉を通過した。

むせ返るような血の臭いが充満した此処での酒は、格別に…極上の不味さを味わえる。

口から溢れたそれは、首を伝って流れ、服を濡らす。
返り血ひとつ無いワイシャツについた染みは、最初ルビーのように艶やかだったにも関わらず、
血のように茶色っぽく色を変えた。







「……散歩でもすっか」






こんな白けた場所にいても酒が不味くなるだけ、と判断し空を見回すと、
タイミングよく左手側の空にプラズマが走ったのを確認できた。


天気は別によくはない。
だからと言って雷が鳴るような空模様じゃない。
パッと、とある部下の顔が思い浮かぶ。




数ヶ月前に日本で見つけた新入りくんも、そろそろ仕事に慣れてくるころ。
もしもまだ手間取ってるようなら給料さっぴく必要がある。




今度はいくら借りようかと考えながら足元の頭を軽く蹴っ飛ばし立ち上がり、
すっかり空になった酒瓶を後ろに放った。






ガチャ――ンッ!!




「なんだぁ?!」





酒瓶が割れたにしては余りにもオーバーすぎる破裂音にギョッとして後ろを振り向くと
半壊したビルの3階の窓から硝子の破片と共に、

人間が空中を醜く舞っていたところだった。




その服には見慣れたマークが入っていて、一目でガンマ団の兵士だと解る。

助ける義理も意思も人情も無いので、特に何かするでもなく放っておけば、
兵士は頭から着地してそのまま動かなかった。







今の若ぇやつらは、着地もまともにできねーのか?



おいおい、マジックの兄貴。
息子にムダな愛情注いでるヒマなんかねーぞ。
本腰入れて士官学校の坊ちゃん方をどーにかしねぇと、愛する息子に世代交代する前に
ガンマ団がぶっ潰れちまうぜ。







そう思ってた矢先、すでに割れた窓から音も無く2人目が落ちてきた。
先の者と同様に着地できずに背中を強く打ち付ける。

ぐってりと落ちた手が、意識の有無までを物語っている。







今の落ち方から見ても、落ちてくる前から気絶していたとしか思えない。
見た限り死んではいないようだが


戦場での気絶は死を意味する。




気を失った時点でそれ即ち死。


どーいうことだ?





後から落ちてきたやつの頭が力無くこっちに傾いた。
鼻と口から汚らしく垂れた血の痕は古くも新しくもなく、傷や痣は少なくない。

涙と汗と唾液と血とで汚れた顔は、いかにもな厳つい中年だった。







「あいつぁ確か…」



見覚えがあるような気がしないでも無い。
ありゃ兄貴に呼び出された時、俺にガンたれてきた士官長だ。



士官長というぐらいだからそれなりの実力者な筈。
それが戦地のど真ん中で気絶…




上に注意を払いながらも興味本位で近づき、先に落ちてきたのの面も見てやろうと
足で引っくり返した。



こちらも見たことのあるお偉い所だ。



よくよく見れば服の所々は溶けたように破れ、火傷と凍傷もあちこちにある。
酷い箇所のは細胞が壊死して青黒くなっていて、今にも虫が食い破って出てきそうだ。

生理的に気色悪い



こういうのを確か「虫唾が走る」っつーんだったな。
ん?なんか違ぇな。

ったく日本語は難しいぜ。







「おーい、生きてっかぁ?」





つま先で小突くとわずかながら反応が返ってきた。
やはりまだ生きている。


血色の悪さからするに、ここ2〜3日は昏睡してる。




下された特戦部隊への緊急出撃命令。


数だけで大した敵兵の居ない目標地。



そんな地区で士官長クラスの人間が2人も行方知れず…







「クククっ…そーゆうことかよ兄貴」



俺達が派遣された理由がようやく解ったぜ。


謎だったマジックの考えが、ジグソーパズルが組み立てられていくように読めてきた。







「いるんだな。面白えやつが……此処に!!」





握った拳に爪が食い込む。

今の俺の顔は多分、さぞかし楽しそうに笑んでいることだろう。
まだ見ぬ敵に対する純粋な期待に冷め切った胸が熱を吹く。



暇つぶしには持って来いだ。

十数年ぶりに感謝するぜ、兄貴。

これでまた十数年は感謝しねぇですむ。





さ〜てと、何でもいいから俺を楽しませてくれよ…





正体不明の獲物をターゲットに決めた獅子が、ギラリと輝く瞳で兵士の落ちてきた窓を
見上げるが、そこに人影はない。





気配を消して俺も殺る気か?

ますますいいぜ。




血ガ鳴キ喚ク






「いつでも来いや」





誰にとも無く口走ったハーレムの声は、シンと静まりかえった空気に消えていった。
乾いた風が金の髪を攫うように巻き上げる。
砂埃に混じってナニカが、ハーレムに当たっていた弱々しい日の光を遮った。



暗がりと同時に感じる、確かな人間の気配。







「バレバレだあッ!
うぉおっ!?




ドサッ!!



ギリッと音が聞こえるほど強く握った拳でカウンターを狙った気配は
3人目の落下物。





その後に続いて4人目、5人目、6人目…
蛇口から滴る水滴のようにリズミカルに落ちてくる。





「お〜お〜、まだ落ちてくんのかぁ?」





終いには10人もが高く同じ場所に積みあがった。
拍子抜けしたハーレムは、その様子を片肘ついて、ただボーっと眺めてた。

ぱっと見、全員最初の2人と似たような状態。
全身の至る箇所に散らばった、痣と火傷と凍傷。
症状は重度だったり軽度だったりとまちまちで、気絶してるだけの根性なしもいれば、
瀕死で虫の息のもいる。

一応誰も死んではいなかったようだ。



そんなことよりも、こいつぁ…






「日本で買った玩具に似てんな…」



リキッドを見つけた日本で見つけた『だるま落とし』とかいう玩具。
目の前に積みあがったそれはまさにそのまんまだった。

目の前にそびえ立つ『人間だるま落とし』をやるにゃハンマーが欲しい。

素手でやるか?







「おっちゃーん!それ全部持って帰れよ」




背後のビルからかけられた場違いなくらい明るい声。


どうやって遊ぶか考えてたのを邪魔したのは11人めの
人の気配。







「おっちゃんの仲間だろ?」

「こ…ども……?」


崩れかけた窓枠から身を乗り出している姿が見える。


低いというより小さいといった背丈。
華奢という以前に未発達な四肢。
頭と上半身が同じサイズの等身。
パーツが中心に寄りがちな幼少期特有の顔つき。

どれをとってもハーレムの言う通り…子供だ。





「よっと!」




堀でも飛び越えるように迷うことなく宙に躍り出た。
クルンと一回転して軽い音を立てただけで地面に降り立ち、目の前までやって来る。




「邪魔くさくって、すっげぇ迷惑してたんだぜ」





格好はストリートチルドレンと大差ない。

首周りが伸びきって肩が見え隠れするような安物のTシャツに、
サイズの合っていないダボついた半ズボン。
一体どのくらい長い間履いているのか見当もつかないスニーカー。

服が所々が破けたことも含めて、全てが貧相さに一層拍車をかけている。



こんな子供が戦場に居るわけが無い。
居るとすればそれは…





同業者。




「な〜、聞いてんのかよ」




声変わりもしてない高いソプラノ。
その気になれば踏み潰せそうな小柄な体は多く見積もっても、やっと10歳に届くかどうか…。




「こいつ等オメーがやったのか?」



別に可笑しい話ではない。
その手の家系なら物心がついてすぐに殺し屋になることだって珍しくなければ
組織によっては生まれたばかりの赤ん坊に拷問を課すことだってある。
厄介なことに実力とは見た目では計れない。




「どうなんだ?」
「…うん。オレがやった」



少し渋った後、胸の前で手を弄りながら認めた。
何者にしても不審者だということは、これで確実になった。




片付けておいたほうが無難だな






「けどさ、オレ悪くねぇよ」




しれっとした金色の瞳に殺気をそがれた。
問答無用で眼魔砲を仕掛けようとしていたが、なんとなく…

なんとなく正体不明のこいつの言い分を聞いてやりたくなってしまった。



朝日と満月を重ねているような、不可思議な金色…。




「言ってみろ。聞いてやんぜ」
「だから、こいつらが悪ぃんだって!オレの食いモン横取りしよーとしたんだ」
「あぁ?」
「しかも鉄砲なんか撃ってくるし、当たったら死んじゃうじゃんか!」



一括りにした麦わら色の長い髪をうっとうしげに払って、ジェンガもどきの兵を蹴り崩す。



どうも話が噛み合わない…


それではまるで食べ物欲しさに戦地に居たみたいだ。



さっぱり解らない。




「テメェほんとに何者なんだ?」
「オレ?オレはってーの。おっちゃんは?」
「俺ぁハーレムだ」
「ふ〜ん。で、ハーレムがちゃんとこいつら持って帰れよな」
「なんで俺が…って!そうじゃねぇ」
「ごみは持ってかえらねーといけないんだぞ!!」
「黙れガキ、人の話聞けっつーの」
「ガキでわりーかよ!さっさと持って帰れバーカ」




ギャースカ喚きやがって…くそガキが。


どごすっっ!!!


あんまりウルセーから腹に一発入れてやった。
こんで少しは大人しく…




「いって〜なぁ!ッにすんだよ!!」



ちっ、リキッドよりもタフだな。



「そろそろ吐け。オメーだってぶっ殺されたくねぇだろ」
「吐くってなにを」
「バックはどこだ?」
「バック?オレ今日は手ぶらだから持ってねーよ」

「そりゃバッグだ、意地でも言わねぇ気か」



嘘をついてるカンジには見えないが、信用できねえ。
大体、殺し屋なら顔に出さずに嘘をつくなんて当たり前だ。

目的は大方、俺や兄貴の命。




「言っとくが俺はこの雑魚共みてーにはいかねぇ…わかんな?」
「なんとなく」
「なら言っちまえ」
「なあ、オレお前の言ってること難しくて、よくわかんねーんだけど」
「ガキじゃなくて猿だったか……」
「オレ猿って見たことない。どーゆうの?」
「………」




だめだ、埒が明かねぇ…
とりあえず刺客でも殺し屋でもないらしい。

考えてみりゃ武器も持たないで敵の間合いにノコノコ入ってくる馬鹿が、
そんな高等な職業できるわけねえわな。



でも…じゃあ、何なんだコイツは。





「オメーよ…俺と戦ってみねーか?」




もう殺し屋だろうと、暗殺者だろうと、どうでもよくなっていた。
頭の中にあるのは一つ。
この子供が自分を楽しませてくれるのかどうか。
それだけだった。





「腹減ってるからやだ」
「そう言うなって。俺様は強ぇぜ」



強いと言われて戦うやつがいるか?

答えは、YES。



「それにお前は…」



こいつは間違いなく俺と同じタイプ。
強いやつに魅かれ、強いやつと戦うのが好きな…




「…本物の戦士だろ」




問いかけでない確信の言葉。

俺は同類なら眼でわかる。

特にこいつの眼は、今まで見たこともない好戦的でクレイジストな眼だ。
案の定、俺の言葉で金の瞳が明かりを増す。



「うん、戦うのはすっげー好きだよ」



ほらな…戦うことを楽しむ獣の眼光。
戦場で生き、他人の死で咽の渇きを潤す獣。



「俺もだ。強いやつと戦いてえ…。相手がガキだろーが何だろーがなv」
「でも腹も減ってんだよなぁ」
「俺を満足させられりゃ腹いっぱい食わせてやってもイイぜ」
「マジ?やる!!」
「そーか、なら…おっ始めようぜ…!!」



大地を蹴った勢いで、目の前の小さな身体の真ん中に膝をぶち入れる。
その身体は大きく「くの字」に曲がって見せたが、軽く当たった感触のみ。
手ごたえは全くない。


的になった腹と凶器をも言える膝の間を阻んだのは…の手のひら。
自分の身体に襲い掛かった蹴りに、冷静にタイミングを合わせてで後ろに跳んだせいで、
ダメージも0。




いい反射神経してるぜ。



「ガキの分際でよぉ!!」



続けざまに首を目掛けて振りかぶった腕も紙一重でかわされる。
身体の大きさが災いしてが死角に入り一瞬見失ったものの、養われた勘が危険を察知し、上半身を仰け反らすと、顎を狙ってた拳が跳び出してきた。

うっかり瞬きでもしてれば確実に取られていた。





「ちぇっ、決まったと思ったのにさ!」
「まだまだ甘ぇな」
「ぜってー当てるっ!!」




ハーレムの腰までしかない身の丈を巧いこと生かし、接近戦を続ける
身長差にも体格差にも物怖じしている様子は全くない。
それどころか、その差を利用して死角という死角に尽く入り込み、
隙あらばカウンターを狙ってくる。

洗練された動きから繰り出される打撃は、子供の体重からは考えられない重さ。
下手をすれば部下と同等レベルの子供を目の前に、ハーレムの口は始終浅い弧を描いていた。

幾ら本気じゃないとはいえ、面白いったらねえ。




「くくッ、やるじゃねーか」
「本気出せよオッサン!」
「出させてみろや」
「ムッカつくなぁ、見てろよ」



今まで間髪入れない攻撃をしていたがハーレムの払って、その胸を蹴った。
明らかにダメージを送ることが目的でない。
打撃範囲から出たは数秒間全く動かず身体を低くしたまま、こちらを見ていた。

その姿は獣そのもの。



「……これならどーだッ!!」





居た場所に影だけを残して消えた。
油断していたわけではないのだが、最初の一歩を確認し損ねた。
それを見逃さずに確実に懐へ飛び込んできた拳を間一髪で直撃するのだけは免れたが、
かわし切れず僅かに頬を掠めた。



「あちッ!!」



頬の下から上にかけて走る、突き刺さる熱い痛み。

距離を置いて手を当てるが血一滴出ていない。

なんだ今のは。マーカーと同じ発火体質か…?
だが火なんざ見えなかった。






「待った無しだぜ!」
「っと、ぶわッチィィィ!!!」




ビルの壁を使って上から飛び蹴りをしてきた
的だった顔を軌道からずらし、通り抜ける足を掴んで捕まえようとしたが、
触れた右手を尋常じゃない灼熱が襲った。


思わず明後日の方向に投げ飛ばし、ジンジン痺れる右手を直視する。
幸いにも軽症ですんだが赤く腫れた状態から火傷だとわかる。


普通の人間に触っただけでは起こりえない症状。




「随分と変わった身体してんなぁ、坊主」




初めて見る特異体質だ。
部隊には火、風、地、雷しかいないから、居てもあと水くらいだと思っていた。
しかし今戦っている子供が操るのは温度。

派手さがない分、知らずにあのまま接近戦を続けていたら…


火傷を負った方の手が汗で濡れる。


吸収の悪い皮パンで適当に拭いて、兵士の残骸に突っ込んだからの返事を待つが、
本人は大柄な男達に埋まってた姿はなかなか出てこない。



「いててて…




崩れた山から手が出てきて頭も出したところを、後ろ首を掴んで脱出を手伝った。



「こいつら汗くせ〜、塩っぽい!!びっみょ〜にイカ臭い!!」
「一般兵なんざそんなもんだ」
「うげぇ〜。さいあく」




ぺっと唾を吐き出しながら、心底不快な面持ちをしているを、
猫持ちで視線の高さまで持ち上げると訝しげに首を傾げる。

しかしその眼はまだ戦る気満々のように見えた。






「発熱体質たぁ面白ぇじゃねーのv」



どうやら体温を急激に上げての打撃と火傷の二重攻撃がこいつの攻撃手段。
口には出さないが、全身を発熱させた状態で跳びつかれでもしたら
恐らく痛いじゃすまない…。





「おら、どうする?ネタが割れちまった以上、テメーに勝ち目はねぇぜ?」
「…………」



初めて黙り込んだ。
負けを認めたのだろうか?


が口を閉ざしたとたん、やたらと手が冷えだす。
次第に露出した顔の部分には冷気が漂い、寒気を覚えるほどだ。

特戦部隊長ともあろう者が、こんな子供に臆しているというのか?
いや、あり得ない。

確かに強いのは認めるが、俺が恐怖を感じるようなヤバい強さじゃねぇ、
この寒気は…




「っイデ!?」



考え込んでボーッとしてた頭を現実に引き戻した体感異常。
の触れた腕にクッキリ残っている青っぽい手形。



触られた瞬間は熱く感じたが、熱じゃない…
頬のと同じで、皮膚を突き刺し引き裂くような痛みだった。




「こりゃ凍傷か…?」
「そ!だから発熱体質じゃなくって変温体質!!すっげぇだろ」



己の能力を恐れも恨みもせず、授けられた力を純粋に喜び
誇っている。
そうそう出来ることではない。



自虐にも邪心にも狩られず、本当の意味で獣だ。

自分の力を活かすことを本能的に知ってる。







「…気に入った」



気に入ったぜ。
強さも能力も申し分ない。

ちーっとばかしガキすぎるが、まあどーにかなんだろ。




さぁーてとv帰ってメンバーの申請し直させっか♪


























「おっかえんなさ〜い…って隊長、なんすか?その子供」
「隠し子ですか?」
「おい、人聞き悪ぃこと言うな!面白ぇから連れてきたんだよ」
「人さらーい!!何なんだよ離せってば、自分で歩けるよ!」



既に目標地点を離れる準備のできていた飛行船は、隊長の帰りを待つばかりだった。

そしてようやく戻ってきた隊長は肩に荷物を担いでいる。

しかも活きのイイ子供。




「クソジジィ!早く降ろせぇっ」
「…それにしても、前回にも増して小汚い拾い物ですね」
「汚くねーし拾われてもない!!!」



艶やかな黒髪の男…マーカーが、肩の荷物…改め、に対して軽い毒を吐く。
ハーレムは降ろす気が無いらしく、お気に入りの玩具を褒められた子供のように
上機嫌で笑ってた。


甘いハニーブロンドの髪が口笛を鳴らしながら、担がれていることに不満爆発させている
の顔を弄くって、厭らしくない程度に目元と口元でニヤける。




「今度のはまた随分とチビっこいっすね。まあリキッド坊やよか可愛がりがいはありそぉけど〜」
「可愛がられたかねーよ」
「ん〜vつれないぜぇ、リキッドちゃん」




リキッドと呼ばれた若い青年はに負けじと劣らぬ嫌悪に溢れていた。
そんなことは気にもとめず笑いかける男は、改めてを見る。


は値踏みするような視線に気を悪くすることもなく、
それどころか男の顔に向かって同じような視線を送る。



お互いがお互いの顔を鑑定し合う微妙な構図。



「俺ロッドvカワイコちゃんお名前は〜?」



鑑定を先に終えたロッドが甘い声で自己紹介をする。
どうやら気に入ったようだ。




、お前すっげー垂れ目だな。どうやってんの?オレもやってみたい」
「どうもやってねーよ、天然物だっつの」
「ふ〜ん…人の目ってそんな垂れるんだ…おっもしれ〜!」
「ってぇ!引っ張るな!!」



ただでさえ垂れてる目をの手によって更に外下がりにされ、堪らず離れる。

ロッドが届く範囲から出てしまったことに直りかけた機嫌は急降下して、
再び手を伸ばしたり足をジタバタさせて暴れるが、元網の中であった。






「隊長、この坊やも特戦部隊に?」



此処に連れてきたという時点で入隊させることは判っている。
だが一応確認をとりたくなるのも道理。
何たって連れてきたのが、10歳にも見えない幼子なのだから。



「おう!なかなか使えるぜ、こいつ」
「とてもそうは見えませんが…」



上司の肩に居るため自分より高い位置にいる幼子を見上げると、ロッドを見たときと同じ目をしたと視線が被る。



「さっき見た時も思ったけど…お前も変な目〜。つってるつってる!蛇みてぇだな」
「…うるさい、黙れ小童」



面と向かって言われ内心傷つく年齢不詳の中国人。



「どーでもいいから降ろせってば!降ろせ降ろせ降ろせ〜〜〜っ!!!」
「うっせーなぁ、おいリキッド!!」
「なんすか?」
「こいつに電撃かませ、意外と頑丈だから思いっきりな」
「……………ま、マジっすか…?」
「たりめーだ。早くしろ、耳がキンキンしてんだからよぉ」
「でっ、でも…」



いきなり子供に電撃かませと言われて出来るか!?
なんつーこと言いやがんだ、この獅子舞!!





「私がやりましょう」
「へっ?」




シュオッ!




騒いでいたの首に切るような手刀がキレイに決まり、
小さく咳き込んで…静かになった。


完全におちたのを確認するとハーレムは肩からを落っことし、
ロッドは足を持って逆さのまま持ち上げて邪魔にならない場所までどけた。


そしてGが気絶したの写真を取り、さかさかと申請状を書き出した。

行動を起こした者達は誰一人として動じなかった。
まるで日常雑務でもこなすように、いたって自然体だった。




「……(子供相手になんつームゴいことすんだ、コイツ等…)」



リキッドは(今更ながら)改めてこの部隊の異常さを悟ったそうな。









―その夜―



「なに、ハーレムがまた外部から入隊させただと?仕方の無いやつだ…」



ティラミスから受け取った申請状を見て、ため息混じりに呟く。

本来ならば、士官学校や一般課から、残忍かつ優秀な(変わり)者を斡旋する。
言わばガンマ団の精鋭集団でありエリートと中のエリート。

それが特戦部隊であったはず。



実弟の身勝手な行動に、育て方を間違えた…と後悔してもし足りない。





「今度はどんなのを拾って来たんだ……む?」 



みるみる内に赤い服の男、マジックの顔がきつくなる。
書類を持ってきた2人の秘書の身体は、マジックから発せられる雰囲気に呑まれ
緊張が走っていた。




こっ、これは!!」



申請状と送られてきた写真を見てワナワナと手が震え
秘石眼が光を放った。




「ティラミス!チョコレートロマンス!」
「「はっ!!」」
「紙とペンの用意だ」
「「はっ??」」



何かと思えば、紙と…ペン?




「この子の部隊服は特別に私自らデザインする!!」








翌日昼過ぎ。

少々デザインの異なる隊服と、諸々の私服とが巨大なダンボールに箱詰めされて
ハーレムに手渡されることになる。









お終い お終い
今まで創ってきた生きるためだけの物語

始まり 始まり
今から創っていく生きていたくなる物語

深い安らかな寝息 それがキミの本当の産声なんだ









END






後書き(読みたい人は裏返して下さいな)

PAPUWA書いてしまいました〜。初っ端からハーレム様なのは私の趣味。
いやぁ、ヒロイン子供ですよ。子供。
でも実は童顔なだけで実は20歳…

なんつーことはしません。正真正銘のお子様ランチです。
いろいろ突っ込みどころ満載なのは見ないことにして頂きたく思います。
戦うヒロイン好きなんですよ。
このまんま行けばきっと特戦部隊は光源氏計画に精を出すことでしょう。
まだ誰も女だとは微塵も思っていませぬが。

ヒロインの外見は…手っ取り早く言うと、最遊記の(髪長いときの)悟空でも想像していただけると
分かりやすいかと思います。
髪の色は違いますけどね。