歩く足が重い。
背中にでっかい荷物しょってるせいだ。



「誰も見送ってくんねーのかよ」



自分の足音と独り言しか聞こえない廊下。
ここに来てから飛空艦の中が静かだったことなんかなかった。
昨日みんなのとこに戻った後の宴会を思い出すと、余計にムナしくなる。



最後の階段を下りた。
壁のボタンを押すと、立ってた床が下に動き出す。




「捨てられるの2回目だし…さみしくねーもん」




寂しくなんかない…ちょっと悔しいけど。




プシュ――ッ……

外…。
あとは地面に足をつけるだけ。

たったそれだけでオレは…特戦部隊を抜けるんだ…。




−タン

足の裏が確かに地面を踏んだ。

見上げると、圧倒されるような丸い飛空艦がオレを見下ろしてる。
1年間これがオレの家だった。







「泣くもんか」



絶対泣かねぇ…

だって、別にサヨナラするんじゃねーもん。




背負ってた荷物を置いて、その上に立った。

オレの声が、ちゃんと高い場所まで届くように
オレの言葉が、ちゃんとアイツらに聞こえるように




「ハーレムっ!!」


息継ぎはしない。


「ロッド、マーカーG!リキッドォ!!」



咽が切れるくらいの大声で叫ぶ。
驚いたみんなが、別々の窓からコッチを見てる。


一番高い窓からは金色の長い髪の毛が

逆に一番低い窓は黒と金の2色髪が

見覚えのある位置の窓は細身のやつが寄りかかってる。

前の方の窓からは光を反射させる白い肌が乗り出していて

操縦室は服を持ったやつがジィッと見下ろしてる。





「オレ強くなる!」



更に大声。
奇声に近いようなでっかい声。

自分の声で耳がビリビリしてる。

振動しすぎた鼓膜も悲鳴をあげてる。

痛い。




「今よりずっとず――っと強くなってやるッ」



目を閉じて

叫ぶことだけに身体を使う。


背後からロッドの羅刹風みたいな風が吹いて、オレの声を舞い上げた。




「本部の奴らみーんなギタギタのベコベコのガッチャガッチャにぶっ倒して…」



これは約束じゃない




「絶対戻ってくるっ!!」



目標でも夢でもない



「そしたら…今度は追い出されてなんかやんねーからなッツ」



これは、宣戦布告だ。


弱い女はいらない。


だったら、



「オレが世界最強の女になって殴りこみ来るの待ってろよォ――!!」



空気が震えた。

咽の奥から血の味が込み上げてくる。本当に咽が切れた。

でもそれ以上に頭と肺が痛くてたまらない。
どっちも酸素が足らなくて機能が果たせてないみたいだ。

ヒリヒリと空気で擦られたような痛みで、咳き込むことも出来ない。




「はッ…ゲホっ……はぁ…」




ちゃんと…聞こえたよな、オレの声。


手を膝について下の方にあった空気をめいいっぱい吸い込んで
今度はキッと上を…



飛空艦を見上げた。


幾つもある窓の中の5つに人の顔が見える。





「あっ…」


みんな笑ってる。

聞こえたんだ。

ちゃんと、聞こえて、








飛空艦を中心に風が巻き起こる。
髪と服を持っていかれるんじゃないかってくらい強い風。

吹っ飛ばされないようにするのだって一苦労だけど、ここから動く気はない。

離陸するまで意地でも離れるもんか。


風が収まると今度は離陸時の凄まじい轟音。
エンジンが唸りをあげて艦隊を上へ上へと浮かばせる。


耳がマヒして音が聞こえなくなった時には、首を真上に傾けてた。





飛空艦はゆっくり朝日と同じ方に動いていく。

もう誰の顔も見えない。
多分向こうもオレの姿なんか見えてない。

でも、絶対こっちを見てる。






「よっしゃー!!頑張るぞッ」




遠ざかる飛空艦と朝日に向かってオレは叫んだ。

女というハンデを背負って男の中で戦うとココで誓う。


目指すは最強の2文字。
絶対叶えてやる。そのためなら何だってする!


太陽に背中を向けてオレは歩き出した。
断崖絶壁の今居る場所から、遠くにチマッと建ってるガンマ団本部を目指して…。



「最後の嫌がらせにしちゃ楽勝!!」







追憶:3日後、罠だらけの実践場を突っ切ってやっと本部に着いたは全身ボロボロで
早速Dr高松の世話になったことをココにつづる。

















手なんか振らない
それじゃあ まるで会えないみたいだから
涙なんか見せない
そんなんで泣くのは勿体ないと思うから

天使が地上に降りた日は とてもキレイな晴れの日だった
天使が空に還る日も きっと綺麗な晴れの日だろう