「1年…か…」


アイツが入隊して1年がたった。
今日から暫くの間、アイツの笑い声がこの船に響くことはない。

だが俺は信じる。

いつか…
いや、何年後か分からねぇが必ず……


「帰ってくる」


アイツの瞳と同じ色の黄金色をした酒が揺れてるビンを静かに傾け
部屋に残されていたレザー服にかける。
旅立つ一人の少女へのささやかな手向けだ。

行って来い…そして


「強くなれ、…」
















「今日ってが来て丁度1年めだ」



食事の最中、出来合いの料理を頬張りながらリキッドが言う。
一人を除いて皆がほぼいっせいにカレンダーの日付を見た。

誰が書いたか定かではないが、そこには確かに
入隊記念日』
と書かれている。
大方記念日好きのリキッドか、お祭り好きのロッドの仕業だろう。



「早いものだな。もう1年も経ったか」
「まだこないだみたいな気ィするけどねん」
「なぁーに言ってんだ!まだたったの1年じゃねーか。これからだよなあ



しみじみするマーカーとロッドを一喝して笑いながら
ハーレムが足でちょいちょいと下にあるものを突付くと
テーブルがガタガタ動いて盛り付けられた料理が皿からこぼれた。



「おーい、食いモン粗末にすんなよ」
「じゃあ助けろ!!」



リキッドはテーブルを付近で拭きながら足元に向けて躾のような文句を飛ばすと
机は罵声をあげて更に激しさを増して揺れる。
机の下をチラっとだけ見て、揺れの原因…を見た。



「助けろー!腹減ったー!これ解けよォ、リキッド〜」
「俺には無理」
「あっさり断んなッ!」



自分を助けてくれる確立の最も高いリキッドのみに助けを請う。



「つーかハーレムさっきから足臭ぇんだよ!足退かせ!」
ちゃ〜んvオメー今なんつった?」
「ぎゃー!臭い痛い!鼻が腐るー!!」



食卓を囲んでいるテーブルの脚にくくりつけられて叫ぶの頬を
足の指で器用につねると、面白いように喚くので、それがまた面白くなって
ハーレムは逆の足も使って両方の頬をつねる。



「ギャーギャー喚くんじゃねーよ、口の中突っ込まれてーかぁ?」
「ギャハハハ!隊長それ何気にエロいっすよv」
「オレも飯食いたいーッ」
「これに懲りたら摘み食いなどせんことだな」
「そうそう。それに一食くらい抜いたって死にゃしねーよvなあG」
「………ん」
「まあ頭下げて謝りゃ残りモンぐれーやってもイイぜぇ?ん?」



リキッドを除いたメンバーで好き勝手言って
むくれるの頬にグリグリと親指を押し付ける。
は縄から必死に逃げ出そうと、ますますテーブルを揺すったが
全員自分の皿は避難させていて今度は何もこぼれない。



「リキッドの裏切り者ォ!!オレこないだ助けてやったのにィ」



八つ当たりとばかりにますます元気に喚き散らす。
それにリキッドは口を尖らせて反論する。



「そりゃ隊長と一緒になって俺のこと海に投げ入れた後だろ」
「そんでも助けたもんは助けた!」
「ノルウェー沖で泳いでる間も笑って応援してただけだった」
「う…そ、それは…余計なことしたらオレまで泳がされそうだったし……」
「じゃあ俺も後で助けてやるよ」



だから今は諦めろ…と言い捨てた。



「子供を裏切る大人なんてサイテーだぞ!ディズニーおたく!!」
「先に裏切ったお子様が言うんじゃねー。ディズニー馬鹿にすんな」
「くそっ!もーリキッドなんかに期待しねーもん!!」
「そうしてくれっと助かるぜ。俺の命が」



スパゲッティをすすりながらリキッドは身体ごと明後日の方に向く。
リキッドの子供染みた行動には益々癇癪を起こして暴れる



「まぁまぁ、落ち着けって」



ロッドがテーブルの下を覗き込みつつなだめた。
その手には湯気の立つチーズが固焼きパンの上でとろけている出来立てのピザ。
具沢山のトッピングは肉中心で、香ばしい匂いは
腹をすかせただけでなく肉好きのハーレムの鼻まで刺激する。



、これやるぜェv」
「マジ?!ロッド最高!オレ初めてロッドのこと尊敬した」
「ほら、熱ィから火傷すんなよ」



かじりかけのピザをの届く距離のギリギリ外まで持っていく。
ロッドはピザに噛り付こうとしたをかわして、しっかり嫌がらせをしてから、
2度めできちんと食える位置まで持っていった。
恵まれた食料には目を爛々と輝かせ大口でピザにかぶりついた。


…とたん、




「狽ン゛!?ふぐブぅぅうぅうッツ!!!」
「ギャハハハハ、ちゃん苦しそうでちゅねぇ、いけない物でも食べまちたかぁ〜?」



顔を真っ赤にして目をチカチカさせているを見て、ロッドが幼児言葉でからかいだす。
マーカーは半分以上に減った新品のタバスコのキャップをしめつつ
高欲的に笑って言った。



「ロッド、タバスコのかけすぎは健康に悪いぞ」
「なに、心配してくれんの?」
「お前ではなくのな。調味料の過剰摂取は成長を遅らせる恐れがある。
辛味が欲しいなら豆板醤にしろ。これなら健康にもいい」
「そーなの?んじゃ次からそうするわv」



自分の手元のビンをドンと置いて不敵に笑う。
ロッドの使用しているタバスコの何倍も辛味の強いものだ。



「ゲホッ、ごふガハっ!オレ辛いの嫌い!!」
「そうだったのか?それは初耳だな」
「俺も〜♪先言ってくんなきゃわっかんねーぜぇ。じゃあさっきの辛かったんじゃねぇ?」
「つーか知っててやったんだろ!!」



1年経っても学習しない
吐き出すのだけは堪えて何とか飲み込んだものの、口に残る辛さに半泣き状態。

この後も真っ赤に腫らした唇で講義するがロッドとマーカーは笑うだけで
その顔には謝罪の『しゃ』の字もない。
リキッドは自分に火の粉がかからないように何も口出しせず。
Gはいつも通り黙認。


ハーレムはと言えば、部下達のやり取りにすっかり上機嫌になり…





「よーし!今日はこのまま飲むぞオメーら!!寝るんじゃねぇぞぉ!」
「「ウィーッス」」
「「了解」」
「オレはー!?」
「お預けにきまってんだろーがv」














いつもと全く変わらない日だった。
いつもと全く変わらない夜だった。

いつもと全く変わらない宴だった。









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