ってるよ
 お互いの「一番」にはなれないの。





1週間ぶりに楓の部屋に行った。

そこは相変わらず無機質で飾り気のない場所で


飾られてるNBAのポスターと、バスケの雑誌。

壁に設置された玩具のゴールと、バスケットボールっぽいメイクの施されたゴムボール。

あとはベッドに洋楽のCDが乱雑に散らかってるだけ。



「ねぇ、楓・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ベッドに寝転がってる楓に声をかけても返事はこない。

最も、この無言が楓の返事なんだけど・・・。


「昼飯は?食べた?」


ドアを閉めながら聞いてみたら、

楓はこっちも向かずにふるふると首を横に運動させた。


やっぱり食べてないらしい。

おばさんが居ない休日はいつもこうだ。



「ほら、買ってきてやったから食いなよ」

「・・・・・・・・・・・おう」

「カルビ弁と牛丼どっちがいい?」

「カルビ」

「ほいよ」


まだあったかい2つのパックのうち、上にあった方をテーブルの向こうに置く。

そして下にあるパックは自分の手元に。


蓋を開けると、濃い肉の臭いが鼻を刺激する。

それにつられて、楓はやっとベッドから身体を起こし

のろのろとこっちに来て、あたしの向かいに座った。


「箸・・・・」

「そんくらい自分でとれよ・・・・はい」


・・と言いつつもコンビ二袋から楓の分の箸を出して渡す。


「サンキュー」

「どーいたしまして」


ほぼ同時に食べだす。

時々あたしが喋りだす。

それに楓が単語で答える。

会話が終わる。


その繰り返し。



「おい・・・・

「なに?」


珍しく楓から喋る。


「食い終わったら・・・行くぞ」

「行くって・・・・ああ、バスケか」

「決まってんだろ、ド阿呆」

「へいへい。お付き合いしますよ」


汁がいい感じに染みてるご飯を口にかき込んで

ペットボトルのウーロン茶を啜る。


「寄越せ」

「もっと他に言い方あるだろーに・・・」


飲みかけのそれを、キャップを締めないまま渡すと

無言で一気に飲み干した。


カルビの味濃いから咽渇いてたんだな。


その間に、食べ終わったパックや箸を袋に雑に詰め込んで

ゴミ箱に投げる。


がごっと、一回弾んだけど、無事に中へと収まった。



「んじゃ、行きますか」

「おう」


ベッドの下にあった革ボールを持って、部屋を出る。


階段を下りて外に出たらすぐに自転車にボールを突っ込んで、

2ケツで公園に向かうのが日常。



昔は交代でこいでたけど

中学の後半あたりからは、楓がこいだほうが断然効率がよくなった。

それからと言うもの、あたしはずっと後ろで楽してる。



「楓、今日こそあたしが勝つから」


多分無理だろうな、とは思いつつも勝利宣言。


「無理に決まってんだろ。ド阿呆」


自信満々で答える楓。


「うるさなぁ。無理じゃないっての。覚悟しなよ」

「ふぅ〜・・・これだからド阿呆の相手は疲れる」

「その口から意地でも『参った』って言わせてやる」



負けじとそう言い返して、目下にある頭を軽く叩いて

名前を呼んだ。



「ねぇ、楓」

「・・・・・・・・・・・?」

「バスケとあたしどっちが好き?」



もう何回しただろう、この質問。

答えは決まってる。



「バスケ」


悩むことなく返ってくる3文字のカタカナ。

これを聞くたび、ああ、楓だな。

なんてガラにもなくしみじみと思う。


だから、あたしもいつだってこう言い返す。



「・・・だよね。あたしも」



前にある背中は昔と違って無駄にでかく広くなった。

あたしの体も昔よりは幾らか女らしくなった・・・と思う。


だけど、性格やら内面はお互い全然成長してない。


十年以上もお互いの一番はバスケ。

2人して馬鹿みたいにバスケ馬鹿。




「・・・・・・・けど」


あれ?

いつもはココで会話が終わるんだけど・・・


「うん?」

「バスケ以外ならお前が一番好きだ」



・・・・・・・・・・・・・・・・うん。

やっぱり変わってない。



一番はバスケ。

だけど人間ならお互いが一番。


絶対二番目に好きだ、なんて言わない。

だって「二番」じゃないから。

ただ「一番」じゃないだけ。




「・・・あたしも。あたしもバスケ抜かせば楓が一番好きだよ」

「たりめーだ、ド阿呆。・・・違ったら許さん」

「そだね」




知ってるよ お互いの「一番」にはなれないの。

だけど「二番」じゃないんだ。

お互い一番はバスケで、でもお互いもやっぱり一番なんだよね。


大好きだよ、楓。


バスケの次に・・・・・大好き。









*あとがき*

すげー矛盾だらけ。
けっきょく何が言いたいんだ2人共・・・、おばさんにゃ分からんよ。