ジリリリリ♪
頭の上で鳴る目覚まし時計。
時間はまだ6時。朝練は7時30分から…
まだ寝れる
「あと10分…」
布団に肩まで包まろうとしたが、誰かに邪魔された。
「ノブ!起きろ朝だよー」
うるせーなぁ、夕べ1時までビデオ観てたから眠いんだよ。
「ノッブナッガく〜ん?牧さんに怒られますよ??」
うっ、それは嫌だ。
「てか早く起きろ!今日はあたしが忙しいの!!」
「ふぁあ、何かあんのか?」
「なんとビックリ!昨日部室の鍵閉めんの忘れた♪」
「げっ、どーすんだよ怒られっぞ!俺知らね〜」
「一番に行けばバレないから問題ない」
「荒らされてたらヤベエじゃん」
「そしたらその時、考える!」
―ガチャ−
「ちゃんノブ起きた?」
「あっおばさん」
「朝ごはん食べてくでしょ?下に用意してあるから」
「俺のは?」
「あるから早く着替えてきなさい」
「あたしも先いってるよん」
「俺の分まで食うなよ」
「え〜、ノブん家のご飯美味しいからなぁ」
「2人分も食ったらデブるぞ」
「消費するからダイジョーブ!」
バタンッ−
「早く着替えてかねーと、俺の朝飯が危ねぇ!」
俺は寝るのを完全に諦めて、ベッドから出て急いで着替えることにした。
「おい、窓くらい自分で閉めろよな」
下のリビングじゃ、はもう朝飯にハシをつけてた。
文句を言いながらの隣に座った俺の前にも、母ちゃんが同じメニューを持ってきた。
「また開けっぱだった?ごめんごめん」
「ちゃん、自分の部屋も開けたままなんじゃない?」
「あっ、そうかも」
「そーいや開いてたぜ」
「あたぁっマジで」
「ぷーぷぷ、バーカ」
「ってウソかよ!?騙すな!」
の前にあった醤油を取って、自分の目玉焼きに多めに垂らす。
焼きたての目玉焼きに落ちた醤油の香ばしい匂い。
それが寝起きの俺の食欲をこれでもかと煽る。
俺流の朝の匂い。
「いっただきま〜す」
「そ〜いやノブって昔は目玉焼き、ソース派じゃなかった?」
ギクッ!?
「あ〜、変えたんだよ。やっぱ醤油の方が美味くね?」
「美味いvv」
「は昔っから醤油だよな」
「ま〜ね」
フフンっと、自慢気にする。
母ちゃんが微妙に笑ってるのに気づくなよ。
「おばさん、ど〜かした?」
「フフ、信長が醤油派になった理由、思い出しちゃったのよ」
「え〜何?何か思い入れでもあんの??」
やべぇ、興味津々状態になってやがる。
どうにか誤魔化す手は…
「ちゃんが醤油派だからだよな信長」
「と父ちゃん!?」
「おじさんオハヨー」
「お早うちゃん」
いつもならとっくに家出てる父ちゃんが何でマダ居るんだ??!!
つーか余計なこと言うんじゃねぇ!!
「父ちゃんさっさと仕事行けよ!」
「残念ながら今日は休みだ」
「で、おじさんさっきのど〜ゆう意味?」
「いい!聞くな」
父ちゃんは自分の席で新聞を広げて茶を飲む。
「だいぶ前に見たテレビで『新婚のときは好みの違いに苦労する』って、言っててな」
「ふんふん」
「止めろって、クソオヤジ!!」
「そしてその日から、信長は目玉焼きに醤油をかけ始めたんだ」
「そうそう、歯磨き粉も辛いの使いしてね」
母ちゃんまでっ///!!
「あの時はあまりの単純さに笑ったっけなぁ」
「馬鹿っぷりにもね」
「うっせー!///」
くそー!わざわざの前で言わなくったって。
笑ってるし…しかも腹抱えて。
「そ〜いやノブ辛い歯磨き粉嫌いだったっけ」
「今は別に嫌いじゃねーよ///」
「おっかし〜〜あはははは!」
「笑うんじゃねー!俺は真剣に考えてたんだぞっ」
俺がそう言うとはピタリと笑うのを止めた。
「「「ぷっ…たははははは〜!!」」」
皆揃って笑いやがった…
ちっくしょー!!
「ごっそーさん!行くぞ」
「ちょっ、まだ食べきってない…」
「どーせカバン中に菓子とかパン持ってんだろ!!」
「ちゃん信長よろしくね」
「は〜い」
腕を引っ張って引きずる形でを外に連れ出した。
適当に停めてある自転車に俺が跨ると、示し合わせたようにも後ろに立つ。
小さい手が肩に乗った。
一緒くらいに俺はペダルを回す。
ギッと自転車が軽く軋む。
高校に入ってからは、いつもコレで学校に通ってる。
「ノブ口開けて〜」
伸びてきたの手にある平べったい物を、口に挟む。
勢いあまっての指まで、くわえちまった。
「きっったな〜い…」
「っておい!人の服で拭くな」
「自分のでしょ」
一口噛むと、苦手だったツンとした匂いと、味が口いっぱいに広がる。
の制服にいつも入ってるミントガムだ。
「不味い…」
「歯磨いてないんだから我慢しろ」
「だって辛ぇんだもん」
「口臭のするスポーツマンなんて爽やかじゃない」
「監督は?」
「ノブ知らないの?監督アレで意外と臭わないんだよ♪」
監督に聞かれたら間違いなくどやされる話題に、華が咲く。
晴れた空に、朝迷惑な笑い声。
大好きなとの、大好きな時間。
「匂いと言えばよ〜、最近牧さんイイ匂いするぜ」
「どんな?」
「甘いっつーか、誰かと似たよーな匂い」
「狽っ、それの香水じゃない??」
「あー!そうだよと同じの匂いだ!!」
似合わね〜っ、てハモッたのが可笑しくて、また笑ってた。
ランニング中の知らないおっさんに冷やかされて慌てて黙る。
顔を見合わせて今度は小さく笑った。
「恥っずかしい〜、ノブの笑い声変だから目立つんだよ」
「なっ!!どこが変なんだよっ」
「かっかっか!自覚してないんじゃ重症だね」
「オラ全然似てねーぞ、かーっかっかっかっか!!」
「うるさーい!」
俺とがギャーギャー騒ぐと、気のせいか鳥まで鳴き出す。
そのせいでうるささも倍増。
「狽っ、ねぇねぇ知ってるノブ?」
「知らね〜」
「ははは、そりゃそ〜だ。まだ言ってないもん」
「だろ、で何だあ?」
「実はさ〜、あたしもあの番組見てた!そんでファブリーズ無臭タイプに変えた!」
無臭ファブリーズはオレの愛用品。
「それだけかよ〜?」
「あとパンは苺ジャムで食べてる」
「俺は目玉焼きだろ?歯磨き粉にガムに…あ〜、あとは」
「もう無くない??あたしとノブの違うとこなんか」
・・・・・・・・・
「俺ら、もしかしてカナリお似合い?」
「かもね〜」
「結婚するか?」
「いいねソレ」
てっきり馬鹿にされると思ったのに、は俺の背中でへへっと笑った。
可愛い…
「よっしゃあ!飛ばすから落ちんなよ」
「いえっさ〜」
通学路で一番でかい坂道。
俺の手はブレーキにかかってない。
車輪の回る音がどんどんどんどん早くなる。
顔に当たる風がちょっと痛い。目も乾く。
口をでっかく開けると、風が不法侵入してきた。
オレはそれを追い出すように叫ぶ。
「ーーー!!」
「なぁ〜にーー??」
「オレ一生お前しか後ろ、乗せねーからな!!」
「それってプロポーズかしらぁ?!」
「決まってんだろ!」
「言ったからには、あたし以外乗せたら離婚ね、リコン!」
「お前も他のヤツの後ろなんか、乗んじゃねーぞ」
「しししっ!がってんしょーち☆」
今日から高校三年間、俺はこの坂道をノンブレーキで走る。
明日 明後日 明々後日
春 夏 秋 冬
1年 2年 3年
快調・快風・快晴
後ろにはいつも。
END