琉球舞踊と歌(ずっと作業中)



琉球舞踊とは

まず最初に、ここでいう琉球舞踊には民族舞踊を含めないことにします。
琉球古典舞踊(以下古典舞踊)は琉球王国時代に宮廷内で育まれました。古典舞踊は元来、琉球国王が変わるたびに、詔勅(しょうちょく)と王冠を携えて来琉する中国冊封使(さっぽうし)をもてなすために披露された余興芸能=御冠船踊でした。これはオモテと呼ばれる勘定所の管轄だったので、踊り手も地謡も男性でありかつ貴士族に限られていました。
琉球王国がなくなった現在、踊り手の大方が女性になりつつあります。

古典舞踊は若衆踊、女踊、老人踊、二歳踊に分けられます。この中で前三者は冊封使を歓待するためのものですが、二歳踊は薩摩の勘定奉行を歓待するためのものとして生まれました。

若衆踊は元服前の貴族によって踊られたもので、髪型も衣装も女性らしい可憐なものです。若く美しい女形による艶やかな舞踊、といったところだったのでしょうか。

若衆の中でも容姿端麗かつ才能のある者が磨かれた結果、女踊が創られました。
女踊の宴目の中でも特に優れたものが七踊で、その宴目とは『伊野波節』『作田節』『天川』『諸屯』『綛掛』『柳』『本貫花』です。いずれも髪には前花とばさらが飾られ、衣装は紅型の打ちかけです。

老人踊の代表が『かぎやで風』です。髪はかたかしら、衣装は黒紋服です。

二歳踊は七五調の歌詞がついた口説に合わせて、力強く踊られます。

明治時代に入ると各地に芝居小屋が生まれ、古典舞踊を元とした雑踊(ぞうおどり)が創作されました。代表的なものに『浜千鳥』『花風』『むんじゅる』などがあります。
近年では、個々の舞踊家たちによる独自の創作舞踊も数多く生まれています。古典舞踊、雑踊に創作舞踊を加えたものが、琉球舞踊と呼ばれます。
なお、各流派の説明は、種々の理由により割愛させていただきます。



琉舞の道具

HANAGASA花笠
女踊『伊野波節』『四ッ竹』などに使われる笠です。
以前、ネスカフェのコマーシャルで『四ッ竹』が踊られて
いたので、見覚えがある人も多いのではないでしょうか。

YOTSUDAKE
四ッ竹

女踊『四ッ竹』などで使われます。
両手に持って、カチカチと鳴らします。

WAKUKASHI
「枠」と「かし」

女踊『綛掛(かしかけ)』に使われます。
巻かれる糸の色は流派によって異なります。

BASARA「前花(めーばな)」と「ばさら」
女踊や創作舞踊に使われる髪飾りです。
紫長巾(むらさきさーじ)が巻かれた頭にアクセントをつけます。

FUSAYUBIWA房指輪(ふさゆびわ)
女踊に使われる指輪です。
両手中指にはめられた房指輪が、キラキラ光ってきれいです。

ZEI
麾(ぜい)

二歳踊・若衆踊『麾(ぜい)』や『揚作田』などに使われます。
手にもってパサパサと振ります。

TISAJI
花染手巾(はなずみてぃーさーじ)

てぃーさーじとは手ぬぐいのことです。
雑踊によく使われます。

BAKI
「バーキ」と「櫂(エーク)」

雑踊『谷茶前』に使われます。
バーキとはざるのことです。




主な宴目と歌

古典舞踊

[若衆踊]

『若衆こてい節』(わかしゅうくてぃぶし)
錦の陣羽織、手には扇。
若衆踊としてはほかに『若衆麾』がありますが、そちらはあまり演じられません。
◆こてい節(くてぃぶし)
常盤なる松の変ることないさめ いつも春くれば色どまさる
(とちわなるまちぬかわるくとねさみ いちんはるくりばいるどまさる
・・・いつも松は緑色の葉を茂らせている。そして春ともなればさらに色が増す)


[女踊]

『伊野波節』(ぬふぁぶし)・・・女笠踊
恋人に会えない辛さをあらわしています。
前段で花笠を手に持ち、「よそにの手」「ちゃーみの手」によって、想いの深さを表現します。
後段で花笠を深々とかぶり、「白雲手」「月見手」「あごあて」などによって、恩納ナビーの名歌を情深く表現していきます。
◆伊野波節(ぬふぁぶし)
逢はぬ夜のつらさ与所に思なちやめ うらめても忍ぶ恋の習や
(あわんゆぬちらさゆすにうみなちゃみ うらみてんしぬぶくいぬなれや
・・・恋人に会わない夜のつらさを、他人事のように思いなしたのか、
恨んだのにまた忍んでいこうとする、これが恋のならわしだろうか)
◆長恩納節(ながうんなぶし)
恩納松下に禁止の牌の立ちゆす 恋忍ぶまでの禁止やないさめ
七重八重立てるませ内の花も 匂移すまでの禁止やないさめ
逢はぬ徒らに戻る道すがら 恩納岳見れば白雲のかかる
恋しさやつめて見ぶしやばかり
(うんなまちしたにちじぬふぇぬたちゅす くいしぬぶまでぬちじやねさみ
なないやいたてぃるましうちぬはなん にうぃうちしまでぃぬちじやねさみ
あわんいたじらにむどぅるみちすぃがら うんなだきみりばしらくむぬかかる
くいしさやつぃみてみぶしゃばかい
・・・恩納村の松の下に禁止の立て札があるが、恋愛することまで禁止した
札ではないだろう。七重八重にませ垣を作って花を守っても、匂いを移す
ことまでは禁止できないだろう。恋人に会えなくて空しく戻る道すがら、
恩納岳を見れば白雲がかかっている。あの雲をどけて恩納岳を見たい、
わたしの恋人にも、邪魔になるものをどけて早く会いたい)


『作田節』(つぃくてんぶし)・・・女団扇踊
団扇のあつかいかたや面の当てかたの微妙さに注目してください。
◆作田節(つぃくてんぶし)
誰がすもてなちやが手になれし扇や 暑さすだましゆるたよりなとす
(たがしもてなちゃがてぃになりしおじや あつぃさしだましゅるたゆいなとぅしぃ
・・・手になじんでいる扇は誰が作り出したのか、どんな暑さも涼しい便りとする)
◆早作田節(はいつぃくてんぶし)
夏の日も秋の情かゆはしゆる 手になれし扇の風のすだしや
(なつぃぬふぃんあちぬなさきかゆわしゅる てぃになりしおじぬかじぬすぃだしゃ
・・・夏の日も秋の涼しい情けを通わせて、手になじんでいる扇の風が心地よい)


『天川』(あまかー) ・・・女手踊
夫婦間の深い愛情をあらわしています。『柳』と一対になっています。
ちなみに天川とは読谷村を流れる比謝川のことです。
◆天川節(あまかーぶし)
天川の池に遊ぶおしどりの 思ひ羽のちぎり与所や知らぬ
(あまかわぬいちにあしぶうしどいぬ うむいばぬちぢりゆすやしらん
・・・天川の池に遊んでいるおしどりは、互いに羽を合わせて仲睦まじい。その心境は他人には推し量るることができない)
◆仲順節(ちゅんじゅんぶし)
別れても互に御縁あてからや 糸に貫く花のちりての(ぬ)きゆめ
(わかりてぃんたげにぐえんあてからや いとぅにぬくはなぬちりてぃぬちゅみ
・・・たとえ別れても御縁があったなら、花を糸に貫きとめたら決して散らないように、わたしたちも決して別れることはできない)


『諸屯』(しゅどぅん)・・・女手踊
二曲目の『諸屯節』のときに、この踊り最大の見せ場である「三角目付(さんかくみぢち)」が踊られます。これは目だけで想う人への恋心をあらわすものです。
◆仲間節(なかまぶし)
思事のあてもよそに語られめ 面影とつれて忍で拝ま
(うむくとぅぬあてぃんゆすにかたらりみ うむかじとちりてぃしぬでぃをがま
・・・恋の悩みが他人に語られようか、面影を抱きながらこっそりとお会いしよう)
◆諸屯節(しゅどぅんぶし)
枕ならべたる夢のつれなさよ 月や西下がて冬の夜半
(まくらならびたるゆみぬちりなさゆ ちちやいりさがてぃふゆぬやふぁん
・・・夢の中で愛しい夫が王事の寸暇を得て帰宅した。枕を並べて楽しい恋の語らいをしているうちに、ふと夢から覚めると月が西に傾き、真夜中の静寂がひしひしと身に迫ってきた)
◆しやうんがない節(しょうんがないぶし)
別て面影の立たば伽召しやうれ 馴れし匂袖に移ちあもの
(わかてぃうむかじぬたたばとぅぢみしょうり なりしにをぃすでぃにうつちあむぬ
・・・お別れしてからわたしの面影が浮かんだら添寝の粮にしてください、馴れた移り香は袖にしみておりましょうほどに)


『綛掛』(かしかき)
想う人へ上布を織ってあげたい、という女性の一途な気持ちをあらわしています。手に枠とかせを持ち、視覚的にも訴える理解しやすい踊りです。
◆干瀬節(ふぃしぶし)
七読とはた読綛掛けて置きよて 里があけず(あかいづ)羽御衣よすらね
(ななゆみとはてんかしかきてうちゅて さとぅがあけずぃばにんしゅゆしらに
・・・ななよみとはたいん(経織りの種類)を綛掛けて、愛するあの人にとんぼの羽のように上等な着物を作ってさしあげましょう)
◆七尺節(しちしゃくぶし)
枠の糸綛に繰り返し返し 掛けて面影の増さて立ちゆさ
綛掛けて伽やならぬものさらめ 繰り返し返し思どましゆる
(わくぬいとかしにくいかえしがえし かきてぃうむかじぬまさてぃたちゅさ
かしかきてとぅじやならんむぬさらみ くいかいしがいしうみどぅましゅる
・・・糸を枠に繰り返し巻き掛けるほどに、あの人の面影が立ち増さってくるのです。かせを掛けても慰めにはなりません、繰り返しかせを掛けるほどに思いが増すばかりです)


『柳』(やなじ)
柳、ぼたん、梅を持って踊ります。
◆中城はんた前節(なかぐしくはんためぇぶし)
飛び立ちゆる蝶まづよ待て連れら 花の許我身や知らんあもの
(とびたちゅるはびるまぢゆまてぃちりら はなぬむとぅわんやしらんあむぬ
・・・飛び立つ蝶々[友達]よちょっと待ってくれ、私はまだ花の許[遊郭]を知らないのだから[一緒に連れていってくれ])
◆柳節(やなじぶし)
柳はみどり花は紅 人はただ情梅は匂
(やなじわみどりはなはくりない ふぃとはただなさきうみはにうい
・・・柳の本領は緑、花の特徴は紅、人の長所は情であり梅は香りあってこそ)


『本貫花』(むとぅぬちばな)
貫花(紅白の花を糸で貫きとめた、レイのようなもの)をかけて踊ります。白瀬走川節はもとは久米島の歌です。
◆金武節(ちんぶし)
春の山川に散り浮ぶ桜 掬ひ集めてど里や待ちゆる
(はるぬやまかわにちりうかぶさくら すぃくいあちみてぃどぅさとぅやまちゅる
・・・春の山川に散り浮かんでいる桜の花をすくい集めて、恋人を待っています)
◆白瀬走川節(しらしはいかーぶし)
白瀬走川に流れゆる桜 掬て思里に貫きやりはけら
赤糸貫花や里にうちはけて 白糸貫花やよゑれ童
(しらしはいかわにながりゆるさくら すぃくてぃうみさとぅにぬちゃいはきら
あかちゅぬちばなやさとぅにうちはきてぃ しるちゅぬちばなやよえれわらび
・・・白瀬川に流れる桜の花をすくい集めて、想うあの人に[花輪を]かけてあげたい。赤糸で貫きとめた花輪はあの人にかけて、白糸で貫きとめた花輪は[縁起が悪いから]捨てておくれ、子供たち)


『四ッ竹』(よつだけ)
複数人で演じられることが多く、また一曲でまとまっているのが特徴です。頭に花笠をかぶり、手に四ッ竹を持って踊ります。
◆踊くわでさ(こはでさ)節(うどぅいくふぁでぃさぶし)
打ち鳴らし鳴らし四つ竹は鳴らち 今日や御座出ぢて遊ぶ嬉しや
(うちならしならしゆちだきわならち きゆやうざんぢてぃあしぶうりしゃ
・・・鳴り物や四つ竹を鳴らし、今日は晴れの舞台に出られて嬉しい)


『稲まづん』(いにまぢん)
五穀、中でも稲作の豊穣を喜ぶ踊りです。
◆稲まづん節(いにまぢんぶし)
今年もづくりやあん美らさよかて 倉に積み余ち真積みしやべら
(くとしむづくいやあんちゅらさゆかて くらにちんあまちまじんしゃびら
・・・今年の農作物はたいへんよく稔って、倉に積んで余った分は庭に積んでおこう)
◆早作田節(はいちくてんぶし)
銀臼なかへ黄金軸立てて 試し摺りましゆる雪の真米
(なんじゃうしなかいくがにじくたてて ためししりましゅるゆちぬまぐみ
・・・銀の臼に黄金の軸を立てて脱穀した、雪のように白い米を試しに量ると、盛枡してなお余るほどである)


『本嘉手久』(むとぅかでぃく) ・・・女花見踊
恋する人への想いを表現しています。手には杖をもち、花笠は前段でかぶり、後段でぬぎます。
◆本嘉手久節(むとぅかでぃくぶし)
深山鴬の節や忘りらん 梅の匂忍でほけるしほらしや(野村流)
(みやまうぐいすぃぬしちやわしりらん うみぬにをぃしぬでぃふきるしゅらしゃ
・・・深山の鶯が季節を忘れずに 梅の匂いを忍んでさえずる声が美しい)
深山鶯の節や知らねども 梅の匂しちど春や知ゆる(安冨祖流)
(みやまうぐいすぃぬしちやしらにぃども うみぬにをぃしちどぅはるやしゆる
・・・深山の鶯は季節を知らないが、梅の匂いで春を知るのだ)
◆出砂節(いでしなぶし)
笠に散りとまる春の花心 袖に思とまれ里が御肝
(かさにちりとぅまるはるぬはなぐくる すでぃにうみとぅまりさとぅがうぢむ
・・・春の花が散って笠にとまるように、恋人の心がわたしの袖にとまってほしい)
◆揚高祢久節(あぎたかにくぶし)
春に浮かされて花のもと忍で 袖に匂移ち戻るうれしや
(はるにうかさりてぃはなぬむとぅしぬでぃ そでぃににをぃうつちむどぅるうりしゃ)
・・・春に浮かされて花のもとで遊び、花の匂いを袖に移して帰るのは嬉しい)


[老人踊]

『老人踊』
お祝いの座で必ずといっていいほど最初に演じられます。
「長者の大主」とは翁と媼(おうな)が子や孫をひきつれて踊るもので、「老人老女」とは翁と媼のみ、若い男女が踊るものを「かぎやで風」と呼びます。
「長者の大主」(ちょうじゃのうふしゅ)
◆中之島節
親は百歳子は九十九まで 孫の白毛のはへるまで
(おやわひゃくさいこはくんじゅくまで まごのしらがのはえるまで)
◆大主口上
口上が述べられますが、割愛します。
◆かぎやで風節(かじゃでふうぶし)
今日の誇らしやや何にぎやなてる つぼでをる花の露きやたごと
(きゆぬふくらしゃやなをぉにぢゃなたてぃる ちぶでぃをぅるはなぬちゆちゃたぐと
・・・今日の嬉しさは何にも例えようがない。つぼみが露を受けて元気に開いたようだ)
◆たのむぞ節
一、東り明かれば髪を結わえて友達押し連れ書物習いが
二、小学から読で大学中庸論語孟子に五経まで読で
三、気張て墨読で六芸を習いて首里が御奉公でわねさだら
四、御奉公務めて御扶持をいただち親に孝行しゆしど本意
◆早作田節
(稲まづんに同じ)
◆四季口説(しちくどぅち)
一、さてもめでたや新玉の 春は心も若がえて 四方の山辺の花盛り
(囃子)長閑なる代の春を告げ来る深山鶯
二、夏は岩間を伝え来て 滝つふもとに立ち寄れば 暑さ忘れて面白や
(囃子)風も涼しく袖に通ひて夏もよそなる山の下蔭
三、秋は尾花が打ちまねく 園のまがきに咲く菊の 花の色々珍らしや
(囃子)錦さらさと思ふばかりに秋の野原は千草色めく
四、冬は霰の音添えて 軒端の梅の初花の 色香も深く愛であかぬ
(囃子)花か雪かといかで見わけん雪の降る枝に咲くやこの花
◆渡りぞう
(演奏のみ)
◆瀧落管ガチ(たちうとぅしすぃががち)
(演奏のみ)
◆揚作田節(あぎつぃくてんぶし)
二葉から出て幾年がへたら いわをだき松のもたへきよらさ
(ふたふぁからいむぢてぃいくとしがふぃたら いわをだちまちぬむていじゅらさ
・・・二葉のころから幾年を経ただろうか、巌を抱いた松のみごとなことよ)
◆金武節(ちんぶし)
首里親国習や御三味線聞きゆい なるく声ど聞きゆる
我山国や打ちならしならし おとぎしやべら
◆そんばれ節(すんばれーぶし)
一、今年から始まるハイヤノ下原の踊二才ばかいすだして踊らし舞うらし
  前結びもかたけさまもつやうつやうらさ シホザシタヘシホザシタヘ
二、鶴と亀との齢やハイヤノ千年万年わぬん年較べて幾世までも
  子孫さももたへさかてい シホザシタヘシホザシタヘ
◆黒島節(くるしまぶし)
千歳へる松の緑葉の下に 亀が歌すれば鶴は舞方


[二歳踊]

『上り口説』(ぬぶいくどぅち)
琉球から薩摩までの旅の道中を表現しています。
◆上り口説
一、旅の出で立ち観音堂 千手観音伏し拝で 黄金酌取て立ち別る
二、袖にふる露押し払い 大道松原歩み行く 行けば八幡崇元寺
三、美栄地高橋打渡て 袖を連らねて諸人の 行くも帰るも中の橋
四、沖の側まで親子兄弟 連れて別ゆる旅衣 袖と袖とに露涙
五、船のとも綱疾く解くと 船子勇みて真帆引けば 風やまともに午未
六、またも巡り逢う御縁とて 招く扇や三重城 残波岬も後に見て
七、伊平屋渡立つ波おしそえて 道の島々見渡せば 七島渡中も灘安く
八、燃える煙や硫黄が島 佐多の岬にはい並で エイ
  あれに見ゆるは御開門 富士に見まがふ桜島


『下り口説』(くだいくどぅち)
上りとは逆に、薩摩から琉球までの道すがらを歌ったものです。
◆下り口説
一、さても旅寝の假枕 夢の覚めたる心地して 昨日今日とは思へども
  最早や九十月なりぬれば
二、やがてお暇下されて 使者の面々皆揃て 弁才天堂伏し拝がで
三、いざやお假屋立出でて 滞在の人々引き連れて 行屋の浜にて立ち別る
四、名残り惜しげの船子共 喜び勇みて帆揚げの 祝の杯めぐる間に
五、山川港にはい入れて 船の検めすんでまた 錨引き乗せ真帆引けば
六、風やまともに子丑の端 佐多の岬も後に見て 七島渡中も安々と
七、波路はるかに眺むれば 後や先にも友船の 帆引き連れて走り行く
八、道の島々早やすぎて 伊平渡立つ波押し添えて 残波岬もはいならで
九、あれあれ拝めお城もと 弁のお岳も打ち続きエイ
  袖を連らねて諸人の 迎へに出でたや三重城


『高平良万歳』(たかでーらまんざい)
組踊『万歳敵討』の一部を再構成した踊りです。
二歳踊の中で、最も演じられる回数の多いものではないでしょうか。元来は兄弟芸なのですが、近ごろは一人で踊られることも多くなりました。兄弟芸の際には兄が獅子、弟が馬を、一人芸では獅子を持ちます。
◆道行口説(みちゆきくどぅち)
一、親の仇を討たんてい 万歳姿に打ちやつれ 棒と杖とに太刀仕込で
二、編笠深く顔かくち 忍び忍びに立ち出でて 村々里々越え来れば
三、平良や忍ぶ敵の門 兄弟尻目に見過して 後の道に巡り来て
四、行末吉の御神に 祈る心は我が敵に 急ぎ引合はせ賜れてい
五、登て社壇に願立てて 真南に向ひて眺むれば 四方の景色の面白や
六、慶伊と慶良間の渡中には 海士の釣舟浮きつれて 沖のかもめと見まがふや
  それから下り下り来てエイ 御寺御門に立ち寄やり 休む姿や他所知らぬ
◆万歳かうす節(まんざいこーすぃぶし)
万歳かふすややんざいかふすや 二月御穂立て穂祭りや
天より下りの何の日取りや よい日取り 米や重さり石や軽さり
天より下りの布織上手の 綾織男の 錦の金欄唐苧の金欄
男の長者の荷馬の長者の 荷負ひよはれて やんざよはれて
やんざやんざと馬乗て通れば 一段とほめられた 今日も明日も御祝事
◆おほんしやり節(うふんしゃりぶし)
隣の耳切れ鼻切れ 跛引き猫が目はげ首白鼠に 荒頸喰われて
あべらじをらばじ 飛のがじ思入や 里一人だう
エー 里が物云いぐらしゃや 何に譬るがエー ふだのでゃげなや
◆さいんそる節(せんするぶし)
京の小太郎が作たんばい 尻ほげ破れ手籠 尾すげて
板片目貫ち乗り来たる みいははとしいつゃうんつゃうん
やんざいかうしや馬舞者 がいじ舞うた獅子舞うた
かにある物御目掛けため をかしゃばかり
シタリガツォンツォン ヤーツォンツォン


『前の浜』(めーぬはま)
随所に空手の型が取り入れられた、力強い踊りです。流派によって三曲の順番が異なります。
◆前の浜節(めーぬはまぶし)
一、エイエイ 前の浜に前の浜に 連れ飛ぶるサ 浜千鳥エイサ
  友呼ぶ声は チリチリヤ チリチリヤ
一、エイエイ 渡地の渡し舟 漕ぐ艫のサ 櫓の音かエイサ
  からりころり 漕げば行ぎゃい来きゃい
◆坂原口説(さかはらくどぅち)
一、エイエイ 今日の座敷は祝の座敷
  亀が唄えばサー 鶴は舞うる
  鶴は舞うる 亀が唄えばナー 鶴は舞うる
二、エイエイ 上り下りぬ坂原越えて
  元の都にナー はや帰る
  はや帰る 元の都にナー はや帰る
◆与那原節(ゆなばるぶし)
一、かりゆしの遊び 打ち晴れてからや エイスリスリ
  夜の明けて太陽の上るまでも
  アスリ 足拍子手拍子打ち囃子 踊り跳ね遊ぶ嬉しや
二、夜の明けて太陽や 上らはもゆたしゃ エイスリスリ
  巳午時までや御祝しゃべら
  アスリ 足拍子手拍子打ち囃子 踊り跳ね遊ぶ嬉しや


『麾』(ぜい)
名前の通り、麾を持って踊ります。流派によっては、浮島節が踊られない場合があります。
◆渡りぞう
(演奏のみ)
◆瀧落管ガチ(たちうとぅしすぃががち)
(演奏のみ)
◆揚作田節(あぎつぃくてんぶし)
豊かなる御代のしるしあらはれて 雨露の恵み時も違ぬ
(ゆたかなるみゆぬしるしあらはりて あみちゆぬみぐみとちんたがん
・・・豊かな御代の兆があらわれて、降雨も順調=豊年万作だ)
◆浮島節(うきしまぶし)
今日や御行逢拝でいろいろの遊び 明日や面影の立つよとめば
(きゆやうぃちぇおがでぃいるいるぬあしび あちゃやうむかじぬたちゆとぅみば
・・・今日はお会いしていろいろの遊びをして嬉しかったが、明日には面影が思い出されるかと思うとせつなく思う)


[御後段踊]

『しよんどう』
◆しよんどう節
◆それかん節
◆やりこのし節


雑踊

『浜千鳥』(はまちどり)
◆浜千鳥節


『花風』(はなふう)
◆花風節
◆下出述懐節


『本花風』(むとぅはなふう)
◆本花風節
◆早作田節


『むんじゅる』
◆早作田節
◆むんじゅる節
◆揚芋の葉節


『谷茶前』(たんちゃめー)
◆谷茶前節
◆伊計離節


(参 考)

沖縄タイムス芸術選賞・伝統芸能新人舞踊
舞踊課題種目

− 新人賞 −
(1)かせかけ
(2)上り口説

− 優秀賞−
☆指定種目
(1)伊野波節
(2)かぎやで風
☆選択種目(以下から代表者抽選により1種目)
(1)浜千鳥
(2)下り口説

− 最高賞 −
☆指定種目
(1)諸屯
(2)高平良万歳
☆選択種目((1)(2)から代表者抽選によりそれぞれ1種目)
(1)花風・むんじゅる
(2)前の浜・ぜい



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