うちなー雑記2(猫編)

朝日新聞6月19日朝刊の目取真俊「街物語 コザ<猫>」を読んだ。概略はこうだ。

「大学の夏休みに久しぶりに実家に帰った。台所の廂(ひさし)の下に置かれた麻袋が揺れている。袋をめくると手製の猫捕り器の中で猫が猛り狂っている。どうしたのかと聞くと、近所に住んでいるナビおばーが一週間以上頭痛が止まらないからユタに行くと、猫の煎じ汁を飲むように言われたという(だからかわりに捕獲した)。夕方、父が庭の池に猫が入った籠を投げ込み、一切の動きが止まると三和土(たたき)に籠を置き、熱湯を注いで毛を抜いた。・・・解体が終わった父は風呂に入っていて、台所ではメモを見ながら母が煎じ汁を作っていた。
翌日街で出会ったナビおばーは、頭痛だけでなく、腰や膝の痛みも治まり、耳もよく聞こえるようになったと報告する。彼女がベンチにねそべっていた三毛猫に手招きをすると、猫は毛を逆立てて一声鳴き、道の向こうに走り去った。」

沖縄では猫の失踪事件がザラに起こる。猫汁はぜんそくに効く、そういった話も聞く。先日も友人の家の猫がさらわれた。
友人の家には猫2匹、犬2匹がいる。彼女はウチナンチュなので猫がさらわれる可能性を十分認識していて、だから家の中で飼っているのだが、ふとしたことから一匹の猫が脱走してしまった。不安を覚えた彼女が周囲を猫の名前を叫びながら探して歩くと、か細い声で応えがある。声の元をたどっていくと、くずれおちそうなボロ小屋の中から声がする。彼女は愛する猫のためなら、とその家に堂々と踏み込んだ。あまりの汚さに靴を脱ぎもせず家の中を探しまわるが、人の姿も猫の姿もない。声がする方向に置かれているタンスをようやくどかすと、その奥に小部屋があって、やせ細った愛猫がぐったりしていた。

この話を聞いていた一同の頭の中は「???」。なんのために?やっぱり煎じるため?なぜそんな小部屋まで作って?その家の人間はなにをしているの?
蛮行とはいえない。クジラを食べる行為を野蛮だといってほしくないように。文化の違いは意外なところで露見する。そんな一瞬が沖縄に分け入ることをやめさせない。
糖尿病の友が一言「俺も猫汁飲んだら、足のしびれ止まるかなぁ?」

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