「サスケくん、今日はね、デザートがあるの!」
「じゃーん!手作りプリン!」
「サスケくんプリン好きだったよね?」

くるくるとはしゃぐ私をサスケくんはただ見つめている。

「そういえばさ、覚えてる?」
「ずーっと前にもプリン作ってきて、みんなに食べてもらってたじゃない?」
「初めて私がプリン作ったとき、サスケくんすっごい気になること言ってたのよね。」

満開のサクラを見上げる。
風がざわめいて、花びらが舞い落ちる。
視界は一面、ピンク色。
ちょうど、あのときのように。















「サスケくん、おいしい?」
サクラは恐いようなおびえているような複雑な表情をしてサスケに問い掛けた。
「・・・」
呼ばれた彼は面倒くさいなあ、という顔。
「おいしいってばよ!サクラちゃん!」
「ウン、ウマイぞー、サクラ。嫁にくるか?」
とりあえず今は彼の答えが聞きたいのだけど、いつものようにきこえてくるのは2人の声。
「ありがと。で、サスケくんは?」
サクラは『2人は眼中になし』、といった感じでサスケにもう一度、問い掛けた。心臓はドキドキだ。

サスケはあいかわらず仏頂面で、ぽつりと言った。
「・・・おいしい、と思う。」
サクラの顔がぱあっと明るくなった。
「ほ、ほんと?ほんとにおいしい?」
「・・・おまえ、自分で食べてないのか?」
「・・・う、うーん・・・できたてをちょっとだけ・・・。だって、ひとつ全部食べると太るし・・・」
サクラは恥ずかしそうにうつむいた。
「・・・ホラ、自分で食べてみろ。」
サスケはスプーンでプリンを少しすくって、サクラの前に差し出した。
これは、食べさせてくれるってこと?
サクラは真っ赤になって慌てたが、サスケはなんら気にしていないらしい。・・・天然なのね。サクラは悟った。
「?どうした?いらないのか?」
「ウ、ウウン!・・・あ、えっと、イタダキマス・・・」
おそるおそるスプーンに顔を近づけていき、
目を閉じてその上のプリンをくちに含んだ。


その瞬間、トクンと響いた鼓動はサクラのものだったか、それとも。



あまいあまいにおいがいっぱいにひろがって、サクラの舌の上でとろけた。

「・・・どうだ?・・・ウマイだろ・・・?」
自分でやったことながらサスケはなぜかはやまる鼓動にとまどい、ふいと横を向いてしまう。
「ウン!」
えへへーとうれしそうに笑うサクラがへんにまぶしくて、サスケは直視できなかった。

「サークラ、プリン、ついてる。」
間延びした声で笑う上忍はそんな二人を見てなにか悪戯を思いついたらしい。
「えっ?先生、どこ?」
サクラは慌てて顔をおさえるが、その前にカカシの手がサクラを捕らえた。
「ココ」
そう言ってカカシは、サクラのくちびるにほんのちょっとついていたプリンに、自分のそれをあてた。

「ん、ウマイ。」
カカシは満足そうに微笑んだ。

「・・・っ!」
「!」
「セ、センセ!!」

「ちょっ・・・ちょっと!!!先生!なにするのよっ!わ、私、ファーストキスはサスケくんと・・・って決めてたのに・・・!」
サクラの顔は湯気が出そうなくらい真っ赤だ。
「・・・」
サスケは反対に氷のような目つきでカカシをにらんだ。
「な、なにやってんだってばよ!せんせい!」
ナルトは腹が立つ、というより真っ赤になって慣れない世界に慌てている感じ。

そんな3人をしりめに、カカシは余裕の顔でニヤリと笑った。
「いいじゃナイ。サスケだってファーストキスはナルトだろ?」
「!」
「!」
「何で知ってんだってばよ!!」
思い出したくない過去だってある。ナルトは頭をかかえてガックリとうなだれた。
「そりゃあ〜知ってるさ。俺を誰だと思ってる。」
「そっ・・・そりゃ・・・ナルト・・・う・・・そうだけど・・・」
サクラも事故だとわかっていても、それを言われると切なくなるほかない。
サスケは一瞬顔をしかめたが、すぐにもとの仏頂面に戻ってカカシに言った。
それはとても挑戦的な響きをもっていた。

「・・・違う。」

これにはさすがのカカシも驚いて、三人は一気に色めきたった。
「何ッ?!」
「あ、そうなの?よかったー!ナルトじゃないんだ・・・って、じゃあ、誰?!」
「サクラ、驚くの遅い。」
サクラの天然にカカシの鋭いツッコミ。
「な、ななな・・・」
ナルトはもうついて来れてない。

「ちょ、ちょっとサスケくん?!え、じゃあ、キ、キスしたことあるの?ナルト以外と?」
慌てふためくサクラをちらりと見て、サスケは照れたように向こうを向いてしまった。
「いいか?わかってるかサスケ?家族とかはチガウぞ?ん?んでもって相手は女の子なんだな?」
「先生、なにいってるんですか。」
今度はサクラのツッコミ。

くるりとサクラはサスケのほうをむいて、
「う、うそ・・・じゃ、サスケくんその子のこと・・・好き、だったの・・・?」
サクラは愕然として尋ねたけれど、サスケの横顔に返事が返ってくる気配はなかった。
「・・・ちょっと・・・ショック・・・」
サクラはガックリとうなだれた。今日はせっかくサスケくんがプリンおいしいって言ってくれたのに。・・・いい日なのか悪い日なのかわからないわ。サクラは思った。
サスケは相変わらず仏頂面で、でもきっとそのキスの思い出は大切なんだろうな、と思わせるような、穏やかな顔をしていた。
「妬けちゃうなぁ・・・」
サクラはサスケの横顔をにらんだ。







帰りがけ、落ち込むサクラを知ってか知らずかサスケはサクラにこっそり耳打ちした。


「プリン、暇だったらまたつくってこいよ。」


サクラはぽかんと口を開けておどろいて、
「・・・!うん!」
ああ私って単純!サクラはそう思ったけれど、やっぱり今日は幸せな日だわ、と笑った。







「こんどはもっとおいしいの、作ってくるね!」






「楽しみに、してる。」




サスケも、笑った。












季節は春。

サクラは同じように、満開だった。









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