オブレート便り


'06.04.16発行


院長挨拶

オブレートの皆様 主のご復活 おめでとうございます。

                           院長 シスターテレジア 斉藤 弘子

 厳しい冬は、北国に住む私達にとって当然の試練(楽しいこともありました)と思い乗り切って来
ましたが、この冬は、雪の少ない所に住んでいる皆様の所も大変だったそうで案じておりました。
お元気でいらっしゃいますか?
 4月16日の今日、主のご復活祭に世界中の教会、修道院、ミッションの学校、幼稚園そして皆
様の各家庭から、「アレルヤ!アレルヤ!」の歓呼の歌声が響き渡っていることを想像するだけでも
喜びがこみ上げてきます。
 私達もオブレートの皆様に心を合わせて「♪キリストを信じるすべての者よ、主の過ぎ越しを讃
えよう。小羊は羊を贖い、罪のないキリストは罪の世に、神のゆるしをもたらされた♪」(典礼聖
歌351)と、勝利の歌を捧げています。
 ところで、皆様は、幼児洗礼、成人洗礼のどちらでしょうか?幼児洗礼だった皆様にとっては、
今年のご復活は何十回目でしょうか? 子供の頃に感じていた四旬節、復活祭のイメージはどのよ
うに変わってきたでしょうか? 長い信仰生活の中で、義務感から解放されて「愛の動機」で四旬節
を過ごし、復活祭を素直に喜んでいる自分に気づき、神様の恵みを実感した方々も多いことでしょ
う。
 どうぞ、その体験を大切にして、ご自分のお子様方、お孫さん方の信仰生活をあたたかい目で見
守って下さい。
 幼児洗礼の子供達は十人十色ですが、恵みの中にありながらもなかなか「愛である神様」に気づ
かず、信仰体験として味わうにはかなりの時間を要するものです。その時に、一番身近にいる人達
が、主の復活祭を心から喜んで迎えているか、年中行事の一つかのように迎えているか、日常の生
き方が問われていると思います。
 成人洗礼を受けられた皆様の多くは、神様に愛されゆるされた体験が先で、主の十字架の神秘を
深く味わうことから信仰生活が始まったことと思います。
 私達のまわりには、日々の生活の中で「祈っても、叫びを上げても誰も応えてくれない。神も仏
もあるものか。鬼でもいいから話し相手が欲しい。孤独だ!」と、自暴自棄になっている方々がい
ます。
 「愛である父なる神様」を示して下さったイエス様が遠いお方でなく「♪私の希望キリストは復活
し、ガリラヤで待っておられる。共に讃え告げ知らせよう。主キリストは復活された♪」と生き方
で示すことが出来るよう期待されていることを思い出して下さい。
 今年のご復活節が、世界の貧困の問題を「キリストのまなざしで」とらえるよう呼びかけておられ
る教皇ベネディクト16世の思いを実践できる日々となりますよう、オブレートの皆様の上に、復
活されたイエス様の導きを切にお祈り申しております。


『占領軍下のパスポート』
            シスターレナータ 森 治子 (東京目黒教会出身)
 今から56年前の1950年5月上旬、アメリカ占領軍のパスポートを持って横浜港からアメリ
カの貨物船に乗り、サンフランシスコを目指して旅立ちました。
 男子ベネディクト修道院のヒルデブランド師のご尽力によって、アメリカの聖ベネディクト女子
修道院に入会するためでした。
 だんだん港を離れて、見送って下さった友人、家族の人々、そして日本が小さく、小さくなって
行くのを見ながら、帰る日があるかしらという思いで、目頭が熱くなるのを感じておりました。初
めて外国に向けての船旅なので不安な気持ちでいっぱいでした。幸い、二世の方が同乗していらし
たので、何とか助けてくださいました。クルーの方たちと三食を共にして思ったのは、配給下の祖
国では味わえない食事でしたので、不思議でした。異文化に接した気持ちがいたしました。
 美しい朝日、夕日が地平線から昇ったり、沈んだりするのを眺めながら、静かな平和の雰囲気に
ひたったことを思い出します。二週間ほどの長旅が終わりサンフランシスコの港に入りました。上
陸手続きが始まり、私たち以外の方が全部下船された時、アメリカ移民局の役人の方から、私たち
は上陸できないと申し渡され、どうしたことかと驚いてしまいました。
 そして移民局に連れて行かれ、明日帰国させると言われ、その夜は移民局に一泊する様子に困っ
ていた時、ヒルデブランド師の友人の消防署長の方がおいでになり身元引受人となってくださいま
した。どうしてそうなったのか、はっきりしませんでした。
 そして彼の車で美しい夜景の街を通り過ぎ、お宅に着き地上で一夜を、ご家族の暖かいおもてな
しを受けて過ごしました。サンフランシスコの名所ゴールデン・ブリッジは立派でしたが黄金では
ないしと思いました。スケールの大きさに感心しながらいろいろな所に案内していただきました。
 三日目、おもてなしに感謝しながら、大陸を東から西へ走る汽車に乗り三日間揺られながら修道
院のあるミネソタ州聖ヨゼフ村に到着し、線路のわきに降りたのですが、駅舎がないのでびっくり
してしまいました。十名くらいのポストラント(志願者)の方々が迎えに来ておりました。ともかく
初めてお会いするのに言葉が出てこないのでビッグ・スマイルでそこを過ぎて、聖スコラチスカと
いう志願者が住む館に向かいました。玄関に二人の責任者のシスターが立っておられたので、ひと
こと サンキュー だけで挨拶をいたしました。印象としては、明るい喜びのある雰囲気だと感じ
ました。その頃の日本の修道院は厳粛なたたずまいであったことを思い出しました。それで違うこ
とを感じたのでしょう。
 立派な塔がそびえ立っている荘厳な大きな建物で、どこが何か、場所が分からず、しばらくは何
度歩いても道を覚えられませんでした。庭は広く、森あり湖ありの考えられない程大きな土地の中
に静かな装いで、そびえておりました。本部・支部を合わせて千人ほどのシスターが祈り働いてお
りました。私達は五人のポストラントの人がビックシスターとして、志願者の多方面にわたる生活
のスケジュールと生活様式を教え導いて下さいました。
 問題はコミュニケーションです。英語の辞書を片手にして何とか通じさせたと思います。隣人愛
の実践で接して下さっておられました。会話中とんでもない答えをしているので、友人にからかわ
れているのも知らずニコニコしていましたが、良く解らないのでかえって心は平和だった事だと思
います。誰も彼も親切だと思い込んでいましたが、人の心は、たびたび変化するものと分かりまし
た。アダムが人類に残した大きな重荷として、回心を促すためなのかと考えてしまいました。
 お祈りはラテン語なので発音はローマ字読みに似ているので苦労がありませんでしたが、意味は
さっぱりでした。一緒にお祈りできることを感謝しました。
 沈黙の時間もたびたびでしたので、とても静かに過ごしました。
 ある日、休憩どきに日本から送られてきたスルメを焼いたら、全館に臭いが回って大騒ぎとなっ
てしまいました。心では残念に思う気持ちと、食生活の違いをつくづく感じたものです。
 一ヶ月経ってから、私達の渡航費はカレッジの生徒さん方が募金して集められたものと知りまし
た。歓迎会に招待して下さり、接待を受け感謝でいっぱいでした。大学では宗教とラテン語を一年
間勉強させて頂きましたが、宗教は回勅の勉強でとってもとっても大変で、先生方、また、志願者
の方々の助けでどうにか単位が取れました。
 そうこうしているうちに修練者となり、一年後に初誓願を立て、有期誓願二年目に日本の修道院
に派遣され、帰りもシアトルから船に乗り、途中嵐になってエンジンの故障で進まず、漂ったりを
経験しながら日本に着きました。
 横浜港にはシスターべネディスとシスターレジア(共にアメリカ人)そして神父様方と家族が迎
えてくれたのが1955年3月でした。


『点訳奉仕に魅せられて』
          シスターマリアベダ 岡 由美子 (山梨甲府教会出身)
 オブレートの皆様の中にも、私同様、読書を趣味にあげる方がいらっしゃることでしょう。読書
は人生に大きな喜びを与えてくれるものの一つであり、幸い目の見える私達は、時間さえあれば、
ごく簡単に読みたい本を手に入れて楽しむことができ、本棚を持たないと言う人もめったにいない
でしょう。けれども目の不自由な人にとっては、これは今でも思い通りにいかないことの一つです。
 点字を習い始めた頃、私達の使う英和辞書を点字に直すと、一冊が20巻ほどにもない、値段も
20万円近いと聞いたように思います。ふだん私達が読む一冊の本は、点訳されると4・5巻にも
なり、1巻が150から180頁の分厚い点字本になって、持ち歩くのは無理だと思います。盲学
校の生徒たちには、点字教科書が無料で配布されますが、参考書等は図書館で読むほかなく、盲人
達が、もし自分の読みたい本の点訳本を購入できたとしても、場所をとるために、自分の家が点字
図書館になってしまう!と一盲婦人が笑いながら話してくれました。ですから私たちと違い、盲人
は全国にある数少ない点字図書館から本を借りて読むか、どうしても読みたい本があれば点訳ボラ
ンティアに直接頼むしかありません。
 私が点訳奉仕を続けられたのは、良い指導者と日赤室蘭点訳奉仕団のメンバーがいて、又共同体
のシスター達の変わらぬバックアップのおかげだと感謝しています。高校在勤中は、クラブ活動や
PTAにも呼びかけ、出来上がった点訳本を盲学校や大阪のふれあい文庫に送りました。物語に合
わせて生徒たちの作った創意あふれる楽しい表紙を今も思い出すことができます。退職後はカトリ
ックのロゴス点字図書館を通して奉仕させていただいています。点訳用にたいてい宗教に係わる本
を送ってくださるので、ロシア正教、仏教、カトリック関係の本を点訳しながら、度々、私自身の
日常生活の糧にさせてもらってもいます。例えば、「善し悪しの人を見る目はありけれど、我が身
の上はぬば玉の闇」などという墨字を点字に打つ時、自分をふり返らざるを得なくなります。
 点訳は、一字読み違えたために1枚全体を打ち直すということも起こります。ですから正確に点
訳するためには、手と頭を使い、神経を集中しなければならないので、老化防止に役立つと言われ
ますし、好きな時に、手話と異なり相手なしの一人で仕事をすることもできます。その上、点訳技
術の習得の基礎は無料で受けられますし、点訳書等の郵送も無料ですので、この活動には多くの利
点があり、有難いです。又目の不自由な人達が現実を受け入れ、とても明るく前向きに生きる姿に
接する時、私にとっては教えられることや励まされることの方が多く、この方達とのお付き合いは
活動を通していただく大きな恵みの一部となっています。
 ところで、今もって点訳文を図書館に送る度に何十ヶ所となく訂正箇所を指摘されて、完成まで
に時間がかかり、国語力の不足と点訳の未熟さを思い知らされています。だからこそ根気や向上心
を喚起されるのかもしれません。この奉仕活動の魅力にひかれて、ミスのない点訳を目指してこれ
からも続けていけたらと願っています。
 すべてにおいて神が光栄を得んがために。



第20回 オブレートの集い ご案内

 講師は昨年、長野で講話をしてくださったベネディクト会の神父様です。
北海道で皆様にお目にかかれることを楽しみにしておられます。
ぜひご出席くださいますようご案内いたします。
日  時  2006年9月19日(火)
場  所  聖ベネディクト女子修道院 スコラスチカ ハウス
  〒004-0002
    札幌市厚別区厚別東2条6丁目4−10
講  師  エドワード神父様(三位一体ベネディクト修道院司祭)
テ ー マ  「聴く」
参 加 費  1,000円(昼食代を含みます)
    ※ 当日受付でお支払い願います。
申込方法 申込・お問い合わせは、文書・電話・FAXで受付中です。
  TEL:011−897−6737
  FAX:011−897−6739
  担 当:Sr.上田までお願い致します。
申込締切  2006年8月31日(木)
日  程  受   付  9:30
 講話(1) 10:00  講話(2)13:30
 ミ   サ 11:00  茶 話 会 14:30
 昼の祈り  12:00  解  散 16:00
 昼   食 12:20



短  歌

修道院の小窓に見ゆるナナカマド実の重たげに雪つみ垂るる
                  ひよどり     ついば
雪雲に暗める庭のナナカマドに鵯二羽きて啄み遊ぶ
   ぬく み   ほぐ
ほの温き聖堂に解るる思ひせり天使のごとき歌声満つるに

                    (室蘭 柳生 燿子)


 毎日降り続いた雪 ゆき、除雪した後の高い雪山にすっぽりと囲まれていた二月、
修道院に宿泊された折に詠んで送って下さいました。         〔係 記〕



心に残るこの一冊

 『栄光への旅立ち』
     函館トラピスチヌの修道女 メール・ベルクマンスの生涯
                                著 者 トマス・マートン
                                訳 者 木鎌 安雄
                                発行所 サン パウロ
                                定 価 2,240円

 1902年のことでした・・・

 「修道女たちは、毎日ほとんど食べるものがなく、わずかの野菜と少しのパンだけであった。そ
のためまもなく貧血症になり、冬や浅い春にかかるごく普通の病気にも抵抗力がなくなった。何人
かの修道女はとても体が弱ったのでフランスに帰ることになった。六ヶ月の間天使の聖母修道院は
たったの二人の歌隊修道女だけになった。」 (本文からの抜粋)


 著者のトマス・マートンは、アメリカのトラピストの司祭でした。メール・ベルクマンスの伝記
を書き残した目的の一つに、第二次大戦後、オランダにある女子のトラピスト修道院からアメリカ
のボストン市郊外に合衆国で最初の女子修道院創設の計画があり、アメリカの人たちにトラピスチ
ヌの修道女の真の生活を紹介するためでした。

 さて、メール・ベルクマンスは、函館のトラピスチヌ修道院の創立第二グループの中の一人とし
て、フランスはラバルの修道院から26歳で日本に派遣されました。聖ベネディクトの戒律に従っ
て真実に神を求める生活の模範を、日本の修練女たちに示したのです。
 肺結核のため39歳の若さで故国フランスを見ることなく聖女のように慕われながら天国へと旅
立ちました。


 聖ベネディクトの戒律を知る上でも参考になると思います。




▼オブレート会のご報告▼

 ★ オブレートの集い開催日決定

 北海道の方だけではなく、最も自然が美しく、秋の実りを迎える9月の札幌にぜひ足をお運びい
ただいて、ご一緒にベネディクト会の神父様の講話をお聞きいただければ幸いです。定員はありま
せんが、お申込はお早めにどうぞ!お待ちしております。


 ★ 新会員のご紹介

 天野 久美子様(小金井教会所属)
 洗礼名はクロチルディスです。母上様も会員です。どうぞ宜しくお願い致します。


▼修道院からのお知らせ▼

 ★ 年の黙想会を終えました。

 私どもの年の黙想が、1月4日〜10日まで、イエズス会のガラルダ神父様のご指導によって本
部修道院で行われ、講話を通して、たくさんの恵みと気づきをいただきました。健康上の理由など
で全会員が一緒に集まることは高齢化に伴い難しくなりますが、心をひとつにして、頂いた恵みを
生かす生活を送りたいと決意を新たにしております。


            
                写真をクリックすると、拡大表示します。



 ★ 召命黙想会があります。

 9月15日(金)から17日(日)の日程で青年男女を対象にした召命黙想会があります。指導
司祭はベネディクト会のエドワード神父様です。お知り合いの方をご紹介いただければ幸いです。
詳しい内容のお問い合わせは、シスター藤井までお願い致します。宜しくお願いいたします。


 ★ 待望の志願者入会しました。

 アンナ山口理奈子さん(四国松山教会出身)は、3月21日、正式にポストラント(志願者)と
して入会いたしました。昨年夏の召命黙想会に初めて参加し、10月からアフリエイト(入会希望
者)として本部修道院に修道生活を体験入会しておりました。これからも山口さんのため、また教
会の召命のためにもお祈りをお願いいたします。




あとがき

▼復活祭号で皆様にお会いできること感謝します。今年のご復活祭はどのような所でお迎えでしょ
うか。いろいろな予期していないことが起こる日々、嬉しいこと苦しい出来事の中にも神様のはか
らいを信じて、今日も頂いたこの信仰の恵みを大切に育み、復活の喜びを伝えましょう。アレルヤ
アレルヤ


▼スノーエンジェルをご存知ですか?冬の北海道をスノーエンジェルでいっぱいにしようという雪
祭りの企画の一つ。雪天使です。新雪の上で仰向けに寝て、両手両足を上下左右に動かし起き上が
ると、雪の上に「天使のかたち」が出来ることからこう呼びます。この雪天使は『ゆきのひ』とい
う絵本に登場しています。季節と年齢に関係なく、守護の天使が見守っていてくれることを心に留
めて喜びのうちに生きましょう。