第7回 講演会記録

開催日時 会場 テーマ 講師 備考
7 平成14年6月7日(金)
 17:30〜20:30
北海道ホテル
日本農業は21世紀をどう生き抜くか 〜WTOとアグリビジネス〜 京都大学経済学部教授 中野 一新 実施済
会員63人
一般14人
* ディスカッサント(討論参加者)
十勝農業の現場から
許イがいっぱい牧場 代表取締役/大樹町産業クラスター研究会 会長 片岡 文洋
二つの"戦後"を考える 〜エンロン破綻とアメリカ〜 筑波大学 教授 進藤 榮一

− 主催者あいさつ 

 みなさんおはようございます。今日はサッカーのワールドカップも真っ最中でございまして、企業の代表をされる皆様方にも大変ご多用な中だったと思います。このように大勢ご参集を頂きまして十勝創生塾に対する熱い思いというものを感じております。私どもの十勝創生塾、平成12年11月18日に第1回に内橋先生をお招きして始めまして、今日で7回目になるわけですが、この間色々な先生方に数多くのことをお教え頂いたわけでございます。今日は皆様のお手元にご案内しておりますように、京都大学大学院経済学部教授の中野一新先生、そしてもう一方ディスカッサントとして皆さんもご存じの方も多いかと思いますが、大樹町の夢がいっぱい牧場、又大樹町の産業クラスターの研究会の会長をしておられます片岡文洋様、お二方にお話をしていただく。そして最後に恒例の塾長にお話をしていただくという予定になっております。第2期の今日が3回目ですので、今日でひとくくりになるかと思います。と申しますのは進藤塾長がイギリスのオックスフォード大学のお招きを受けて来週から3か月間、オックスフォードの方に行っておられるということで、ちょうどその間休みになります。私どもいつも10月から始めておりますので、第3期はこの10月から又塾長の新しいお話をお聞きする機会があるかと思いますので、皆さんにはどうぞご期待をお願いいたします。それと今まで6回の分につきまして、色々内容の濃いお話があるわけなんですけれども、十勝毎日新聞社の方に少し詳しく掲載をしていただいて、市民の皆さんに広く内容を知っていただこうというようなことも考えております。更にこの内容を本に、簡単な、ブックレットと言いますかムックといいますか、本にまとめて第1期、第2期というような形で出していこうというようなことも考えております。どうぞこれからもひとつよろしくお願いをいたします。ご挨拶とさせていただきます。


それでは本日の講師のご紹介をさせていただきますが、初めての方もいらっしゃるかと思いますので、当十勝創生塾の塾長、進藤先生、ちょっとお立ち頂けますか。進藤先生です。よろしくお願いいたします。先生には後でゆっくりお話していただきたいと思います。それでは本日のセミナー、ゲスト講師のお話をいただく前にディスカッサントとゲスト講師の略歴、プロフィールをご紹介させていただきたいと思います。講師の中野一新先生は1940年、北海道余市町にお生まれになりまして、その後京都大学経済学部にお入りになり、経済学研究科修士課程修了後博士課程を修了されまして、その後助教授、教授と現在に至っております。先生のご紹介の中で、京都大学のホームページに出ていたのですが、新入生に一言という部分がございまして、新入生には内外の古典文学の乱読をお勧めする。又入学後は早い時期に経済学古典を精読する習慣を身につけ、基本的文献の骨格や論理展開、著者の主張をきっちり読み取る力を培ってほしいというふうにおっしゃっております。自己紹介といたしまして、多国籍アグリビジネスが現在の中心的な研究テーマ。変動著しい農村の実情に接するため、時間の許すかぎり各地の農村実態調査に励んでいるということで、趣味は食べ歩きとざる囲碁ということでプロフィールございました。所属学会は土地制度史学会理事をお務めになり、日本農学経済学会、日本農業市場学会に所属されております。所要著書、論文等につきましては皆様にご案内したプロフィールの中にもご紹介されておりまして、ここでご披露するとお時間がなくなりますので、割愛させていただきます。そしてディスカッサントとしてご参加頂きますご先生をご紹介させていただきます。有限会社夢がいっぱい牧場代表取締役でいらっしゃいます片岡文洋様、1945年10月20日京都府福知山市にお生まれになりまして、京都大学農学部農学科に入学になり、ご卒業後、1971年現在の地に新規就農されまして、その後今の有限会社夢がいっぱい牧場を設立され、昨年仲間の方と帯広に北の屋台みのりやを開設されております。そして現在は大樹町産業クラスター研究会の会長をお務めになっております。以上プロフィールをご紹介させていただきまして、それでは中野一新先生のお話を頂きたいと思います。テーマにつきましては、「日本農業は21世紀をどう生き抜くか〜WTOとアグリビジネス〜というテーマでお話しいただきたいと思います。先生ご登壇お願いいたします。

 

− 中野 講師 講 演 

 今晩は。ご紹介いただきました京都大学の経済学部で農業経済学の講座を担当しております中野と申します。進藤先生、京都大学の隣の法学部で私の1年先輩でございます。片岡さんは先程お聞きしましたら私より5年後輩ということで、帯広の地で偶然にも京都大学出身の者が3人が演壇に立つというのも何かの縁かと思います。私の郷里は余市でございます。帯広はスケートで有名ですが、ジャンパーの笠谷さんとか秋元選手だとかが出た所でございます。僕のところは元々は会津の出身なんですが、会津の戦争に破れて明治の5年、ひいおじいさんの代に入植をしたと。うちの集落はその後秋田の方、阿波徳島の方とがいますから3つの地方の出身の人が集まってひとつの集落ができてるような所です。北海道開拓使が早くにりんごの苗を各農家に配りましたもんで、日本で最初にりんごがなったところということでございます。当時横文字のりんごの名前がなかなかわからんというので、苗木が入ってきた順番に1号、2号、3号と付けていったもんですから、今でも例えば紅玉は6号、国光は49号というふうに呼んでます。僕の小学校の頃までは1号というりんごもありました。そういうところでございます。今日、私がこれからお話することですが、私の専門はアメリカの農業と日本の農業との比較研究ということですので、世界の最先端をいっているアメリカの農業事情、あるいは食糧産業の事情というものがどうなっているのかということを最初に話をしたいと思います。その上で今日の世界の農業を取り巻く環境の中でとりわけ大きい問題になっておりますWTOの問題ですね。それとの絡みで今回の中国のWTOへの加盟がどういう意味を持っているのか。それからつい今から1か月程前にアメリカで新しい農業法が制定されます。これがどういう意味を持っているのか。この2つのことに絞って今後のWTO交渉の見通しと絡めてお話をしたいと思います。そこで私の役が終わると一番よろしいんですが、進藤先生に日本農業は21世紀をどう生き抜くかということで話せという難題を頂きましたもので、それを半分は責を果たさなければならないと思いますので、後半のところではつい5月の30日、一週間前に、後でお話いたしますが、政府の今後の農政についてのかなり具体的なプランが出てきました。これについてお話をした上で私の21世紀をどう生き抜くかということについての考え方、どういうことを考えているかということを触れて私の話を終わらせていただくというようにしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。時間の節約のことも考えて、少しレジメを詳しく書きました。最初にアメリカの農業の実情を先ずざっとスケッチしてみたいと思うんですが、表の1を見ていただきたいと思うんですが、これは一番新しいアメリカの農業センサス、97年の農業センサスで見たものですが、農場数が191万。日本の農家数が今約300万強ですね。もちろんアメリカと農家の定義が違うわけですから単純には比較できませんが、3分の2ということです。この表の見方ですが、一番上に販売額が500万ドル以上というのが載っています。これがざっと97年に2800の農場。その農場がアメリカの農業総生産額の20.5%を占めているということです。2800の農場でアメリカの農業生産額、あるいは販売額の2割を占めているということです。それからもう少し刻みを低くして100万ドル以上のところを合わせても2万6000の農場です。ここでもう40%以上ですね、農業生産額。つまり申し上げたいのはほんの一握りの農場で農業生産額の圧倒的部分を担っている。それと後で触れることになりますが、日本と同様、農産物の販売額が2万ドル未満の農場が117万、過半を占めているわけですね。ここの部分は農業生産額全体の中でいうと3%を占めているにすぎない。まだまだ日本全体の農業生産の中で大きな部分を兼業農家が占めているわけです。アメリカの場合は兼業農家もたくさんおる、老人農家もたくさんおるんだけれども、農業生産の圧倒的な部分はほんの一握りの部分に担われている。そこが日本の農業構造と決定的に違うんだということですね。これを知っておいていただきたいということであります。それから次に右側の2の表のところを見ますと、これを野菜とか果物とか品目別に見たものであります。これで見ますともっとはっきりしてきます。100万ドルといいますが、1ドル100円と考えたって年商1億円以上の農場ということになりますね。その年商1億円以上の農場が野菜生産全体の75%、園芸作物で65%、果物でも60%近く。圧倒的な部分を占めている。それから畜産でも家禽と書いてありますが、アメリカの場合は鶏と並んでターキー、七面鳥がたくさん占めますもんでそれを合わせたもので57%。肉牛で53。酪農と養豚それから右上の穀物、ここが伝統的にアメリカではファミリーファーマーと言ってますが、家族経営が担っていた部分です。ここがこの後お話いたしますように、この15年位の間に急激な変化を示しているということでございます。ここは酪農が非常に盛んな所ですから、酪農を中心に先ずお話をしたいと思うんですが、アメリカの酪農経営というのは伝統的に五大湖の周辺のウィスコンシン州とミシガン州とミネソタ州、酪農3州と言われるアメリカの中西部が中心です。大体100頭から多くても200頭規模の放牧での酪農経営というのが伝統的に進んでいたんですが、それがこの15年程の間に大きく変わってしまって、西海岸のカリフォルニア州が酪農部門でもアメリカ最大の生産州になるというふうに変わってくるわけであります。そしてこの西海岸での、カリフォルニアを中心にアリゾナ、フロリダ半島、この辺の所の飼い方は、レジメに書きましたドライロット方式というものであります。これは舎飼で朝から晩まで濃厚飼料を食わせに食わせるという乳牛の飼い方であります。中西部の酪農3州での飼い方は放牧がほとんどで濃厚飼料は朝、晩、ほんの僅かずつ与える位なわけです。全然違うわけであります。放牧をしないで舎飼ですから大体1000頭規模のものを1つの経営が、それ以上集めると病気が移りますからね、2箇所3箇所に畜舎を作って、時には州を越えて畜舎を作るというやり方であります。大きいところでは1農場で5000頭以上を飼う。従業員を10人とか20人とか雇う。こういう飼い方であります。何故こういうことをやっているかと言うと、放牧で言うと大体年間の乳量が7000キロ位です。この濃厚飼料を徹底的に食わせて、丁度舎飼の肉牛のような飼い方でいくと大体1万キロを越えるわけですね。するとこの3000キロの差が非常に大きいわけであります。その代わり朝から晩まで濃厚飼料を食わせる放牧の仕方でありますから、牛にストレスがかかります、無理がかかります。たかだかアメリカでは5産、5回お産をする、子牛を産むというのが精々です。放牧地帯の中西部では大体8産から9産いくわけです。ですから元牛の代金という意味ではコスト高になるんです。それでもドライロット方式の方が儲けが大きいということで、こういう言わば工場型の農業生産が急速に広まったとういことであります。次に養豚の経営、これもアメリカでは典型的に有畜複合経営で、畑で飼料作物を栽培して100頭から200頭の豚を飼うという経営が典型的だったんですが、それが表の4のところを見ていただくと分かりますように、この10年間で例えば、年間の出荷頭数が5000頭以上の所のシェアーが17%から65%。つまり工場型養豚にがらっと変わってしまった。丁度今採卵系の飼い方がゲージに入れて鶏が後ろ向きできないのと同じように豚もゲージに入れて振り向くことができないという位の密殖飼であります。しかもそういう飼い方ですから養豚に特化する、専門化していくとういことになります。それから多頭飼育ですから、当然ですが、いろんな畜産の公害の問題とかでてきますので、今までほとんどのアメリカの養豚は中西部だったんですが、イリノイ州とかアイオワ州とかシカゴを中心にした所だとかだったんですが、それが急速にアメリカの南部、東海岸の南部に産地が移動してきています。ノースカロライナなんかが典型です。その産地の移動のひとつの要因は畜産公害の公害規制がアメリカは北ほど厳しいんです。南部は緩いんです。そういう公害規制の緩いところということがひとつの原因で南への産地移動が進んでいるといわれております。ブロイラー系の場合もそうですが、いわば与えた餌を最大限肉にしよう。ですから我々農業経済の者はよく2・4・8という言い方をするんですが、仕上がった段階の牛なり豚なりの体重、それに対して牛なり豚なりに与える生涯の餌の量を鶏の場合は鶏の体重の2倍、豚の場合は4倍、牛の場合は8倍というのがひとつの経営目標、飼料効率と言ってもいいですが、経営目標になっている。ですから今では鶏肉が一番安くて、次が豚肉、牛肉とこういうふうになっている。かつてのように残飯養豚の時代には豚肉の方が鶏肉より安いとう時代がありましたが、今はほとんどが購入餌に頼ってますから、餌の使用量と肉の高さが比例するという関係になってきているわけであります。例えば採卵系なんかでもゲージに入れて向きも変えられないようにしているし、ほとんどが今はウインドレス、かまぼこ兵舎のようになっていて、餌を与える時だけライトをつける。それ以外の時は暗くして、正に鳥目ですから見えない。ブロイラーの場合も放し飼いにしますが、やっぱり餌を与える時だけにする。つまり与えたエネルギーを最大限肉に変える。運動エネルギーに変わるのを最小限にするという飼い方ですね。ですから採卵系でも首に毛が生えらないでも卵を産むというようなやり方をとっています。それからもっと最先端をある意味でいっているのは、1日24時間なんですが、1日のサイクルを23時間にして、そうすると20日で1個卵を産む数が増えてくるんですね。これは成功しているわけです。今は1日サイクル22時間で挑戦しているんです。そうすると10日で1個卵を産む回数が増えてくる。つまりそういう動物の生理を狂わせてまで利潤第一で家畜を飼っていくという技術が一方で追求されてくるような時代になってきているということです。ブロイラーなんかですと、若者達が特に柔らかい肉を嗜好するということになりますから女性ホルモンを注射します。密殖飼いですから餌に抗生物質を入れざるをえない。そういうことになります。一番恐ろしいのは停電になった時なんです。密殖飼いですから常に大型のファンを付けて風を送ってるんです。このファンが1時間ストップすると鶏は蒸し風呂になってみんな死んじゃうということですから、それぞれの養鶏団地30万羽、あるいは100万羽の養鶏団地には必ず自家発電装置が大きな病院と同じようにつけてある。停電になったら直ぐスイッチを切り換えられるように。そういう体制を作って農業をやっているということでございます。次に今問題になっている種子の問題、遺伝子組み換え作物の問題、GM作物問題ということを言われておりますが、そのことについても簡単に見ておきたいと思います。表の5は2001年の全世界での大豆、とうもろこし、綿、菜種の作付面積とその内のGM作物の作付けのウエートがどれ位かということを示している数字であります。大豆はもう全世界で50%近くにまで来ているということであります。レジメの方に書いてある数字は国別で見たんですが、アメリカ、アルゼンチン、カナダ、中国、この4国でもう98%か99%になると思います。集中的にGM作物が作られている。これが今安全性がまだしっかり確認されていないということで消費者再度に不安を抱かせている問題です。最近非常に分別流通ということで、遺伝子組み換えでない流通網を作って安全な例えば豆腐用の大豆とか納豆用の大豆を輸入してくるとかいろんな問題が議論されています。これは僕はつぶさにアメリカの産地からミシシッピ川の下流の積出し港まで見てきましたけれども、そう簡単にできるものではありません。もちろん別の流通ルートを作ることによるコストも高いですが、あらゆる工程で混じる可能性が一杯あるわけですね。しかも今のよう表示そのものに信憑性の疑いがあるということになってしまうと、本当にそんなものがきちっきこれから長期に渡ってできるのかということについて、率直に言って私は非常に不安です。非常に厳しい状況だろうと、日本の農協だとか消費者団体とか頑張っておられるのはよく分かります。それ自身は大事なことなんですけれども、もう既に大豆の半分近くまでがGMになってきた時に、今言ったようなルートを確保、本当に現実的なものとして長期に渡ってできるかということについて私は不安を感じている者の一人でございます。それから最近のアメリカの農業生産のもうひとつの特徴は契約生産とかインテグレーションという問題であります。これから触れます様々な農業関連の産業、アグリビジネス、それからスーパー資本、こういうものと農家とが契約生産をしたり、もっと資本的な提携をしっかり結んだ資本結合したインテグレーション、こういう生産形態が急速に増えているということです。今日昼間に十勝の士別、あるいは帯広市内の大きな農家を見せて頂いたんですが、そこでも契約生産の話がいろいろありましたが、例えばレジメで見ていただきますと、生鮮野菜の合計の欄見てください。65%、加工用野菜の98%、じゃがいも95%、ビートさとうきびは昔から非常に契約生産進んでいるところですから省略します。当然です。あと肉の方でも羊の肉、鶏卵、ブロイラー、七面鳥と、ほとんどの作物がこの間に非常に契約生産伸びている。契約生産が弱い部分、飼料穀物、食用穀物、大豆、煙草、牛乳関係ですね。これは、今日はもう時間がないので省略いたしますが、アメリカで一番手厚く政府が価格支持政策をやっている部門です。ここは契約生産低いですが、それ以外の部門は言わば生産者と生産者からその農産物を買いつけるアグリビジネス、あるいは生鮮食糧を扱うスーパー資本との間でのリスクの分散ということを図るために契約生産がやられていくわけです。しかし同時にこの契約生産というのは農家が栽培する作物の品種、栽培の時期、あるいは使う農薬、肥料、そういうものが全部業者の方でマニュアルが決まっていて、そのマニュアル通りに生産しなければならない。それから丁度農業改良普及員のように業者の技術の普及員が契約生産をしている相手方の農家の所を巡回をしてマニュアル通りの生産をしているかというのを絶えずチェックしていく。こういうやり方であります。ですから次第にそういう資本の側の農家の経営に対する支配というのが強まってきているのが今日のアメリカの農業の現実だろうというふうに思います。それから次に少し話が大きいことになりますが、表の7を見て下さい。これはアメリカの最大手の食品メーカー、アグリビジネスの状況を示した数字であります。アメリカはこういうふうにランキングをすることが何でも好きな国ですから、ランキングをした表が雑誌や業界紙に載ってくる。今の全米で一番大きい農産物の食品の販売会社はフィリップモリスという会社であります。これは元々は煙草会社ですよね。それからここに出てきますが、13番目のナビスコホールディング、これもレイノズルという煙草会社というナビスコ、昔はナショナルビスケットと言っていたビスケット会社、これが統合してできた煙草会社が主流のもの。これが80年代の末から喫煙人口が減ってくる中で、煙草だけではまずいということで経営をどんどん多角化し、食品部門で多角化していって今や全米のトップに座るということになりました。それからコナグラカーギル、これは元々穀物商社、穀物メジャーと呼ばれるものであります。これについては後で触れるようにいたします。ペプシコ、コカコーラ、これは清涼飲料水のアメリカでビッグブラザーズというわれことですからわかると思います。あと特徴的なのは7番目のADMというのがアメリカの最大の製粉会社であります。8番目のIBPと12番目のベストフーズ、これとあとカーギルの子会社のエクセルとこの3社がアメリカの3大食肉パッカーと呼ばれるもので、言わば1992年に牛肉の自由化がされて以降、輸入肉が大量に日本に入ってくるわけですが、その時のアメリカの中心がこの3大パッカーと呼ばれるものになるわけです。それとアランホイザーブッシュというのはビール会社ですが、アメリカのカージナルスのオーナーですね。サワリーハインツは缶詰会社。ネスレはご存じだと思います。ネスレはスイスが本社ですが、スイスにあるのは本社機能だけで実際に製造しているのは各国でアメリカのネスレが一番大きいわけであります。等々が大きなシェアを示して、311億ドルということですから、1ドル100円で計算したって年商3兆円。120円でいくと大体年商4兆円というビッグビジネス。この点も日本の場合は味の素を除くと食品関係のメーカーというのは明治にしろ雪印にしろ森永にしろ、中堅企業ですよね。ですがアメリカの場合はそういうビッグビジネスの中に食品産業が大きな位置を占めている。そしてこういう食品会社、あるいはそれの子会社が農家との間でいろんな形の契約生産とかインテグレーション。とりわけ最近は川上から川下までという形でインテグレーション化が進んでいるのが現実であります。次の表の8、ナンバー2の方を見ていただきたいんですが、先程表の7であげましたようないろんな企業がこの間にどんどん経営を多角化していっているというのが特徴であります。ここではカーギルコナグラという元々の穀物メジャーとADMという製粉会社、これは最近急成長した代表的なものなんであげておきました。これらの企業がそこに書いてありますような様々な分野に進出していって、しかも業界のトップだったり2位だったり3位だったり。つまり経営を大幅に多角化していっているということであります。そしてそれによってとりわけアメリカの場合は1980年代に入ってカーターからレーガン大統領になった時に、カーター時代のドル安政策からドル高政策に転じるわけですね。ドル高になったために、ちょうど日本が円高になって日本の工業製品が海外に売れにくくなったのと同じように、アメリカの農産物が売りにくくなるわけです。80年代の半ばに戦後最大の農業不況がアメリカで起こって次々と農業銀行や農業資材メーカーが潰れる。それから農業関連産業が潰れることによって地域経済全体が陥没する。ちょうど石炭から石油にエネルギー転換になったため日本の産炭地が次々と経済陥没していきますよね。石炭産業だけでなく産炭地の地域経済全体が北海道でも北九州でも全部陥没していったんですね。それと同じような現象が80年代の半ばに起きてくる。その時にカーギルだとかコナグラとかADMというのは切り抜けていった代表的な企業である。彼らはどういうことをしていったかと言うとカーギルで例をとりますと、元々穀物商社ですから穀物を買い集めます。そしてそれを自分の系列の飼料会社で配合飼料を作っていく。それからもう一方、直営農場と契約農場で牛を飼って自分の餌工場で作った餌を使って牛を飼育する。仕上がった牛を解体処理をしパッカーで精肉にして海外に売る。その一連の、つまり川上から川下までの一連のルートを自分の経営の中に組み入れていくわけであります。そうすることによって農業不況になって中々物が売れない時に飼料工場で作った飼料を自分の会社の関連のところで売る。つまり自分のところのある工程での製品が次の工程の原料になる。そこで又肉ができる。そうすると又それは次の段階の原料になる。そういういわばフードチェーンといいますか、食糧の連鎖によって自分の資本の系列内においていわば需要を自ら作りだすことよって不況期を乗り越えていくわけです。それに出遅れてしまった代表的なものがコンチネンタルブレーン、アメリカではコンチと言います。カーギルに次ぐ有名な穀物メジャーであります。これが結局不況期を乗り切れないで数年前についに穀物部門の輸送施設一切合切をカーギルに身売りをするということになります。多角化ということが一つであります。それからその多角化を国境の中だけでなくて国境を越えて国際的に展開してきた。それで私は多国籍アグリビジネスと言うんです。それの例として、ちょっとデーターは古いですけれども表の8を示します。これはカーギル社が世界の49箇所に841の工場を持っているということを示しているわけであります。多国籍アグリビジネスというのはいわば世界中で利潤が極大化したらいいという考え方であります。ですから私はちょうど1985年から86年にかけてアメリカに留学をしたんですが、びっくりするような事件が起きました。それはどういうことかというと、カーギル社がアルゼンチンの小麦をアメリカに輸入するというんです。それはもちろんアメリカの小麦生産者が大反対するわけですね。だけどカーギル社からすれば、ちょうどあの時の通貨の単位忘れましたが、ドル高アルゼンチン通貨安の関係にありますから、アルゼンチンからアメリカまでの船賃だとか関税だとか、そういうものを加算してもアメリカ産の小麦を買うよりも儲けが大きい。そのためにアルゼンチンの小麦をアメリカが輸入すると。多国籍企業というのは農業関係に限らずそういうことは平気でやるわけですね。ドル高になれば海外に生産拠点を移してそこで物を作ってアメリカ本国へ逆輸入したり、第三国に売る。そのかわりアメリカでの儲けは減るわけです。だけども世界中でトータルで利潤が極大になればいいというのが多国籍企業の考え方なんですよね。ですから為替レートの問題だとか市場との距離の問題だとか原料の関係だとか、もちろん労賃の関係だとかこういうことで多国籍企業の世界市場戦略というものが決まってくるわけです。ですからナショナルインタレスト、国益ということで考えれば多国籍企業が海外に出るということは国内の企業がそれだけ陥没するわけです。例えば法人税収入というのは減る。例えば自動車でいえば日本でだってトヨタが国内の自動車生産台数を抑えてヨーロッパやアメリカや東南アジアで自動車工場を作って生産すれば、法人税収入減りますよね。それから労働者の働く場も減りますから所得税も減るし、労働者の収入が減るわけですから購買力も落ちるということに当然なりますよね。ですからナショナルインタレスト、国全体の利益ということで考えれば企業が海外で展開をするということは国家の収益が縮小していく、全体としてのですよ、収益が縮小してくるということにつながっていくわけです。そういう方向にいわば世界の先進国の経済はどんどん進んで行ってるのが現実です。農業も又そういうことになってきているということであります。ここのところが今日の経済の一つの重要なポイントだろうと思っております。次に少し話を急いで申し訳ございませんが、レジメの2のところに入っていきたいと思います。昨年の12月に遂に中国がWTOに加盟いたしました。これはこれからの世界の経済、日本の経済の趨勢を考えると決定的に重要な問題だろうと思います。アメリカ系の資本もヨーロッパ系の資本も12億の民がいる中国の大市場というものを如何にして制覇するかということで、いろんな戦略戦術をとってきております。これは食糧部門についてでもそのとおりであります。2年程前にカーギル社のカーギルジャパンという日本支社ですが、ここの社長さんのインタビュー記事を見ました。カーギルジャパンの最大の役割は何かと言ったら中国を中心にしたアジアの情報を集めてミネソタにあるカーギル本社に情報を送ることだと。もう日本市場は制覇いたしました、ほとんど。ということを言われておるんですね。それほどまで中国市場ということが大きな目標になってます。ただ中国市場を現実に考える時にはどういうことかというと、北と南の微妙な関係があるわけです。大きく言いますと中国の北部は日本が戦前に技術を入れて成功した黒龍江省何かの例の孤児の問題が発生する方から大量に日本の中国産米が入りだしたでしょう。あれに象徴されますように北は輸出なんです。南は輸入なんです。今、食糧の問題で言えば北は輸出、南は輸入。日本で考えれば、それだったら北の物を南に持っていけばいいんじゃないかと思いがちですが、まだそういう輸送手段が充分発達していないために、北の物を南にもってくるよりはアメリカだとかオーストラリアだとかタイだとかの農産物、とりわけ餌、こういうものを輸入した方が安上がりだということで、ですから南はどんどん一方で入っていく。もう一方で米のように出ていく。それのひとつの代表的なのが去年問題になりましたねぎと椎茸とい草、畳表のセーフガード問題ですね。正式にセーフガードをやろうとしたんですが、そうすると中国の方が脅したのは自動車の部品と携帯電話ですか、3つ位対抗措置をとるということで脅されて、結局経団連なんかの意向も反映して制式のセーフガードを発動するのを日本政府は去年の12月に最終的に取り止めるということに終わったんですが、ねぎだとか椎茸なんていうのはある意味ではものすごい小さな品目なんですね。もった大々的にいろんな物が中国から入ってきています。例えば京都なんかですといろんな漬物が有名ですけれども、そういう漬物の原料も相当数が中国との正に契約栽培なんです。契約栽培をして向こうで塩漬けにして1次加工をやって日本に持ってきて、そして京都に来てから塩抜きをして、もう1回漬けなおして京都の漬物ということですぐきだったりしば漬けだったりして売られていく。こういう構図になっている。しかもその水先案内人はほとんどが日本の商社なんです。だから中国がそんなの日本が文句言ってくるけれども、あんたんとこの商社がやっているやないかと。だからタキイ種苗だとかサカタの種だとか、ああいうところと商社が提携して日本人の味覚にあった種を持っていって中国で作らせて1次加工までやって持ってくる。こういう関係がいわばできているということですね。この事実を我々はどう受け止めるのかということです。それから今日はもう時間があまりありませんので話を省略いたしますが、1999年の暮れから今のガットのWTO農業交渉がスタートしました。あとで触れますように一時頓挫するんですが今年になって具体的交渉がいよいよレールにのるということになってきます。前回のウルグアイラウンド以上に厳しい交渉になることが必定ですが、知っておいていただきたいのはレジメに書きましたようにウルグアイラウンド農業交渉の時の農業部門の交渉、これは知的所有権だとか繊維の交渉とか部門毎の交渉で煮詰めていきます。農業部門の交渉の総責任者はアムスタッドっていう男です。アムスタッドっていう男はどういう人かというと、書いてますように元カーギルの副社長であります。つまり先程から言ってきた国際的展開をやって世界中で全体として利潤が極大化すればいいと思っている会社の副社長がアメリカの農業交渉のトップだということです。ここは非常に難しいものになりますよ。つまりそれはアメリカの農民にとっても大変なことなわけです。さっき言ったようにカーギルは必ずしもアメリカの小麦を売って儲けるんじゃないですからね。アルゼンチンの小麦を売って儲けたっていいわけです。ですからカーギルのような多国籍企業が世界中で自由に事業展開できるような方向に農産物貿易のルールを変えていこうと。通常農業自由化路線と言われますね。これがガットウルグアイラウンドでアメリカを中心としてケアンズグループと言われる農産物の輸出国、オーストラリアとかアルゼンチンとかカナダとかそういった国々が強く求めていること。ですから非常に難しいのはアメリカ自身にとってもナショナルインタレスト、国益が第一にならなくなってきているという関係なんです。冒頭で表の2で酪農がレディーベルトからサンベルトに移ったという話をしましたよね。家族経営の酪農経営から企業的な酪農経営に移ったということに。今度のウルグアイラウンドの農業交渉でアメリカはこれまで全部乳製品の輸入をシャットアウトしていたんですけれども、他の国に自由化を要求したからアメリカも自由化せよと当然こういうことになってきたわけです。その時に自由化に賛成したのはサンベルトの人たち。そしてかつての酪農の中心地帯だったレディーベルトの家族農業経営の人たちは、ここは協同組合が非常に強いこともあって一番強く反対した。つまりアメリカの酪農生産者の中でも牛乳の自由化を巡って大きく対立するわけです。それはどういうことかというとサンベルトのような企業的な養鶏、効率的な多頭飼育やっている養鶏農家は確かに海外から入ってくるのはマイナス要因だと。だけどそれによって競争相手のレディーベルトの農民たちがまいってしまえばその限りは国内で自分たちが羽伸ばして活躍できる。そういう思いが働くわけですね。そういう意向を政治家、日本でいえば農林族といってもいいですが、向こうはもっと品目別にプレッシャーグループがありますから、圧力団体に政治家に働きかけ、そして連邦政府の方向づけをさせていく。そういう関係に今なっているということでございます。もうひとつお話をしておきたいことがあります。それは先月アメリカの新しい農業法が制定されました。正式には2002年農業保護農村振興法という法律で、2002年度の、穀物年度は9月乃至10月ですから、そこから2007年度までの6年間の時限立法であります。細かなことは省略致しますが、これまでの旧法、96年からの旧法以上にアメリカの農業を手厚く保護する法律であります。この表の方の左下のまる10の資料を見ていただきたいと思います。これは2001年までの経緯ですが、アメリカの農業経営者のいわば所得関係がどうなっているかということであります。農産物の販売によって得られる所得が294億ドル。それに対して政府の様々な補助金によって得られる部分が220億ドル。如何に政府の補償金のウエートが高いかということかよくよくわかると思います。日本の状況では問題にならないんですね。しかもこれは全体であって、先程言いましたように食用穀物、餌用穀物、それから牛乳関係、それと煙草、米、そこに集中的に補助がされているわけですから、その部分の補助率というのはものすごく高いということであります。アメリカはよく政治価格で決められるともいわれるんですが、その典型が米と葉煙草、落花生、それから綿花。これが政治価格。一番政治家の動きで価格が、ちょうど生産者米価がかつて言われたような関係です。そういうもので決まるんだと。こういうふうに言われている部分です。米はテキサスあるいはカリフォルニア地区。かつてはレーガンがい、ブッシュの父親の方がいたところ。落花生はジョージアのカーター。ですから小麦だとかとうもろこしなんか以上に非常に価格しが手厚くされているのが米農民です。後でもう1回アメリカの米の事情について時間があればお話いたしますが、アメリカの米はタイ米、最近はベトナム米に完全に国際市場では負けているわけであります。それはこういう手厚い保護によってかろうじて生き延びている。こういう関係であります。しかもアメリカの農業法では5万ドル条項というのがあります。1農家の補助金が総額が5万ドル以上越えてはならんと。100円と考えたって500万円ですからすごいんですが、ところが農家はどうやっているかというと、それをクリアするために形式的に農場を分割して3つとか4つに別けて10万ドルとか20万ドルとかの補償金をもらう。アメリカというのはおもしろい国なんですが、不動産やがおって農地を売買する不動産屋が自分のところの農場はこういう5万ドル条項をクリアするノウハウを持っていると。だからうちに頼んでくれれば15万ドルなら15万ドルの収益を貰えるような書類を全部作って手配してやる。もちろんそれで手数料稼ぐわけですがね。そういうことをやってます。ですから87年の大統領の経済白書、正に正式な公式文書です。それには5万ドル条項に違反している農場が2万近くあったとかね。本当かどうかびっくりするんですが、アラブのある王国の王子はアメリカのあっちこっちに農場を買い占めて1億ドル以上の補助金をとっているということが経済白書に書かれておるんです。それ位にして農業補助を受けるわけですね。その結果が先程の表の10に示しているような事態。2002年の今年からの農業保護法は2000年までの農業法よりも更にもっと手厚く価格補助を支持する政策に変わってます。中身は省略いたします。ただ注意をしていただきたいのは農業保護ということと農民保護ということは違うということです。そこをよく飲み込んでほしいんです。それを示したひとつの例が11表です。これは先程の表の1で見た農産物の販売規模別でみると販売額が10万ドル以上の農場のところで農業補助金の価格支持の補償金の63%をとっている。さっきいいました販売額2万ドル未満の農場、アメリカの7割を占めている、そこのところは補助金が4.2と7.6合わせても11%強。ですからかつてはニューディールの農政以来アメリカでは農業補助というのは家族経営を保護するために農業補助をするんだということでずっと実施されてきたわけです。農民経営を保護するために農業保護をする。ですから上限も昔は1万ドルだとか2万ドル。それ以上いったらだめだと。それが今は5万ドル条項生まれて5万ドルまでいける。抜け穴もまだあると。ところ現実には先程言ったほんの一握りの上層のところに農業補助金の圧倒的な部分がいっちゃってると。数の上では多数を占める家族経営、そこのところにはほとんどいかない。そういう性格の補助金。これは日本とアメリカの決定的違いです。アメリカの場合は農業というのは輸出花形産業なわけですね。輸出花形産業を保護するのは当たり前のことなわけです。保護の仕方がいろいろあります。だけども効率的な大規模な経営のところにどんと集中するような形で保護する。そして国際競争力をつける。こういう戦術。更に今日は触れませんが、輸出補助金を大量に出しているわけです。これがEUとの輸出補助金戦争と言われています。その輸出補助金はカーギルだとかコナグラとか言った穀物商社にいくんですよ。農家にいくんじゃないです。つまり国内価格の方が国際価格より高いわけです、いろんな作物。この差額を国内価格より国際価格低いわけです。この差額を政府が輸出補助金という形で支払うわけです。言ったらダンピング輸出をいわば奨励しているわけです。それで世界中の穀物の輸出シェアを確保しようというやり方をとっているわけです。ですから皮肉な話ですが、例えば日本の三井物産だとか三菱商事とか丸紅とかね、ああいう商社がアメリカで穀物を買いつけて日本に輸入しますよね。そうするとそれはみんな三井物産だったら三井グレーン、丸紅も三菱商事も全部現地子会社を作っているわけです。現地子会社が買いつけて日本に輸出しているわけですね。そうすると現地子会社はアメリカの法人ですから、そこも輸出補助金貰っているわけです、大量に。伊藤忠も丸紅も三井物産も三菱商事もみんな穀物の輸出補助金を貰って日本に輸出をする。こういう構図になっているということです。そのことも知っておかなければならない大事なことです。言いたかったことはさっき言ったように非常に手厚い保護をやっているがそれが即農民保護ではない。そういう関係にあるということを知っておいていただきたいと思います。大分時間が迫ってきましたので、レジメの3の所から入っていきます。日本のことでありますが、ご存じのように1999年に食糧農業農村基本法というものが制定されました。これは1961年に制定された農業基本法に代わる新しい基本法という形で登場してきたものであります。この法律に基づいて翌年3月に食糧農業農村基本計画が策定され、それを更に具体化する形で今年の4月に食と農の再生プランというのが公表されます。それを更に具体化していったものが5月の30日、つい1週間前に総理大臣が長の経済諮問会議で農林大臣がそこに書いてあります食糧産業の構造改革について食と農の再生プランの推進というものを説明いたします。これがここにくる前々日に手に入ったものですから急遽レジメを書き換えたもので、ちょっと地元の事務局の方におかけすることになったんです。そこの中にある模式図がこの表の12であります。これの大まかな特徴を先ず言っておきます。食と農の再生プランのすぐ下のところに消費者に軸足を移した農林水産業を進めますと書いてありますね。もっと他のところでははっきり言っていて、生産者中心の行政から消費者を起点とした行政へ転換する。僕は不満なんです、これは。ちょうど例えば通産省は日本の商工業のための利益代表になって経済政策をどんどん打ち出していく。同じように農林水産省というのは第1次産業を育成するための政策の拠点なんです。それで当然じゃないの。もちろん農産物、商品を作っているんですから、消費者が歓迎するような安全で良質な食糧を生産しなければならないというのは当然のことであります。だけどそれは産業政策としての農業政策の中でそれを考えたらいいんであって、何か敢えて言えば生産者政策から消費者政策へ政策を移していくような感じが非常にしてならないんです。そのことをもっとはっきり言ってくるのが、農業政策から食糧産業政策へと。食糧産業政策って余り聞き慣れないんですが、これもこの文章の中で見ますと食糧産業というのは農業と食品産業と外食産業、この3つを合わせたのを食糧産業と。今や日本の消費者の食糧支出の28%が外食だっていうんですね。そこまで来ているということで、外食重視、それは分かるんですが、この3つの政策に転換する。そうすると鍵はすぐお分かりのように食品産業だとか外食産業の原料が国産なのか、それともそれの原料の国籍を問わなくていいのか、つまり輸入でもいいのか、そういう問題に突き当たりますよね。そこのところは非常にはっきりしない。そこが非常に心配。それからこういう風潮と並んでもう農林大臣も食糧庁の廃止は止むを得ないということを発言しだしてますよね。そうすると皆さんの帯広大変な打撃を受けるんですよ。昼間農家を見せていただいて、小麦農家を見ましたが、今の小麦の生産者麦価、外麦、内麦っていいますが、国内産の麦は内麦と言いますね、この内麦の価格って食糧法に基づいて決められているわけでしょ。米と麦が昔の食管法の対象品目、今の食糧法の対象品目。それで価格保証がされているわけです。これか仮に食糧庁が廃止されるということになれば、今の昭和17年から延々と続いてきた、米と並んで麦の価格保証政策というものが大きく後退するという恐れが非常に強い。米と並んで麦が大変なことになるということを私は心配しています。それから更に食糧庁をなくすだけでなくて今の農林水産省という名称も変えるという意見も非常に強くなってきています。何に変えるのかわえりませんが、おそらく変えると言えば例えば食糧産業省のような名称に変えていくということにもなりかねない。そこまで来ているということであります。それから次にこの食糧産業改革に向けた3つの基本戦略というのがレジメの12に書いてあります農業の構造改革を加速化するということです。食の安全と安心の確保。土地と農山漁村の共生、対流。これが3つの基本戦略です。今僕は左から順番に読んでいきましたが、この政策の位置づけとしては食の安全と安心の確保が第1の柱です。だから真ん中に書いてあるとこう読んだ方がいいわけです。それでその両側に2つがあるという位置づけですね。この1〜2年のO−157だとか今の狂牛病の問題だとか、口蹄疫の問題だとか、そういう問題が出てきて消費者サイドから食品の質の問題、安全性の問題、あるいは食糧の汚染の問題。これが問われてくる中で、消費者の不安に対して応えていくということがこれからの農政、あるいは食糧産業政策の一番の基本だという位置づけをしているということだろうと私は思います。ここから先はこのうちの農業構造改革の主な内容についてだけ今日はここでお話し致します。1つは農業経営の法人化、とりわけ株式会社化ということが非常に言われております。そしてそれは農業経営の効率化を推進するために、今までのような家族経営ではだめだと。それからもう1つは株式会社化することによって農家が株式会社化するというルートだけじゃなくて、先程言った商社だとかスーパーだとかが農業に投資をして企業的な経営をやっていくという方法を考える。そのためには農地法を見直さなければならない。こういう位置づけであります。それから2番目は農協改革で、これは農協の合併の問題が、今市町村合併の問題とセットになっておそらく十勝でも問題になっていると思います。今日はこれは省略いたします。それから次に米政策の大転換ということで水田農業の構造改革ということを言ってます。これは結局大規模な水田農業経営をやるために、例えば水田1枚でも2ヘクタール、3ヘクタールの水田をやろうと。補助を作ろうというわけです。大型の機械で。今までは中型の稲作機械だけだったけれど大型の機械体系を入れてやろうという考え方であります。ですが、これは先程省略したんですが、僕は無理な話だと思います。そんな甘くない。アメリカの稲作経営のことをちょっとだけお話いたします。先ず稲作の10アール当たりの投下労働時間、春先の田おこしから始まって収穫まで、これが3時間をアメリカは割ってます。日本は古い農業基本法ができた時は、1960年頃は大体150時間でした。それが今50時間を割りました。大規模な経営はもう20時間前後というところまで来ています。こんなに急速に労働生産性が上がったのは日本の歴史始まって以来の事件。1ゼネレーション30〜40年で150時間から3分の1以下になった。しかしそれでもアメリカの2時間に対して50時間なんです。この差はいかんとも埋めがたい。向こうの圃場の平均反別は大体100ヘクタールです。日本の平均反別は北海道を除くと0.8ヘクタール。北海道入れても1.14ヘクタール位ですね。田んぼ1枚の区画は向こうは大体10ヘクタール平均です。どういう農業をやっているかと言うと田をおこした後、畦は日本のように固定しているんじゃないわけですね、毎年作るわけです。ちょうど今の自動車の道案内するナビゲーターの原理です。人工衛星を使って畝立て機の位置を確定して等高線に沿って畦をつけていく。ですから全部蛇行しているんです。そしてそこに水を張る。もちろん飛行機で籾を蒔きます。籾を蒔くけどちゃんと畝ができるんですね。それは結局ぎざぎざに地ならししている。そして籾蒔くでしょ、水張るでしょ。すると深水だったら発芽率落ちますよね。高い所も発芽率落ちる。真ん中辺が発芽率高い。それで畝ができる。しかも種子にコーティングと言いますね、飲み薬の甘いの。あれと同じように芽が生えるまでの間の養分をコーティングして種に。そして蒔くわけです。大体反収が全米平均で8俵です。カリフォルニアですと9俵ですから日本とほぼ同じ。そういう農業をやっているんですね。それでも労賃の安いタイやベトナムの米にアメリカは勝てない。今米の国際価格と日本の国内価格というのは大体9倍から10倍。米の品種が違いますから簡単には言えませんが。これは埋められないです。米も含めて埋められるとしたら1番大きい問題は為替レートです。1971年まで1ドル360円でしたね。今ざっと120円。レートが120円から360円になったら、今の格差が9倍だとしたら3倍に縮まるわけです、それだけで。畜産農家の方が輸入餌のことを考えたらすぐわかります。ですから農業なんてのは国際金融政策みたいなものとは一番縁遠いところのようにかつては思われていた。ダイレクトに国際金融政策みたいなものが農業経営に跳ね返ってくる。そういう時代に今日なってきている。こういうことであります。今日農家の方がここにいらっしゃったら釈迦に説法で申し訳ございませんけれども、そういう時代になっている。非常な今の円高を正すことによってある程度は修正されていきますけれども、それでも今ある生産力の格差、自然的な条件の違いから出てくる差を埋め合わすということは僕は不可能なことだろうと考えているわけであります。それからあとはもう時間がないので飛ばしますが、農業補助金を今までのようなばらまきから企業的な農業経営へ重点的に配分する。このことが十勝の農業にプラスになるのかマイナスになるのかということを考えなければなりません。構造改革特区の活用、これはどういうことかというとそこにちょっと書いてますように、市町村が土地条例を作れば、その土地条例は農地法制を優先する。つまり先程農地法を見直すと言ってましたね。だけど国会で法律が見直されるのを待たれない。だから先ず条例作ってやればそれでいくと。ある種の超法規的な措置まで考えているということです。特区というのは皆さん気がつかれるかもしれませんが、中国がよくやる手ですね。中国の海岸線で深せんだとか上海だとか大連だとかに特区を作って工業開発やっているでしょ。あれは正にそこの特区については中国の法律に反するようなことであっても特別の特区のルールを作ればそれでやってよろしい、そういうのが特区ですよね。おそらくその辺を見習って構造改善特区というのを、これは今度のひとつの目玉に政策としてはなっている。最後の結びのところにいきますが、それではどうしていくかということですが、世界的に新しい動きが20世紀の末からどんどん起き出しました。その口火を切ったのは99年からWTOの農業交渉がスタートするんですが、アメリカのシアトルであるわけですね。その時にアメリカはもちろん世界中の農業団体の代表、日本の農協なんかからも行かれます。それから環境保護団体のような団体がみんな集まって、いわばWTOの農業の自由化路線は困るということで反対運動を展開するわけですね、現地で。結局有名な写真が閣僚会議の議長だったアメリカの代表がクローズしている写真がばっと出ましたけれども、つまり何も決まらないで閉会だというんでクローズなったわけですがね。それが一つの口火になってきます。それからもう一つはイギリスでは今の狂牛病問題が1986年から始まる。それが90年代の初めにヨーロッパ一円に広がっていくわけですが、その中で消費者の食糧汚染に対する反対運動が非常に強まっていく。それからそれに伴ってヨーロッパの大手のスーパー資本だとかそういうところが次々と狂牛病の恐れがある肉は扱わない、遺伝子組み換えの食糧は扱わないということを大手のスーパー資本まで含めて動きだしたということがあります。そういう動きが非常に乏しいアメリカとEUとの温度差が非常に大きいというふうに思います。日本はEUに比べると遅れています。アメリカよりは進んでいます。そういうポジションにあるかと思います。それからもう一つは有機農業ということについての考え方の問題。例えばこの頃は、僕のところなんか泉屋が近くにありますが、泉屋が良く目玉商品で国際産直ということでアラスカのサーモンを持ってきたり、カリフォルニアのアスパラだとかサクランボだとかを入れてくる。産直というのは何も消費者団体だとかそういうことだけでなくて、ビジネスチャンスとして企業サイドもそれを言うようになった。そういう段階で本当の産直というのは何なのかということをもう1回見直さなければならないというふうに思うわけであります。去年の9月3週間程フランスの農業を見てきて非常に教えられたんです。あそこの考え方、とりわけオーベルニュという農山村の地域、酪農の地帯を見てきました。酪農やってバター、チーズその他乳製品を売っているところですが、どう説明したらいいのかな、ヨーロッパに大体500種類のチーズがあるんです。そのうち400種類をフランスで作っているんですね。村ごとに違うというんですね、チーズが。もちろん羊の乳、山羊の乳、牛の乳という乳の種類が違うということもありますが、同じ牛の乳て作るチーズでも違う。その1番の違いは何かと言ったら草で違うって言うんですね。もちろん放牧なんです。共有地で春から秋まで放牧をしていくわけですが、全部草はコンパイです。コンパイというのはいろんな種子の種を混ぜて播くわけです。それがそれぞれの村で秘密なんですね。ノウハウなんです。うちの草を食わせたらこういう美味しいチーズができると。でも加工は全部農家の主婦がやるわけです。だから有機農業と彼等が言っていた有機農業もどきとは違うんだと。それから補助金が有機農業ならもらえるからといってにわか有機になったってだめであると。やまぱり歴史的に地域に根ざした伝統的な技術と新しい技術をどうやってセットにして商品化をしていくか、そこをやっぱり徹底的に考えなければならない。そこを徹底的に考えているところに非常に手厚く補助金出しているのがフランス農政ですね。そこは非常に教えられました。最後にあと数分だけ21世紀のうんぬんという宿題の答えなんですが、もちろん答になりませんが、考えてなければならないのは今度の再生プランでも言ってますが、食糧産業全体の従事者1130万、2割弱だというんですね、日本の総就業者の。そこで得られる生産額というのは日本の国内生産額全体の1割強だと。この部分をどうやってできるだけ国内産の原料で食品の加工をし、あるいは外食産業をこれから普及していかなければならない。そういう産業として育てていくかという課題なんです。その時にこれまでの農政もそうだし今度の再生プランでもそうなんですが、一番はっきりさせなければならないことをはっきりさせていないというのが僕の意見です。それは大きくは水田農業地帯の政策と十勝のような畑作農業地帯の政策をそれぞれどう考えていくかということ。先ず水田農業地帯について言うなら、これだけ米の食糧消費量が減ってきた時にどんどん米を減らしていくと。そして畑畑物に転作してくという方向でいいのかどうかということ、ここのところが全然はっきりしていない。私の意見は結論から言いますと、ここにも書いてますように、日本を含めたアジアモンスーン地帯の水田農業の技術というのは世界最高の水準の技術なわけです。何故かというと畑作地帯は必ず連作障害があるから数年に一度は休耕したりいろいろな手当てをしていかなければいけない。ところが水田農業というのは水と一緒にそういう連作障害を起こすバクテリアを流すわけです。もう僕のいる京都とか大和盆地だとかそんなところは弥生時代から2000年続けてやっていても、米を作っていても障害は出ないわけですね。この優れた技術は僕は残すべき。だから転作ではなくて水田農業でいく。但し食用米は減っているんだから餌米と食用米と両方でいく。食用米が増えれば餌米は作付けを増やす。食用米が減ってきた時は餌米の作付けを抑えるという形でバッファ機能、調整機能を持たせる。こういう方向を本格的に追求していく。敢えて21世紀の農業というふうに言われたので、10年かかるか20年かかるかわからないけれども、そこの方向を徹底的に追求していくということが大事だと思います。その根拠は1つは世界中の米の生産量は5億トンです。しかしそのうち国境を越えて貿易される量は1500万トンから2000万トンです。3%から4%です。日本の米の年間の消費量が1000万トン弱です。1.5倍、世界中で。ほとんどは米という商品は国内で生産されて国内で消費されるという商品なんです。小麦のように20%、30%が国境を越えて取引されるという商品ではないということです。そこを考えて日本の国民食糧をどうするかと、この点が1つ考えるべきだと。そうすると問題は餌米にするというけれども価格の問題ですよね。今大体食用米は500キロ強とれています、10アール当たり。もっと分かりやすくいうと8.5俵位。餌米の試験場の研究では850キロ位までです。これが2000キロになれば輸入餌と競争できる。転作奨励金を加算して考えれば1500キロとれればほぼ転作奨励金とで輸入餌と競争できるという関係にあるんですね。この850キロと1500キロとの差ですよね。これをどう埋めていくか。しかもそれは先程言いました為替レートが1ドル120円で計算しての話で、余りに円高過ぎます。これを例えば200円になればこの差はぐっと縮まってくるわけですね。そこの問題を、これはもう農業の政策だけでは考えられない。国の経済政策全体の中でどう考えるかということか1つのポイントですが、僕は100%正しいとも何とも思いませんが、その問題をどうするかということをはっきりさせないと規模を大きくしてアメリカのような経営規模に近づけるとか何とか言ったって、そんなところでは解決しない問題だっていうことをはっきりさせる。それからもう一つの畑作農業地帯。ここは正直言って、近畿にはほとんどこういうところがありませんので、唯一和歌山県の果樹地帯があるだけで、わからないんですが、欧米の動きを見ていると有畜複合経営の見直しということが非常に言われています。冒頭に言った農業の工業化による食品汚染を含めた歪みの問題ですね。これをどううして乗り越えていくかということがどうしてもこれから考えなければならない。確かに地球の人工が2030年に85億、2050年に93億といった時に農業の工業化によって生産力をアップしないと追いつかないという側面があることは十分わかっている。十分わかっているけれども現代的な有畜複合経営の方向をどうしていくか。それからおそらくフランスでもいくつか見ましたが、個別の農家で畑作と畜産と両方やるというのは非常に難しいですね。雇用労働でも使って、それこそ株式会社でないとできない。そうするとやっぱり地域複合という、フランスなんかでも幾つか見学しましたが、2〜3戸の農家が畜産やる、大体500頭とか800頭の牛だとか豚、そして畑作が70ヘクタール位の農家が8戸とか9戸とか餌を作る。そして地場の餌で牛なり豚を飼って、もちろん畜産の糞尿は畑作農家に還元していく。しかもそこは知恵だなと思ったんですが、畑作農家の利益と畜産農家の利益とプール制とはいかないまでも、調整しているんですね。これはアメリカの伝統的な中西部の考え方で、有畜複合経営っていうのは何かといったら餌と肉作るわけですから市場の状況を見て肉が良さそうだということになれば餌で販売する量を減らして自分の家畜の飼養頭数を増やすわけです。どうも肉が値崩れ起こしそうだということになったら家畜の飼養頭数を減らし、餌のままで売る量を増やす。そういう形で個々の農家が調整していくわけですね、経営を。自分の家は家畜飼うのが得意だから、穀物作る方が得意だという得手不得手もあります。そういうそれぞれの農家、それぞれの地域の特性を生かして自由な最良ができるだけできるような形でやってきているわけです。それを穀物なら穀物、餌なら餌に特化してしまうということはそういう自由裁量の部分が縮小されていくわけですね。これを何とか地域のレベルで復元できるような絵というか構想ができていかないのか。これは私自身にとっても宿題なんですが、考えなければならない1つの重要なポイントでないかと思います。時間が大分超過しましたけれどもこれで終わらせていただきます。ありがとうございます。


中野先生ありがとうございました。それではお時間の関係上、質疑を次のディスカッサントのお話が終わってからまとめて先生にご質疑ある方はしていただきたいと思います。それでは十勝の現状をという形で今先生からマクロ的な視野から農業についてのお話がございましたが、十勝の現状というミクロ的な部分から迫って今回お話を15分程していただきたいと思いますので、有限会社夢がいっぱい牧場代表取締役の片岡文洋様からお話をいただきたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
 
− 片岡 ディスカサント 

 ご紹介いただきました片岡でございます。大変由緒ある十勝創生塾で私めごときがお話させていただくのこと大変恐縮しております。光栄に思うと共にありがたく感謝御礼申し上げたいと思います。又、先程冒頭進藤先生がおっしゃいましたようにきしくも同じ同窓ということで大先輩の先生方とご一緒にこういう形で同席させていただいて話を報告事項的なことになるかもしれませんが、こういう場を与えていただいたことを大変有り難く厚く御礼申し上げたいと思います。先程司会の方からもおっしゃいましたように、中野先生が今大変国際的な立場からと、それから又非常に日本の実際の現場サイドからの見方ということで農業の問題点を本当にわかりやすくお話していただきました。私も後段につきましては大変びっくりするやら、まだ頭の中の整理ができない状況でございます。どこまで私の話が皆さんに十分理解していただくか大変心配ですが一つよろしくお願いしたいと思います。私は十勝大樹町の方で先程司会の方が言われましたように新規就農ということで約30年間肉牛の専業経営という形で農業経営をやっております。いろいろ紆余曲折がございましたが、大変肉牛という資金ボリュームがかかり、又リスクが非常に高い農業部門をとったということは私の17才の高校2年生の時に、私の進路をどうするかという時にふと悩んだ時に私の目の前にあったのが函館にあります曽田げんようさんという、ご記憶の方おられるかもしれませんが、テレビで太陽野郎という夏木陽介という男優が主演をしましたそのモデルになった方でございます。フランスに渡られまして画家の修行をされたという方ですが、その方が牧場をシャロレーというフランス産の肉牛をお飼いになってそれで又フランスの方に輸出もされるという牧場を経営されておりました記事を私が手にしたのがきっかけでございました。それから今まで56になるまで肉牛オンリーで来たと。私も大変ありがたく感謝しております。先程申しあげましたように、肉は大変、肉畜は大変厳しくて今回もご存じのようにBSE問題で大変な事態になっております。やっと相場が7割弱、和牛につきまして、黒毛和牛では7割弱まで値段が回復したかなという状況です。まだ余談は許しません。先月は非常にいい価格で推移しておりましたが今月に入りましてまたダウンいたしました。まだ先も見えておりません。国の方ではBSE対策ということで原因究明にいろいろとエネルギーを費やされているようですけれども、今だ4頭目が出た段階で具体的な因果関係がまだ解明されていないということで、消費者の皆さんも我々も非常に不安であり気にかかっているところであります。しかし、このBSE問題は我々に大きな、生産者にも刺激を与えてくれました。先程中野先生もおっしゃっておりましたが、やはり農業というものは食糧生産、もっと言うならば生命産業とも言えるべき分野かと思います。そういった中で一番ポイントは安全な食べ物を作ると。農業生産をするということに尽きるかと思います。この安全ということが極めて今までないがしろと言いますか、安易に考えられ、又そういうことが一般的にしてたんでないかなと思っておりますが、今回のBSE騒動でこの安全性ということが本当に大きくクローズアップされるようになりました。現状では日本は世界にトップを行く、いわゆるBSE対策の安全チェックをしております。30か月齢以上の牛に発病すると言われております異常プリオンによにくBSEが日本ではもう全出荷、屠畜される牛については検査をすると。20か月齢であり、15か月齢であり、全頭検査をするという安全性を非常に重視した検査体制をとっております。それから過日から国の指導で全頭、飼養頭数の全頭の牛について個体チェックをするという、いうならば牛の全頭の戸籍ができあがったということでございます。ですからこれから先は、話が前後しますが、私は自分で肉も一部販売しておりますが、この牛肉は、あるいはこの肉で作ったハンバーグはいつ生まれのこういう牛で加工しました、こういう肉でございますということをちゃんと明示できるようなシステム、形になってきております。大変BSE問題が今回大きく取り上げられまして、4頭目出た時はそれほどでもなかったんですけれども、そういったことで私どもの経営にも大変大きな影響、穴もあきましたし、大きな影響を与えました。しかしそういったことで安全ということが大変大きく我々に再認識をさせてくれたということで、これを又逆手にとるといったら非常におこがましいですけれども、一つの大きな教訓として安全で美味しい、安価とは申しませんけれども、安全で美味しい食糧生産というものをこれからやっていかなければならないなと思っております。ちょっと話が前後しますけれども、狂牛病というネーミングは非常に私も不本意でございます。これは大変に英国で発症した時にたまたまバッドカウリゼイデズ、いわゆる狂ったカウですから搾乳牛のことですね。肉牛のことは例えばステアだとか雄であればブルだとかオックスだとかビーフキャトルだとか言いますけれども、カウですから搾乳牛のことなんです。それを日本で直訳しまして狂った牛の病気と、狂牛病と、単純にこういう形になりましておどろおどろしい名前になったということで大変私も不本意に思っております。これは最近使わないということで、マスコミ等はBSEと言っておりますけれども、そういったことで意外にBSE問題についても一般的に分かっている方が少ないんではないかと。イギリスでも肉の専用種といわれますアンガスだとかヘレフォード、こういったものについてはほとんど出てない、皆無状態だといわれております。ほとんどが搾乳牛から出ているということで、そういった点からでも原因究明解明が大いに急がれて又早急にやっていただきたいというのが我々偽らざる気持ちでございます。そういったことで私の経営は実は肉牛経営でございまして、大樹町でやっておりますけれど、先程先生のお話にもありましたように牛肉の自由化ということをきっかけにこれまでのいわゆる生産オンリーの肉牛生産から、やはり付加価値を付けた加工、あるいは飲食まで、ある程度利益を付ける形の販売戦略をとらなければだめでないかということで、私の場合は平成元年から委託販売でハンバーグを作りまして、自分の牛肉でハンバーグを作っていただきまして販売をするという形をとってまいりました。それがある程度面白い、行けるという状況になりましたので、私の場合は平成4年に委託製造販売をやめまして、自分の加工場を作りまして、そこでハンバーグ、コロッケ、あるいは精肉等を丸々自分の牛一頭を加工し販売するという体制を作ってまいりました。平成7年には今の名前として私も恥ずかしいという感じもするんですが、会社名夢がいっぱい牧場という形に変えまして現在に至っております。そういった中で私ども大樹町では先程紹介もしていただきましたが産業クラスター研究会というのを作っておりまして、主に大樹のいわゆる地場産業的な、地場産業というのは農業、漁業がありますけれども、そういうものを中心にいわゆるローテクノロジー的でもいいから何かやろうじゃないかということで従来活動しておりましたファームステイ研究会、それから産業廃棄物研究会、それから白樺樹液研究会、3つの研究会を総合しまして大樹町産業クラスター研究会という形にしまして現在活動しております。それぞれの分野では白樺樹液につきましては、ご存じの方が多分たくさんおられると思いますが、単なる樹液から輸入漆の原料を溶かすいわゆる材料としての水が非常に樹液が適しているといったことから、あるいは転写液に使う。あるいは今では大学に委託しまして医薬品の開発部門にも取り組んでいるというところでございます。それから卑近な例でございますが、私のところでは産業廃棄物研究会ということで牛糞に大樹の海から、浜からとれますギャングと言われておりますヒトデを堆肥に混ぜることによりましてヒトデの有毒な成分が除去されまして非常に発芽、あるいは植物の発育、成長がいいというデータが出つつあります。そういった中で大樹漁協が頭を抱えておった約年間350トンのヒトデが出るわけですけれども、それがお金をかけなくて、廃棄物処理をしなくて、又新たな資源として、肥料として再生できるといったことで産業廃棄物研究会はやっております。それからファームステイ研究会につきましては、これが更に大きくなりまして大樹町グリーンツーリズム研究会と、又外部から大樹町へ観光客なり滞在型の目的の方をどんどん呼び込もうじゃないかといったことで今活動をしております。我々農家仲間はそれぞれ、私は先程申し上げましたように肉牛なものですから牛の1頭からいろんな加工品を作り、あるいは精肉、あるいは飲食ということまでやっておりますが、酪農家のメンバーの一人はチーズを作りまして、又そのチーズが非常に優秀な美味なチーズであると。この北海道ホテルさんでも先程見させていただきましたけれども、販売コーナーに並んでおりました。半田さんのチーズでございます。そういったチーズを作って付加価値を付ける。そしてそれが又彼のレストランで販売、飲食もされておるといったことですね。それから唯一の大樹町養豚家の方はハム、ソーセージの工房を作られまして、ハム、ソーセージの製造、販売。もちろんレストランも併設されて、そこで飲食もされているといったことですね。そういった仲間がいわゆる食のクラスターといいましょうか、そういったことで活動をしております。その根底にあるのは我々農業者仲間の根底にあるのは、やはり先程先生がおっしゃいましたように小麦がそれこそこれから価格保証、いわゆる政府管掌作物というところから外されるんでないか。十勝ではビート、甜菜糖ですが、それから馬鈴しょ澱粉の澱源といておりますが、こういった政府管掌作物の価格保証というのが本当に続くんだろうかという漠たる不安、心配を皆さんお持ちになっております。先程お話ありましたWTO絡みの中で非常な不安を皆さんお持ちです。そういった中で何とか自分たちで新たな加工をしながらそれを乗り切っていこうじゃないかという芽がどんどんと出ております。十勝に限らず全北海道と言ってもいいかと思います。先程申しあげましたように、養豚家の方がそういったハム、ソーセージを作る。あるい畑作の方がそば粉を作られて、自ら蕎麦を蒔いてその蕎麦からいわゆる蕎麦屋さんを開店営業するといったこと。あるいは酪農家の皆さんがそれぞれアイスクリームだとかソフトクリームあるいはヨーグルト等を生産加工されるといったことをどんどん動きが広がってきつつあります。これは今までの農業生産システムというものをもう一度考え直そうという機運が起こった所以にこういうことが現実として色々と活動を展開されていると思っております。いうならば今までの生産体系というのは農業は作ればいいと、ただ大量に作ればいい。いわゆる生産量が上がれば収益も上がるという極めて単純発想といいましょうか、そういう考えが主流を成しておりました。例えば北海道十勝の基幹作目でありますビートにつきましては畑の淵にスローガンとして看板が立っておりました。ビートの増収は1に防除、2に防除、3に防除で、さあ増収というのですね。結局農薬付けの作物を作って収量を上げればいいんだという認識が非常に根強かったと思います。そういったことが段々と様変わりしてまいりまして、今申し上げましたようなそれぞれの付加価値を付けていく。そして直接顔の見える販売をしていこうと。その根底には先程申しましたように安全ということを先ず第一に、そして美味であるということ、それからお互いの信頼関係から消費者の方と生産者の農家の交流が生まれ、又それが新たな展開の切っ掛けになればという積極的な考えのもとに、今自ら生産したものを加工あるいは販売、飲食に提供するといった方の動きに繋がっていっていると私は思っております。それを称しましてアグリビジネスと言っていいかと思いますが、このアグリビジネスにつきましてはやはり大きな信頼関係を培うために、先程申しました安全ということを第一に取り上げていかなければいけないと。ところが残念なことに、名前をあげて恐縮ですが、雪印乳業による食中毒問題、あるいはその以前の口蹄疫問題、それからBSE問題、それから牛肉のあるいは鶏肉の偽装事件といった、散々な目に現実にはただされております。そういったことから、とにかく難局を乗り切るためには国としても国の威信をかけてこの解決に向かっていただきたいし、又生産する立場の者も本当の原点に帰って安全な物を作るという1点にエネルギーを費やさなければいけないんじゃなかろうかなと。国策と自己対策というものがこれから大いに要求されるだろうと思っております。先程先生の方からお話ありましたWTOという非常に国際的なグローバルな大きな問題が今迫ってきております。私は現実にどう対応対処するかということについての知恵なり発言なりのものはもっておりませんけれども、私は少なくとも農業というのは食糧生産である、生命産業であるということの認識を踏まえ、単純に環境保全型の農業だというふうな消極的な政策、考えではだめでないかなと思っております。先ず農業生産そのものが、農業基盤そのものが磐石の構えで、しかも国も強力なバックアップをすると。これは何も先生がおっしゃったように何も保護政策だけでなく、理解のもとに具体的な政策を取り上げてそれを実践していくという大きな農業政策を前面に掲げ、その結果において農業が元気であれは環境保全型に当然なっていくというふうに考えております。環境保全型だから農業を守らなければならないといった消極的な考えはまずいと思って常々おります。これからは農業という産業分野を国策としてしっかりと国の方でやっていただきたい。その中で、先程最後の方で先生がおっしゃいましたように、今度新しい農業政策というものが出るということで、私も実はまだその整理がつかない状況でございます。もしそういうことになって、本当に消費者だけを向いていいのかと。そういうふうなことは先程から私申し上げておりますように生産する者自らがそういうことを考えた、消費者の皆さんを考えた生産をしなければならない、あるいは販売をしなければならない時に国がそういう国策としてもってくることはいかがなものかと私は思っております。従って十勝の年間約2300億といわれる農業粗生産額、これに関連する企業、収益というのがこの前十勝の段階でどうであろうかということで発表された。不確かで恐縮ですが1兆何千億かという、7千億だったでしょうか、研究機関の方から発表されましたけれども、そういう十勝を支える農業というものが根底から崩れていくような感じもしないではありません。従って私はもう一度先生が話をされました内容につきまして十分にうちに帰りまして勉強し、又いろいろと考えてできるだけ具体的な行動に移していかなければならないかなと考えております。そういったことで十勝の農業においても厳しい状況がこれから予想されます。フランスの地域複合型農業といった先生のお話も大変興味深く伺いました。そういったお互いの知恵をだしていわゆるクラスターといった新たな動きがでておりますけれども、こういったことをもっともっと強く欲の連携をとりながらリンクしながら考えていかなければならないんじゃないかなと。これが話が飛躍しますけれども、市町村合併等の問題にも何らかの案を投げかけるんでなかろうかなと思っております。大変今難しい状況が待っておりまして、農協の改革に止まらず、農協の合併問題からあるいは組合員対策、あるいは市町村の合併問題と大変今地元大樹でもそういう問題が取り上げられております。そういった中でとにかく安全で美味しい食糧を供給をしていきたいと。そしてそういう仲間と連携していきながらいわゆる産業クラスターのような形がとれて、ファーストフードに負けないスローフードの(テープ終了)
十勝農業の大樹町の一部から報告といいましょうか、お話をさせていただきます。大変言葉足らずで恐縮ですが、そういったことでご容赦願いたいと思います。どうもありがとうございました。

− フロア交流 

 ありがとうございました。農業を中心とした産業クラスターに、今正にいろいろと取り組まれているということで、十勝もアグリカルチャーからアグリビジネスへ転換しつつあるというお話の内容でなかったかなというふうに感じまして、皆さんもいろいろとお感じになったと思いますので、ここで先程の中野先生のお話を含めましてご質問をいただきたいと思いますが、どなたかこれは聞きたいという方いらっしゃいましたら、どんなお話でも結構ですがご質問ございませんか。今日は農業関係ということでいろいろな部分で農業に従事されている方もしくは農業に関係する産業の方もいらっしゃると思いますが、そういった方でも国際状況と合わせてこういった質問をしてみたいという方いらっしゃいましたらどうぞお気軽にお聞き頂きたいと思います。はい、先生どうぞ。


私こちらで大学の教師をしておりますけれども、専門が違うかと思うんでお教えいただきたいんですが、先程食糧産業というものの経済的物差しの話をご紹介になりました。しかし食糧産業というものが産業という言葉がつくようになったいわれというのは、実を申しますと食品の価値から商品の価値へというように変化をしてそのことが評価をされたことが根底にあるかと思うんですね。その商品の価値ということになりますと専ら大衆が相手にするものが商品の価値を概ね占めるかと思うんです。そうなりますて、例えば日本が養ってきた旬の食糧であるとか食の文化というのは失われないのかという危惧がございます。それより何より、私先生のお考えを伺いたいと思うんですが、食糧産業即ち生産をしている産業を評価して貰えるならば、特に先生最後の方で言及されましたけれども水田の価値観というお話されました。水田というのは先生ご指摘のようにう、実は2000年の歴史を持って、あの水田が養われてきた背景には森と水田がクロストークをして初めて成り立ったという歴史的な事実がございます。その歴史から考えますと例えば日本国土の37万ヘクタールに対して8%から9%が水田であるというのは事実であります。この水田を養うためにはその6倍、48%から54%の森が必要であると。これも科学の教えてくれた事実であります。対するに日本の山林の面積というのは国土の67%しかございません。ところがそうであったときに1989年頃ですが、国土の19.6%を別の産業化のために使う。例えばゴルフ場であるとか、そういう開発に使おうという計画がございました。実際にそれを構想したのが日本の業者であります。しかし67%から19%引きますと、僅か48%しか残らないことになります。これは8%の水田があるものをぎりぎり養うのに相当するという森の面積と言わざるをえません。つまり食糧生産というものの経済的な物差しで計っていただけるのであれば、仮にもそういう農業、あるいは水田という生産基地を持つことが環境というよりももっと大きな森という、言ってみれば都会が洪水から守られるという効果。一節によりますと日本の森というのは年俸31兆円という評価もなされております。そういう価値観というのが果たしてこのアグリビジネス等という言葉の中には反映されているものと先生はお考えでしょうか。とういことか私の質問の主旨でございますが。


中野先生よろしいでしょうか。その場でどうぞ。


質問の主旨が十分理解しきれないんですが。


申し上げておりますのは、いわゆる食の産業、生産する産業というのは食料品を生産するという価値観だけではなくてそれに付随して自然を守る、あるいは都会を守る、例えば森を守るということは都会を守ること、洪水から守ることに相当します。よしんば都会というのが何を守ろうとしたかというと土地の権利を守ろうとしたわけです。土地の権利を守ろうとしたから洪水堤防をもって洪水から守ろうとしたという。本来は土地というのは森の利益で、河川が運んだ利益で作られたものじゃないんですかということですよ。つまりそういうことを含めるならば食糧産業というものは国土を守る、地球を守るという価値観があるんじゃないですかと。それは一体取引上の経済的なメリットあるいは評価という物差しからは計れないものじゃないんでしょうかということなんですが。


農業の多面的価値ということで、今おっしゃられた治水機能を始めとして自然環境の保全の価値ということが重要視されます。旧基本法に比べてそこに日本の農政が目を行ったことについは僕は評価をするんですが、ただ何故そこに行ったかというこれまでの経緯をみると、そこでしか主張ができない。先程片岡さんが言わば産業政策としての農業政策ということ第一に考えないといけないんだと、先程の片岡さんの言葉で言うと環境保全型の農業という消極的スタンスでだけ考えていってはだめなんだとということをおっしゃられました。私はそのことを100%同感です。産業政策としての農業をどうするのかと、農業は産業なんだと。産業としての農業を日本でもっと前進させていくんだというスタンスで進んでいくべきで、そこを強調することが今の局面の中で一番大事なんでないかと。そうでないと結局農業というのはちょうど昭和30年代の初めに石炭から石油にエネルギーが転換されたために産炭地経済が陥没しましたよね、夕張でも北九州でも。それと同じように、これは石炭と違って日本農業というのは日本列島全体にはるわけですから、農村地域全般の地域経済が陥没するような事態になるんではないかと思っているんです。ただ先生がおっしゃられましたようにそういう治水の効果、例えば仮に日本の水田が全部潰れてしまうということは治水対策のためには20幾つの大きなダムを作らないと維持できないんだと。だからダム的機能を農業の多面的機能の一つとして十分評価すればいけるんだと。だから仮に何百億のダムを作るといって年間何十億かずつ償還していく元利合計を考えれば、それはもう米の転作奨励金の金額よりはるかに大きくなるんだと。だから転作奨励金を払ってでも農業を守るというのは意味があるんだと。それは一つの農業が大切だということの説得の理由になることはわかりますけれども、今の局面で強調すべきことなのはそこなんだろうか。その点はぼくは片岡さんと全く同じ感想を持っているんですけれども。十分なお答えになったでしょうか。


1つだけ敢えて申し上げますけれども、作物というのを100%横取りする戦略といのがもし農業のあるべき姿だとするならば、私はアニミズム的な考えの方が優先するべきではないのかと。つまり人間だけが生きている世間ではなくて、人間も共存している、そういう発想もなされるならば単に経済的なお金の価値だけで物差しをはかると、豊かさであるとか心であるとか教育であるとか情操教育であるとか、何となく理屈をつけなくてもいいものが失われていく未来を想像して何となく暗くなるんですがね。私はやっぱり最澄、空海というのは偉かったと思いますね。あの時代に、7世紀や8世紀の時代に多神教の世界に没頭せられた。先生ご紹介になりましたアメリカさんだかと洋の東西、結構一神教的なところございますよね。アニミズム的、私は大変大切なことだとそういう考え方をもっておりますので失礼いたしました。


よろしいでしょうか。もう1点、お一人いらっしゃいました。はい、どうぞ。


中野先生にちょっと、中野先生のお考えをお聞きしたいといった方が正しいと思うんですが。私は十勝農協連で5年程前まで勤めておりまして、農産部門担当していたんですけれども、最近ちょっき機会がありまして歴史の方調べてみたんですけれども、結局先程の新しい農政のあり方、私ちょっとびっくりしたんですけれども、その中で農地法が改正されるかもしれないようなことだったんですが、地主制の復活ということに対して今までの農地法といのは極端に地主制の復活を嫌っていたような気がするんですよね。それで地主制き復活ということについて先生どういうふうにお考えしておられるか。


よろしいですか。現在の農地法の元になりますのは農地改革の直後の1952年に制定され、それから数度に渡って改正されてきたんですが、本来の農地法の精神というのは農地改革の成果を定着させるということが課題だったわけですね。従って地主制の復活にかかわるようなことについては厳しく規制するということに徹してきたわけであります。しかし現実と突き合わせて考えると農地改革の直後の段階においては主たる地主というのは農地改革の残存小作地ですから、戦前来の地主の方がそのまま残ったわけですね。その地主の方の権利をできるだけ抑制しようと。それから新しい地主の発生を防ごうとこうなってきたんですね。ところが高度経済成長以降あるいは今の低成長期になってもはっきりしてきたのは、今や土地の貸し手は兼業農家であったりあるいは高齢者農家であったりであって、かつてのようないわば地域の中のボス層というか支配層というか、上層の人ではなくて農業中心に頑張っている、戦前期ですよ、そういう上層の農家の人ではなくて、離農あるいは準離農に近いような人たちが貸し手になってきている。そういう意味では農地改革が制定された当時と借り手と貸し手の関係がすっかり変わっている。それからもう一つ1970年代から80年代にかけて、最初に西日本、80年代の後半からは東日本も含めて変わってきたのは、少し専門用語になりますけれども、それまでは農地を借りたいけれども貸し手がいないという構造だったんだけれども、今は貸し手はいるけれども借り手はいない。農業の将来展望も暗いということもあって、そこが最大の課題になってきている。ですから敢えて言えば貸し手、地主の性格が変わってきたんだと。それに合わせる形で農地法制というものも変えていかなければならないというふうに僕は思っています。ただもう一つ大きな矛盾があるのは相続との関連の問題です。ご存じのように相続は均分相続ですね。従って僕なんかもそうなんですが、家はりんご園だったわけですが、誰も跡を継がなかった、親父が死んだんで相続ということになったら僕は農家でないけれども農地の相続はできるわけであります。民法上は相続はできる。ところが農地法上は農家でない者は農地を取得できないという矛盾があるわけですね。ここの問題をどうクリアするかということをいよいよ本格的に考えていかないと今のように高齢者でとりわけ離農あるいは離村農家が増えてくる段階では土地問題を巡る混乱というものが非常にこれから10年20年のところで大きくなるんじゃないかと僕は考えております。違う見解もございます。


よろしいでしょうか。皆さんまだご質問ある方もいらっしゃると思うんですが、ちょっとお時間が20分程ずれておりまして、もし個別にご必要でしたら交流会の場でお話をお聞きいただければと思います。後段は皆さん楽しみにしてらっしゃいます進藤先生のお話もございますので、ここで5分間コーヒーブレイクということで休憩をとりたいと思います。先ず今回のゲスト講師中野先生と片岡先生に拍手をお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。


(以上)