カワイ情報誌あんさんぶる2008年11月

あんさんぶる リレーエッセイ vol.7 Over the Rainbow

努力

 まもなく一歳になる我が子を見ていると、日々成長していく様子がよくわかります。どんどん新しいことを覚え、出来るようになっていく。大人のすることをよく観察していて真似をしたり、同じことをしようとします。もう少しすると、どんどんいろんな言葉も覚えて日本語を喋れるようになるのでしょう。どの子も母国語を喋れるようになる。それは、両親が話している言葉を聞いて育つからだ、という考えから生まれたのがスズキメソードの教育法。つまり楽譜からではなく、レコードをよく聴かせてレコードと同じように演奏できるようにさせるのです。それは、ある意味とても素晴らしい教育法だと思います。ある段階で読み書きや文法(楽典)も覚えることを、忘れさえしなければ。

 ところで、赤ん坊はなぜハイハイが出来るようになるのでしょうか。周りでハイハイしている人がいるわけではないので、誰かの真似をしようとしているのではないですね。

 まだようやく寝返りが出来るようになった頃、ちょっと離れたところに何か面白そうなものを見つけ、一生懸命手を伸ばそうとするが届かない。手足をバタバタさせたりしているうちに、逆に後ろに下がってしまったりすると、嫌がって大声で泣きわめくのです。そして少しでも近づいたりすると、本当に嬉しそうな顔をしてその動作を繰り返そうとする。そうこうしているうちに、ハイハイが出来るようになるのではないか、と思います。

 日々の練習でも目標をしっかりと持って、自分の出している音、音楽が目標とどれだけ離れているかを客観的に聴き、少しでも近づくように努力して、もし音色や音程が悪かったり、音楽的表情に乏しかったりしたら心底嫌だと思い、ちょっとでも目標に近づいたらそれを嬉しく思うこと。どうしても目標に手を届かせたい、こういう音楽をしたい、と強く願うこと。そうすれば、大抵のことは出来るようになるのではないでしょうか。

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