音楽の友2003年4月号

●桐山建志vn&小倉貴久子p

 シューマンの「3つのロマンス」作品22、シューベルトの「ファンタジー・ハ長調」D.934、メンデルスゾーンのソナタ作品4、それにシューマンのソナタ第1番作品105が演奏された。バロック・ヴァイオリンおよびフォルテピアノの専門家である2人であるが、使用楽器の問題ではなく、この日の2人の演奏は新鮮。「クロイツェル・ソナタ」やパガニーニに刺激を受けて作曲されたとされているシューベルトの作品も、この2人の演奏では、まず音楽的な美しさが聴こえてくる。そしてその中で技巧は消化された状態で表われてくる。作品の形もよく奏出されていて、爽やかな聴き味をおぼえた。メンデルスゾーンも小倉の表現が立体的であり、しかも気品があり好感が持てた。最後のシューマンも2人の奏者ならではの表現で仕立てており昧わいがあった。(2月11日・東京文化会館〈小〉)

〈長谷川武久〉

戻る