音楽の友2011年12月号

●桐山建志vn&大塚直哉cemb.

 バロック・ヴァイオリンの桐山建志とチェンバロの大塚直哉のリサイタル。「音楽を学ぶ子供たちに思いを寄せて」と題して、ヘンデルやボンポルティらのソナタが演奏された。久しぶりに聴いた桐山は音色やアフェクト(情念)の表現がさらに深みを増し、1曲目のコレッリ「第1番」から即座に音楽に惹きこまれる。ガット弦の温かな音色とよく語るアーティキュレーション、即興的な装飾音がすばらしい。対位法的な箇所の精度の高い掛け合いは大塚との共演の歴史を物語る。前半ではヴェラチーニ「第11番」とコレッリ《ラ・フォリア》。前者の野趣に富んだ、あるいはエレガントな舞曲が楽しい。後者では豊かな音色と繊細に施されたヴィブラートや多彩な情念、思い切りの良い表現、巧みな劇的構成によってスケールの大きな音楽を実現。後半では特にヘンデルの「1番」と「4番」が心に残った。高度な技術と深みを湛えた音色と霊感に富んだ表現と共に学習用の編曲譜ではない、楽曲本来の魅力を存分に堪能した。(10月18日・東京オペラシティ近江楽堂)   

那須田務

戻る