音楽の友2012年11月号 ●桐山建志vn&大塚直哉cemb. 初期バロックからバッハと銘打ったオール・ソナタ・プログラム。まず、旋律を歌わせるタイプのフォンタナの6番と1610年作曲のこの曲種の嚆矢、チーマのソナタが奏された。当時からヴァイオリンが歌う楽器として愛好されたことを彷彿させる好演。次いで、重音効果を前面に出したシュメルツァーのソナ夕“CuCu”とビーバーの6番。ビーバーは途中E線が2度下げられるなど随所に創意のみえる佳品。続いてコレッリの4番。ここでは6つの楽章それぞれ精彩にとむ表情が描き出され、いかにこの作曲家が感情表現を重視していたかが伝わる。ことに寸分の狂いもない緻密なボウイングから生まれるアダージョの歌が心に染みた。後半はルクレールのホ短調ソナタと、J・S・バッハの「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番」。中間楽章のチェンバロ独奏は微妙なテンポの揺らしを伴う溌刺としたもの。桐山も大塚も表現希求に完全に適う技術と歌心をそなえた得難い名手。ため息が出た。(9月26日・近江楽堂) 〈萩谷由喜子〉 |