音楽の友2018年4月号

●エルデーディ弦楽四重奏団.

 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲はソナタ形式の飽くなき探求と共に作曲者のいわば内面世界を探る意味でも一筋縄ではいかぬ難しさがある。今回は「弦楽四重奏のみに託されたベートーヴェン最晩年の高貴なるメッセージ」というシリーズの最終回。「第16番」と共にハイドンとバルトークの最後の作品を組み合わせるという興味深いプログラム。最初のハイドンの「弦楽四重奏曲」ヘ長調《雲がゆくまで待とう》の鮮明なソノリティと自発性に富んだしかし隙の無いアンサンブルが素晴らしい。作品自体の完成度の高さがさらに際立つ演奏だ。続くバルトークの「弦楽四重奏曲第6番」ではメスト(悲しげに)のモットーで貫かれた文意や文脈を汲んだ演奏スタイルで様相を一変させる。それとは対照的に何か吹っ切れたとでもいうべき新境地を切り開くベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第16番」での表現の自在さには、スコアの深い読みと卓越した実践能力を実感。同団の揺るぎない演奏姿勢と吟味された解釈表現は今まさに円熟の境地にあると言っても過言でない。(2月18日・第一生命ホール)

〈齋藤弘美〉

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