●J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番
ニ短調 BWV1004

 最終楽章に巨大なシャコンヌを有するこの作品は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)の、否、西洋音楽史上の無伴奏ヴァイオリン作品の中で最も有名である。一つのヴァイオリンのみを使用する作品の例は、先述のビーバー、ヨハン・パウル・ヴェストホフ(1656〜1705)などの作品がバッハ以前にも存在した。だが、バッハの透徹したポリフォニー技法が、楽器の演奏技術の可能性を見極めたうえで妥協なく実現されていることには驚かざるを得ない。

 各三曲からなるソナタとパルティータは、「1720年」と表紙ページに記された自筆総譜で伝承されてきた(そこでは「6つの独奏曲Sei Solo」と書かれている)。ケーテン楽長時代に作成されたこの総譜は浄書であり、作品の成立自体は1720年以前にさかのぼると推測される。

 「独奏曲」の第4曲に相当するパルティータ第2番は、各楽章のタイトルがすべてイタリア語表記となっており、イタリア様式への意識を感じさせる。舞曲の配列はアレマンダ(仏語表記でアルマンド)、コレンテ(クーラント)、サラバンダ(サラバンド)、ジーガ(ジーグ)、チャッコーナ(シャコンヌ)であり、定型の配列の後、長大なチャッコーナを配するという構成になっている。また、各楽章冒頭の和声を同一のものにして全体の「有機的統一」を図っている点も、17世紀における多楽章作品の伝統の一つが示されていると言えよう。

 最後のチャッコーナは、アウフタクト(2拍目)から始まる8小節のバス定型を32回繰り返し、中間部的な役割を果たす平行長調の部分が置かれ、全体を三部構成のように感じさせる。最初に示される定型は、変奏が進むにつれて、バスの旋律、和声ともにこの上なく自由に変えられている。これは、ヴァイオリン一つという限られた編成ゆえというよりも、伝統や規範から逸脱することでそれらを豊かにしてみせるバッハらしい姿勢の現れであろう。

●Johann Sebastian Bach:
Partita fuer Violine
d-moll BWV1004

 

戻る, Zuruck, Return