推薦 桐山建志は東京芸大、フランクフト音楽大学で学び、これまでに第十二回古楽コンクール「山梨」第一位、第十回栃木「蔵の街」音楽祭賞、一九九九年ブルージュ国際古楽コンクール・ソロ部門第一位などの受賞歴を持つ。録音は2000年七月。四曲のうち伝ヴィターリの《シャコンヌ》とシュメルツァーは諸岡範澄のパロック・チェロ、大塚直哉のチェンバロとのトリオ、ヴァルターはチェロとのデュオ、そしてもちろんバッハはソロでの演奏。 〈武田〉 |
推薦 1999年ブルージュ国際古楽コンクール・ソロ部門で第一位を得、現在、日本・ヨーロッパにまたがっての活動をつづける桐山建志は、パロック・ヴァィオリンの若いスベシャリストである。このデビューCDに聴くところ、彼は技術、音楽的表現の両面にわたって十分高度に完成したものを身につけており、斯界にあらたなホープ登場という実感を与える。諸岡範澄(バロック・チェロ)、大塚直哉(チェンバロ)と組んでのトリオもよく息が合っており、近来とみにさかんな日本の古楽演奏界を、よく象徴するかのようなアルバムに仕上がっている。プログラムの組み立てがまた立派に筋を通しており、J・S・バッハの《無伴奏ヴアィオリン・パルティータ》第二番−もちろん桐山のソロ−を中心に、伝ヴィターリの《シャコンヌ》、J・J・ヴァルターの〈カプリッチョ〉ハ長調、J・H・シュメルツァーの《ソナタ》第四番ニ長調と、いずれもなんらかの形で“シャコンヌ”とかかわりのある楽曲により、有機的に統一している。バッハ、伝ヴィターリという周知の名曲に、“秘曲”の部類であるヴァルター、シュメルツァーを合わせているわけだが、これら二篇もすこぶる味のよい佳曲なので、よけい、聴き甲斐が高まろうというものだ。ともかく、桐山建志の演奏ぶりは中途半端に終わることなく、根底からパロックの演奏流儀を身につけ実践しているもので、それでありながら教条的な固苦しさが少しもない。きわめて質のよい情感を込めながら、楽曲を歌いかつ“語って”ゆく自発性を、ぜひ今後も大切にはぐくんでほしいと願われる。 〈漬田滋〉 |
[録音評] 2000年七月山梨県、牧丘町民文化ホールで録音。中央にほぼ適度な距離感をおいてパロック・ヴァィオリンが定位し、その音像の輪郭が明瞭。明るく、つやっぽく、ときには目も覚めるほど華麗な音色を鮮やかに収録。しかし、とくに《シャコンヌ》では、トゥイーターの質が劣るスピーカーの場合、おそらくその華やかな音色がやや硬めに聴こえることがあるだろう。 〈90〜93〉三井 |