伝 T.A.ヴィターリ:シャコンヌ ト短調

 トマーゾ・アントニオ・ヴィターリ(1663〜1745)は、父親のジョヴァンニ・バッティスタ(1632〜92)とともに、モデナのエステ家に音楽家として仕えたヴィターリ一族を代表する存在である。父親とともに、生地のボローニャを離れ、1675年よりエステ家宮廷の音楽家(後に楽師長)として生涯を送った。現存作品は、ヴァイオリンと通奏低音のためのソロ・ソナタ、トリオ・ソナタなどを中心とし、作風は一世代上のアルカンジェロ・コレッリなどにも通じる。

 《シャコンヌ ト短調》は、19世紀のヴァイオリン奏者フェルディナント・ダーヴィト(1810〜73)によってヴァイオリンとピアノのために編曲され、《ヴィターリのシャコンヌ》として親しまれてきたが、現在ではヴィターリの真作ではないと結論づけられている。本ディスクの演奏では、ダーヴィトも参照したドレスデンの国立図書館所蔵の筆写楽譜に基づいている。

 この作品は、シャコンヌと類似した(混同された)性格をもつパッサカーリアで好まれるとされていた短調で書かれている。バス定型(4小節)も、パッサカーリアでも使用例の多い主音から順次下行するテトラコルドである。この定型を背景としてヴァイオリンの技巧的なパッセージが披瀝されてゆき、その途中で幾たびか主調からの自由かつ大胆な転調も実施される。

attr. Tommaso Antonio Vitali:
Chaconne in g

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