●J.J.ヴァルター:カプリッチョ ハ長調

 ドレスデンのザクセン選帝侯の宮廷ヴァイオリン奏者を務めたヨハン・ヤーコプ・ヴァルター(ca.1650〜1717)は、同世代のハインリヒ・イグナーツ・フランツ・ビーバー(1644〜1704)とともに、17世紀後半のドイツ語圏を代表するヴァイオリン奏者であった。後世の歴史家から「17世紀のパガニーニ」と評されたヴァルターの作品は、ポリフォニックな発想をもつ重音奏法の使用、急速な移弦やポジション移動を必要とするパッセージの案出など、確かに17世紀後半のヴァイオリン演奏技術の最先端を行くものである。

 《カプリッチョ ハ長調》も、往時の技巧派ヴァイオリン奏者としてヴァルターの演奏ぶりを想像することができる。この作品は、28曲のヴァイオリンと通奏低音のための作品を集めた《ケリュスの園Hortulus chelicus》(マインツ、1688年、1694年、1708年出版)の第27曲である。この曲集は、初版タイトルページの但し書きからも窺えるように、重音奏法の可能性の追求を主眼としている。主音から音階固有音を順次下行するバス定型(2小節)を固持しつつ、先に触れたようネ演奏技術が満載されていくが、アダージョのカンタービレやジーグ風な部分など、全体はソナタのような幾つかの部分に分けることができる。

●Johann Jacob Walther:
Capricci
(HORTULUS CHELICUS)

戻る, Zuruck, Return