レコード芸術 2001年5月号 新譜月評

 モーツァルト、J・C・バッハ、カンナビヒのニ長調交響曲四曲を古楽器で演奏したCDだが、なんとも生命力あふれるフレッシュな表現の連続である。

 まずモーツァルトのK一三三。第一楽章はパンパンと弾けるように勢いよく始まる。ナチュラル・ホルンの強奏、激しいアタックなど生々しくも楽しく、アーノンクールとはまたちょっと違うが、モーツァルトの前衛性が強調される。ただ力奏に美感が追いつかぬ場面が出てくるのは致し方あるまい。メヌエットやフィナーレにも同じことが言えるだろう。第二楽葦などを耳にすると、これは客席で聴いたほうが楽しそうな気がする。

 同じモーツァルトの《パリ》も爆発するような快演である。K一三三もそうだが、アーノンクールのように急がず、ブリュッヘンに近いがもっと土くさく、もっと生だ。フィナーレなど、鳥カゴをひっくり返したように、いろいろな音がとび出してくる。斬新だが洗練された演奏ではない。

 J・C・バッハも音楽を博物館から現代の息吹きのなかに引っぱり出し、昔の夢から覚めさせたような表現だ。活気とメリハリがものすごく、積極的に攻め抜いている。

 カンナビヒは四曲中、最も魅力的だ。ここでは全員が民族楽器を使っているように聴こえ、とりわけ木管が美しさのかぎりである。オトケストラ・シンポシオン。注目すべき団体の登場と言えよう。

宇野

[録音評]

 表題も内容もユニークだが、第一曲冒頭から躍動感溢れるオーケストラ・サウンドが眼前いっぱいに展開し、思わず引き込まれる心地の録音。ピリオド楽器らしい表情を随所に聴かせながら、決して硬調さを感じさせない。音場の自然な展開とDレンジを存分に使いきった爽快感など、素敵な録音。二○○一年一月の府中の森芸術劇場でのプロデューサー、武久源造、エンジニア、小島幸雄の収録。

〈93-95〉神崎

戻る