ぶらあぼ2009年12月号 新譜ぴっくあっぷ

ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ全集/桐山建志

 桐山のバロックヴァイオリンの音色は、とにかく暖かい。数年前、台風一過の神戸で桐山・大塚コンビによるバッハを聴いたが、拍子抜けするほど少ない聴衆を前に、血が迸るような大熱演を聴かせていた。そんな2人による最新版は、ヘンデルのソナタ全集。ただでさえ優しい桐山の音色が、抑制し過ぎないヴィブラートでさらにまろやかな感触をまとい、これまた柔らかな大塚のチェンバロが寄り添う。例えば、弦をぎしぎし言わせ、厳しい表情で臨みがちなニ短調ソナタに対峙しても、2人はその優しい面持ちを崩さない。懐深いこのソナタの魅力を十二分に引き出す名盤だ。

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