公明新聞11月21日

こちらは没後250年のへンデル。同い年のバッハより地昧な彼としては今年こそ男を挙げねばならぬ、などといったら無礼千万。彼にはバッハにないオペラがあるし、12月に入れば『メサイア』の季節。もうひとつ、ヴァイオリン愛好家にとっては、あの「ヘンデルのソナタ」群の作曲家として身近な存在だ。だから、長年彼の名で親しまれてきた8曲を収録した『ヘンデル ヴァイオリン・ソナ夕全集』(ALMレコードALCD−1112 2940円)が名手ふたりによってリリースされたことはまことに朗報。だって、これほどゆたかな趣昧と知性を反映させた演奏で、この一連の楽曲群をまとめて聴けるのだから。バロック・ヴァイオリンの桐山建志とチェンバロの大塚直哉は芸大の先輩後輩。このジャンルの最強コンビだ。

(音楽ジャーナリスト・萩谷由喜子)

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