ぶらあぼ2010年3月号 新譜ぴっくあっぷ

若きメンデルスゾーン、ニ短調の魅力/桐山建志&小倉貴久子

 いち早く有名なホ短調協奏曲の初期稿による演奏を手掛け、世界初となるヴァイオリン・ソナタ全集譜を校訂するなど、メンデルスゾーンの作品に積極的に取り組んできた桐山が、気心の知れた仲間たちと創り上げた弦楽オーケストラを核とする作品集。天折の作曲者にあっても特に若い時期の作品が並ぶが、すべての楽曲に共通するニ短調の調性が、深い精神性をもたらす。使用楽譜の稿にもこだわりを見せる一方、ピアノの小倉をはじめ、すべてのメンバーがしなやかな音楽性を発露し、楽曲の隅々に気配りの行き届いた好演で、これらの作品の魅力を余すところなく汲み取ってゆく。 (寺西 肇)

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