朝日新聞3月11日夕刊

 今年はアルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713)の生誕360年および没後300年。名バイオリニストとして名をはせ、「弦の国イタリア」の基盤を作ったバロック期の音楽家だ。「クリスマス協奏曲」「ラ・フォリア」といった気品と情感あふれる作品は、いわば弦楽器の聖典。
 昨年からアンサンブル・アウロラの「トリオソナタ集作品4」(グロッサ)、エイヴィソン・アンサンブルの「合奏協奏曲集作品6」(リン)など注目の輸入盤が出ていたが、記念年の今年、名高い「バイオリンソナタ集作品5」の国内盤が2種登場した。古楽ユニット「大江戸バロック」による全曲盤(ALM)は正統派。緩徐楽章では洋式に則った装飾を旋律に施し、端正かつ堂々たる演奏に。一方、リコーダー編曲によるラウリンらの演奏(アルテ・デラルコ)は、奔放で大胆な即興的装飾の嵐。ファンタジーの飛翔がすばらしい。コレッリ音楽の豊かな可能性を実感させる2枚だが、前者ではバイオリンの桐山建志とチェンバロの大塚直哉、後者ではチェロの鈴木秀美と鍵盤楽器の上尾直毅と日本人演奏家が大活躍。しかも前者のバイオリンと後者のオルガンは、日本人制作者の手になる楽器という。300年後に自分の音楽が東洋人によってみごとに奏でられているとコレッリが知ったら、どんなに驚くだろう。

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