音楽現代 2017年7月号

注目 「クロイツェル」をピリオド楽器とモダン楽器の両方で演奏し、聴き比べようという企画である。桐山のようなピリオド/モダンの両楽器を自在に操れるヴァイオリニストならではの発想だ。もちろん伴奏もそれぞれピリオドとモダンの楽器を使用している。続けて聴いてみると、それぞれから受ける印象が想像以上に違うことに驚く。ピリオド楽器の演奏は、戸惑いを覚えるほど穏やかで可愛らしい。緩徐楽章のフォルテピアノの素朴な響きからは、何ともいえない雅趣が漂う。モダン楽器では表現の巾が大きく広がり、それに伴い曲想も複雑さを増し、重々しい緊張感が聴き手に迫ってくる。楽器の制約による表現の限界について改めて考えさせられたCDであった。 ☆佐藤康則

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