音楽現代 2018年5月号

推薦 非常に充実した後期のベートーヴェンの演奏である。とくに第13番と大フーガを共に演奏することの意義は大きい。第1楽章の動機が大フーガで結実する音楽的なプロセスがくっきりと浮かび上がるだけではなく、それぞれの楽章のさまざまな情景が実に的確に、しかも深く表現されている。彼の後期の四重奏曲の難しさは、楽譜をどのように読み解くのかにあるが、その点エルデーディ四重奏団はおそらく長い時間をかけて作品と対峙し、そこから音楽の対話を引き出していったように思われる。非常に変化に富んだ各楽章のさまざまな表情がリアルに描き出され、そして作品全体がしっかりと構築されている。実に説得力のある演奏で、高く評価したい一枚である。 ☆西原 稔

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