第二次大戦中のある収容所でのできごとです。
寒さと過酷な労働、そして飢え・・・・・・ひとびとは絶望の中でつぎつぎと枯れ木のように倒れてゆきました。

そしてついに開放の日がやってきたとき、連合軍の兵士たちはおびただしい屍と、骨と皮ばかりにやせおとろえたひとびとを見ました。・・・・兵士たちはある部屋にきて驚きました。なぜかその部屋のひとびとだけは、生存率がとびぬけて高く比較的に元気だったのです。不思議に思ってたずねるとこんなことがわかりました。



戦争のさなかには、人間の持つ醜さや残虐さなどが露わになりますが、闇のなかのたいまつのように人間の尊厳を身をもって示してくれるひとびともたくさんいました。
ショル兄弟を知っていますか?ご存知でなかったら記憶のすみに残しておいてほしいのです。彼らが若い命をかけて伝えようとしたメッセージは何だったのでしょう?そしてそれはいかなる正義のためだったのでしょう?
その部屋にはおはなし上手なおばあさんがひとりいたのでした。ひとびとは乏しい食事の中からすこしずつ出し合っておばあさんを守りました。
・・・夜、辛い労働のあとひとびとはおばあさんを囲んでおはなしを聞きました。それはどんなおはなし会だったのでしょう。笑いあり涙ありひとびとは目を輝かせて、おばあさんのおはなしに興じ、生きる希望を持ち続けることができたのです。こうしてちいさなおばあさんのおはなしが多くのひとびとの命を救ったのです。




ヒトラーが君臨した時代、恐怖政治と思想統制の下で同朋が協力するか沈黙するしかなかったとき、医学生ハンス・ショルと妹ゾフィー・ショルはヒトラー反対、戦争反対の運動を起こしました。学生たちの覚醒を促すために彼らは秘密裏に反戦のビラを作り、各地にばら撒きました。そのチラシの名を「白バラ通信」といいます。捕らえられたふたりは最後まで友をかばいベルラッハの森で断頭台の露と消えました。
ゾフィ・ショル