経営規模等評価(経審)ポイントアップ・ガイド
2021
はじめに
経営規模等評価は、建設業の公共工事受注に欠かせない、全国一律方式で行なわれる客観点数
評価システムです。年に1回(決算期ごと)の受審を必要とし、審査が終了すると「総合評定値(P点)」
が郵送されます。(1ヶ月ほどで、WEB上からこの総合評定値の内容が全国に公開され、自由に閲覧
することができます。)なお、結果通知書の有効期間は決算日から1年7ヶ月です。
近年では、社会性評価(W)において、社会保険未加入問題などに対する厳しい減点基準(最高
120点減点)が設けられるなど、技術者の安定的確保と、公共工事の品質確保などに関連した、建
設業法・品確法・入契法の一体的改正が行われています。
* 初めて受審される場合は、年度の途中でも申請可能です。「経営状況分析」とあわせて審査が
必要です。
* 入札参加資格審査の段階になると、この客観点数に加え、国・都道府県・市町村ごとの主観点
数(独自方式)が加点されランク付けされます。(工事を請負たい自治体への登録申請が必要です。
下記参照)
入札参加資格審査(一般に指名競争入札のための「業者登録」と呼ばれるもの)は、国・都道府県・
市区町村の多くが2年に一度行なっています。この入札参加資格審査に必要な登録申請を行なうこと
により各自治体の業者名簿にランク付け掲載されます。
* 入札に参加するためには、有効期間内の総合評定値(結果通知書)が必要となります。
「経営規模等評価」とは、下記の総合評点(P)を客観点数として表したものです。
◇ 工事種類別完成工事高(完工高)の評点 ・・・・・・]1
◇ 自己資本額(=純資産額)の評点 ・・・・・・・・・・・ ]21
◇ EBITDA(営業利益+減価償却費)の評点・・・・・]22 (]21+]22=]2)
◇ 経営状況分析(一次審査の点数)の評点 ・・・・・・・ Y
◇ 工事種類別技術職員数の評点 ・・・・・・・・・・・・・ Z1
◇ 工事種類別元請完工高の評点 ・・・・・・・・・・・・・ Z2 (Z1+Z2=Z)
◇ 労働福祉の状況の評点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・W1
◇ 営業年数の評点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・W2
◇ 防災活動への貢献の状況についての評点 ・・・・・・ W3
◇ 法令順守の状況についての評点 ・・・・・・・・・・・・・ W4
◇ 建設業の経理に関する状況についての評点 ・・・・ W5
◇ 研究開発についての状況の評点 ・・・・・・・・・・・・・W6
◇ ISO取得状況についての評点 ・・・・・・・・・・・・・・ W7
◇ 建設機械の保有状況についての評点 ・・・・・・・・・ W8
◇ 若年技術者の育成及び確保の状況(35歳未満)・・W9
※ (W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8+W9=W)
技術職員については、審査基準日6ヵ月以前から雇用されている証明書類が必要です。
*社員の内、建設業経理士一級(二級は0.4掛)、公認会計士、公認会計士補、税理士の資格を
有する者のみが加点対象。(R3.4.1〜有効期間内の講習受講登録がある方のみ)
*会計監査人設置会社、会計参与設置会社、または公認会計士等が証明書類を提出した場合も
加点となります。
*ISO取得(建設業および会社全体として取得している場合に限る)による加点は、品質管理
(ISO9001)、環境管理(ISO14001)ともに5点の配点に全国統一されました。
*建設機械は、保有台数に応じて1台目5点、2台目〜8台目が1台ごとに追加1点、9台が12点、10・
11台が13点、12・13台が14点、14台・15台以上が15点となりました。(H30.4)
R2.4.1〜 建設キャリアアップシステムによる、能力評価レベル3・4の技能者へ配点開始
技術職員数(Z1) 能力評価レベル4 ⇒ 3点/能力評価レベル3 ⇒ 2点
*知識および技術または技術の向上に関する取組の状況(W10)の新設により、R3.4.1から技術者のCPD(継続能力開発)取得単位数、技能者の能力レベルアップ人数による5段階配点が行われる予定です。
*建設業の経理の状況(W5)では、建設業経理士などの合格証や資格だけでは配点されなくなり、講習受講など、能力担保を証明する登録証明書が新たに必要になります。
H28.6.1〜 建設業法改正 「解体工事業」 新設
H31.5.31までの経過措置、解体工事業の【みなし許可業者】は終了しました。
*経営事項審査での技術職員への記載は、「解体工事」業許可を追加した場合、とび・土工コンクリート工事と解体工事の2件を1件としてそれぞれ加点対象とし(業種コード99)、全体で3業種の加点が平成33年3月31日まで可能です。
*土・建一式工事の許可をお持ちの場合、同様の建築物の建替えをともなわない解体工事のみの一式工事については、解体工事業の許可なしでは請負うことができませんのでご注意ください。
なお、各専門工事については、許可をお持ちの専門工事に関する解体工事の許可は不要です。
(P)最高点 2143点 最低点 −18点
それでは、総合評点に関係する、それぞれの計算式を見てみましょう。
工事種類別完成工事高(X1評点)ウェイト25
最高点が完工高1,000億円以上で2309点、最低点は397点です。
経営規模評点(X2評点)ウェイト15
自己資本(=純資産額)X1の増大と借入金の減少が最大のポイントです。
もう一つの評点は職員数X2です。利払前税引前焼却前利益(EBITDA=営業利益+減価償却費)の
絶対値に改正されました。
自己資本額点数と平均利益額点数による算出方法
経営規模評点X2=(自己資本額点数+平均利益額点数)/2 *小数点以下切り捨て
454点〜2280点に設定されています。
経営状況分析(Y評点)ウェイト20
従来の12指標を廃止し、財政基盤の強さを問う8指標となりました。
@ 負債抵抗力 X1 純支払利息比率29.9%
X2 負債回転期間11.4%
A 収益性・効率性 X3 純資本売上総利益率21.4%
X4 売上高経常利益率5.7%
B 財政健全性 X5 自己資本対固定資産比率6.8%
X6 自己資本比率14.6%
C 絶対的力量 X7 営業キャッシュフローの絶対額5.7%
X8 利益剰余金の絶対額4.4%
以上4つの視点(X1〜X8の8指標)から経営状態を分析します。
Yの最高点は1,595点、最低点は0点となります。
Y評点アップのポイント
@ 実質的に会社にあるとされる手持ち資金(キャッシュフロー)の比率を高める。
配当金・役員賞与・役員報酬はなるべく低く押さえる。
A 売掛債権・未成工事支出金(立替工事高)を減らして流動資産を増加させ、流動負債を減少
させる。
B 自己資本を充実させ、他人資本によらない強い経営基盤をつくる。
C 不必要な固定資産を減らし、他人資本(借入金)を縮小させる。
建設業種類別技術職員数(Z評点)ウェイト25
元請完工高の評点が改正されました。
審査業種に関連した技術者を雇用、または関連資格を取得させることによって評点がアップします。以前は、比較的簡単に点数がアップするといわれていましたが、平成20年4月1日改正から、審査基準日において1名につき2種目までの加点となりました。
なお、管理技術者講習の受講者で管理技術者証を保有している者には1点の加点があり、1級技術者の点数とあわせ6点となります。また、基幹技術者講習修了者には基幹技術者3点が加点されます。
1級(相当)資格者 |
5点 |
2級(相当)資格者
レベル3の建設技能者 |
2点 |
その他(実務経験者) |
1点 |
監理技術者証保有かつ監理技術者講習受講者 |
6点 |
登録基幹技能者
レベル4の建設技能者 |
3点 |
基幹技術者講習の詳細は(財)建設業振興基金 http://www.yoi-kensetsu.com/kikan/
上記の合計点数を工種別技術職員数の評点(Z1)計算式により数値を算出し、Z2計算式にあてはめて算出します。
Zの評点は、技術職員の数の点数(Z1)に5分の4を乗じたものと元請完成工事高の点数(Z2)に5分の1を乗じたものの合計(小数点以下切り捨て)として求めます。
Zの最高点は2,441点、最低点は456点です。
社会性等(W評点)ウェイト15
合計数×10×190/200に圧縮されます。
経営者が雇用した職員に対し、社会的責任をどれだけ果たしているかを評価します。従来に比べ飛躍的に社会貢献度が問われる審査項目です。
<労働福祉の状況(W1)点数表>
審査項目 |
加点 |
減点 |
備 考 |
雇用保険未加入 |
0 |
-40 |
減点評価項目 |
健康保険未加入
|
0 |
-40 |
減点評価項目 |
厚生年金保険未加入
|
0 |
-40 |
減点評価項目 |
設業退職金共済制度加入 |
15 |
0 |
1名以上の加入でも可
|
退職一時金もしくは企業年金制度の導入
|
15 |
0 |
職員全員対象 |
法定外労災制度の加入 |
15
|
0
|
職員全員対象
|
平成23年4月1日以降、再生会社には下記の適用があります。
民事再生手続開始決定日から終結決定日、ならびに会社更生手続開始決定日から終結決定日までの間にあたる企業は、それぞれ再生(更正)期間中の点数が、社会において多大な負担を関係者に強いたとして、60点が減点されます。なお、再生(更正)後は、営業年数ゼロ年としてスタートしたものとみなされます。
建設業の営業年数(W21) 5年まで 0点 〜 35年以上 一律60点
営業年数−5年=営業年数の点数(1年2点)
民事再生法又は会社更生法適用の有無(W22) 民事再生法又は会社更生法の適用有 −60点
防災協定締結の有無(W3) 20点
法令遵守状況(W4) 営業停止 −30点(指示処分 −15点)
建設業経理事務士等の数(W5)
会計監査人の設置会社は20点、会計参与の設置が10点、公認会計士等数に該当する社員が自主監査を行った場合は2点、公認会計士等数 最高10点(公認会計士、会計士補、税理士、建設業経理事務士一級・二級)となっています。
公認会計士等点数算出表 (公認会計士等の数)×1 + (2級登録経理試験合格者数)×0.4
【0.4以上(2級1名)の場合】
完成工事高が10億円未満で6点、1億円未満で10点になります。
研究開発の状況(W6) 会計監査人設置会社に限定 最高25点(2期平均)
建設機械の保有状況(W7) 決算期内の購入契約書、または決算期内に特定自主点検を行った固定資産台帳に記載のあるもの
災害時に使用される代表的な建設機械(ショベル系掘削機、自重3t以上のブルドーザー、トラクターショベル、自重5t以上のモーターグレーダー、自重8t以上または最大積載量5t以上で運輸局へ建設業用として表示番号の承認を受けた大型ダンプ、つり上げ荷重3t以上の移動式クレーン)
※ 審査基準日から1年7ヶ月以上のリース期間を証明する契約書のあるものでもよい。
審査基準日から1年7ヶ月以内の申出のあるものを含む。
1台目5点(最高15点)
ISO9001・14000の取得状況(W8) ※ 建設業、および全社での受審に限る
品質管理・環境管理 各5点(両方で10点)
若年技術者の育成及び確保の状況点数(W9)
継続雇用(35歳未満が15%以上)または新規雇用(35歳未満新規が1%以上)で各1点
(合計2点)
Wの最高点は1,966点、最低点は−1995点となります。
【重要公式】 完工高(]1)評定値アップ計算
<その1> 審査基準日より6ヵ月以上前に、審査業種の技術職員(資格者)を確保する。
<その2> 土木一式工事・建築一式工事はその他の関連工事の積上げを活用する。
「土」 ← 7業種(と・石・ほ・しゅ・水・鋼 ・解)
*「と」「鋼」「解」は、土木工事に関する部分についてのみ
「建」 ← 17業種(大・左・と・屋・電・管・タ・鋼・筋・板・ガ・塗・防・内・絶・具・解)
*「と」「電」「管」「鋼」「塗」「筋」「解」は、
建築工事に関する部分についてのみ
<その3> 専門工事間での積上げを活用する。
@「と」⇔「石」「タ」
A「屋」⇔「板」
B「電」⇔「電気通信」「消」
C「管」⇔「絶」「水」「消」
D「鋼」⇔「筋」
E「具」⇔「内」「ガ」
(注)単独で他の工事を受審されている場合は、完工高の配分にご留意ください。
(H16.4.1、H18.5.1、H20.4.1、H23.4.1、H24.5.1、H27.4.1、H28.6.1、H30.4.1、R2.4.1更新)
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