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珈琲マニュアル

1.コーヒーの木
私たちが飲用しているコーヒーは、アカネ科に属する常緑樹で野生だと5m以上の高さになるが、栽培では剪定し2m程度に保っている。コーヒーの木は藩種育苗をしてから結実するまでに、3〜5年を必要とする永年作物である。花は小さくて、白く、香りはジャスミンに似た芳香があり、開花して2〜3日で散ってしまう。結実採取までに、12ヶ月かかり、1本の樹から3〜5kgの果実が採れ、精製すると、約5分の1の生豆となる。コーヒーを収穫できる地域は、赤道をはさんだ南北25度の熱帯、亜熱帯および一部湿地帯の地域である。この地帯のうち標高500〜1200m、雨量1500〜2000ミリ程度で、日射がよく、通風性があり、水はけのよい山岳の斜面または高原地帯がコーヒー栽培には最適なのです。また、開花期前と果実の成長期に特に雨を必要としており、2回の雨季が必要です。一方、収穫期には、天候がよくなければならない。このリズムが崩れるとコーヒー豆の品質や風味に影響が出てしまいます。
2.コーヒーの原種
植物学的に分類すると「Rubiaceas」(アカネ科)「Coffea」属と統一され、形態上から次の7つのグループに分類されている。

7つの分類
A.Coffea arabica(アラビカ種)
B.Coffea canephora(カネフォーラ種ロブスター)
C.Coffea liberica Hiern(リべりカ種)
以上3大原種

D.Coffea dewevrei(デウェベレイ種)
E.Coffea stenophylla(ステノフィーラ種)
F.Coffea congensis Frochner(コンジェンス種)
G.Coffea hibridos(交配種)

*A.B.以外はほとんど栽培されていない。
3.3大原種
アラビカ種(世界で消費される約70〜80%)
コロンビア、ブラジル、メキシコ等の中南米諸国で生産されるコーヒーのほとんどはアラビカ種である。ただ一部ブラジルにてコニロンとよばれるロブスター種も生産される。他の地区では、アフリカのエチオピア、ケニア、タンザニア、ルアンダ、またインド、インドネシア等にても生産される。栽培に関して高地500〜1,000mが適している。高温・低温・多雨・小雨に不適で楕円偏平形で豊かな香味を持つ。

ロブスター種(世界の全生産量の約20〜30%)
この種は病気、特にさび病に強く、土壌もあまりよい所でなくてもよく、500m以下の低地での栽培に適する。主たる生産地として、アフリカ諸国、インド、インドネシア等のアジア諸国。
苦味が強く酸味にとぼしく香りも独特で丸みのある短楕円形で単品として飲用するよりは、ブレンドに少量使ったり、インスタント、缶コーヒー用の原料やアイスコーヒーとして多く使用される。

りべりカ種(生産量は少ない)
西アフリカ、リベリア原産で、栽培の歴史はアラビカよりずっと浅く、芳香、品質は劣り、アラビカの代用として混ぜて使う。樹勢強く、低温、病虫害に強く200m以下の低地での栽培に適し、形は先端がとがり菱形で苦味が強く、交配用や、アラビカの台木として使われている。ほとんどヨーロッパに輸出され日本には入っていない。
4.コーヒー果実の構造
コーヒーの実
果実は核果で、コーヒー・ベリーズあるいはチェリーと呼ばれる。中に長さ14〜18mm、幅13〜15mmの楕円、または球形で一対の種子が向き合って入っている。これがコーヒー豆で、その形状からフラットビーンズと呼ばれ、ときに1個のこともあり、これをピーベリーまたはメールベリーといい、枝の先端部分にでき、収量はその樹全体の10%程度の為、高価で引き取られる。種子の背面は球形、腹面には、縦に深い溝がある。果実は初め緑色で、熟すにつれて黄色となり、次いで深紅色となり、成熟すると落果する。
コーヒーの果実は、外側に外皮、内側に果肉、さらに内果皮パーチメントと銀皮があり、一番中心に2個の種子が入っている。種子以外の部分を除去する工程をコーヒー精製といい、精製されて初めて商品価値を持つようになる。

種子(コーヒー豆 coffee bean)

外皮(outer skin)
外側の肉質の皮

果肉(パルプ pulp)
甘いゴム質

内果皮(パーチメント perchment)
茶褐色の固い皮

銀皮(シルバースキン silver skin)
薄い銀色の皮・種皮

センターカット(center cut)
胚乳部の亀裂

胚乳

コーヒーチェリーの断面図
5.コーヒーの生豆
水分率の違い
生豆は農産物であり、その時々の入荷により同じ銘柄でも若干異なった水分率のものが入荷します。又、銘柄によって軟質豆と硬質豆とがありますが、水分率の違いはオールドクロップであるかニュークロップであるかによる事が多く、オールドクロップは枯れているといわれるように水分が抜けて色は黄色味を帯びていて味は酸味が弱く平凡な味です。ニュークロップは、光沢があり、色は淡緑色で瑞々しい感じで独特の酸味や香りを持ちます。又ロブスタ種はアラビカ種より2〜3%多い水分率を示します。

ニュークロップ・・・・新収穫品
カレントクロップ・・・・その年の生産品コーヒー年度は10月から翌年9月まで
パストクロップ・・・・前コーヒー年度収穫品
オールドクロップ・・・・数年前までの収穫品

水分率の意味
コーヒー生豆は水分を多く含んでいて、この水分処理が大変重要になってきます。コーヒー生豆を焙煎すると、水分が大幅に減少します。焙煎前後の豆の重量減少率を目減りといい、生豆の水分含有量の違いにより、目減りが変わり、またそれが、味や焙煎度にかなり影響してきます。したがって、生豆の水分含有量を見極め、それぞれの豆にたいし、適切な焙煎をすることが必要です。水分の少ないオールドクロップの方がニュークロップよりは、焙煎しやすく、見た目も綺麗に仕上がります。これは、熱の吸収が早く、加熱により豆の内部で進行する加熱反応が刻々と進むためです。これに対して水分の多いニュークロップは、しわが伸びなかったり黒ずんだりします。これは、豆の部分部分により熱の吸収のしかたや膨張率が違うためにおき、煎りむらや芯残りといった状態になりやすいため、これを防ぐには、まず焙煎の初期過程で、水分抜きの時間を充分とって熱が平均してかかるようにする必要があります。又、水分の多い豆は、熱の吸収のしかたが始め遅く最後になって、変化が大きくなる為注意が必要です。
6.良い生豆の見分け方
1.色沢
コーヒー豆の色調、光沢を合わせた特徴を色沢という。良質なニュークロップの生豆は美しい青緑の色沢があり、年数を経ると、つやを失い次第に退色するが、均一の色調は保たれている。経験を重ねていくと、乾燥処理の悪い豆は退色が不均一であったり、まだらやしみが出ているのが判るようになる。従って色沢は、退色状態でコーヒー生豆が新しいか古いか、豆の水分率、乾燥または保存管理の状態の良否まで現れるので重視したい。

2.豆のサイズと均一性
粒の大きさはなるべく均一でムラのない豆が無難であるが、完璧な豆はないのでハンドピックが重要な作業になってくる。豆の大小は品種・産地・銘柄によって異なるが、小さい豆は小さいなりに、粒が揃っているものは、それだけ欠点豆の混入率も低く、その上焙煎工程で煎りムラをつくらない利点にもつながる。そしてセンターカットがすっきりと綺麗に入っているものは、良質の生豆の証です。

3.水分率
ニュークロップの当年物では、水洗式の場合の水分率が平均12〜13%、乾燥式では、11〜12%。水分率は生豆の色と関係が深く、ニュークロップは鮮明な淡緑色であるが、貯蔵中の時間経過とともに、淡緑色から黄色まで徐々に緑色が褪せる。ところが逆に水分率が高くなりすぎると濃緑からさらに黒みを帯、最後には白っぽく変化する。このような豆は共通して風味に乏しく、またカビ豆になりやすい。

4.匂い
ニュークロップの新鮮な良質豆には、特有の匂いがあり、生豆の貯蔵期間が経過するに伴いそれが次第に弱まってくるけれども、あくまでも異臭を加えず、本来の匂いを保つのが正常である。最も不快なのは異臭で生産管理に問題のある発酵臭・カビ臭、主にコーヒー以外の者との接触による泥・土・木・皮臭、輸送中の管理ミスによる油類・香料・薬物による匂い、これに国内での取り扱いや保存法の不備など、コーヒー豆に異臭のつく原因はいたるところにあり、それらは外観視覚以前に臭覚的変化として現れることが少なくないので、まず匂いから異常の有無を捉えることができる。異臭をもつ豆は極少量でも、他の大部分の正常豆の品質を損ね、最終的な液体の味と香りにまで悪影響が及ぶので、充分注意したい。

5.欠点豆
農産物であるコーヒーは、天候、害虫、収穫や精製過程に問題があって「欠点豆」になってしますことがある。欠点豆が混入すると、豆の全体的印象をわるくするだけでなく、コーヒーの新鮮な匂いを失わせたり、品質を劣化させる。

発酵豆・・・・・生豆の外見上では見つけにくく、発酵臭のある青黒く汚れた豆で、水洗式の発酵槽で発生する事が多く、焙煎しても正常な色調を現さず白ぽくなり、またその豆の異臭はコーヒー液の正常な香りを妨げる。「発酵豆」は黒豆になる前段階の豆で、発酵した状態からやがて腐敗(黒豆)へと移行する。

黒豆(ブラックビーン)・・・・・地上に落下し腐敗黒変した豆で,コーヒー液から腐敗臭がし、また、液を濁らせる。文字通り黒っぽく、外見・匂いとも、正常豆とははっきり区別できる。

カビ豆・・・・・収穫・精製・貯蔵・輸送を通してカビを生じる機会は少なくない。乾燥工程の不備な豆が、高温、湿気、ムレの状態で、豆が容易にしかも大量に青カビや白カビを発生し、取り除かないとカビ臭が出る。カビ豆も発酵豆も、ある特定の産地・銘柄に出やすいので、一度発見されたら、その後も引き続き注意を怠らないことが肝心である。

未熟豆・・・・・気象条件によって果実の成熟が揃わなかったり、収穫の時期が長引いたりすると果実がまだ青い「未熟豆」が混入する。豆はしなびたようで艶もなく、貧弱でボリュームに欠け、煎りむらの原因となり、円熟味に乏しく青臭いような異臭がする。ブラジルでは、未熟豆五粒を欠点として扱う。

砕け豆・貝殻豆・・・・・精製作業中に機械にひっかかったり、輸送の過程で砕けた豆を「割れ豆」または「砕け豆」、貝殻状になったものを「貝殻豆」という。豆自体の品質よりも、焙煎時に炒りムラを起こすので除去しなくてはならない。

虫くい豆・・・・・未熟な青いコーヒー豆にブロッカーという蛾の幼虫が侵入し被害を受けた豆で、外見はもちろん味にも悪く、濁りなど影響を与える。

ドライ・チェリー・・・・・日光乾燥の際の外皮の付いたままの「皮付乾果」をいう。ブラジルでは、「コッコ」と呼び、生豆中に混じり込むコッコは欠点とみなされる。コッコを焙煎すると異臭と特異な渋みが出る。

その他・・・・・トウモロコシやこしょうの粒、石、ガラス、釘、コインなどが混じっている事がある。
7.コーヒー生豆の精製法
非水洗式(アンウォッシュド、乾燥式、ナチュラルNaturalとも呼ぶ)(ドライ Dry、ドライ・メソドDry method
1.乾燥
採果を乾燥場へ運び、平らに広げて天日乾燥を行う。乾燥期間が長いので、雨や夜間の湿気にも充分気を配らなくてはならない。また毎日数回果実をよくかきまわし、平均に乾燥させると、外皮・果肉などは黒く固い殻となって種子に付着する。

2.脱穀
乾果を脱穀機にかけて果肉や銀皮を除去するとグリーン・コーヒーになる。この方法は水洗処理を行わず自然乾燥によるため、作業自体は比較的単純で、管理が行き届けば円熟した良質のコーヒー豆になる。しかし天候の影響を受けやすく、欠点豆の混入率も高い。ブラジル産コーヒーのほとんど、エチオピア、イエメン、インドネシアなどの小規模農園、多くのロブスタ種を対象に行われてる。ブラジル
サントス、エチオピアジンマ、・ハラー、モカマタリ、AP−1、EK−1、ペルーN

3.選別
粒の大小によって選別し、混入物や欠点豆を取り除きます。
味の特徴として、酸味が穏やかで、豆の自然な持ち味が生かされる。

水洗式(ウォッシュド Washed)
1.選別
果実を大きな水槽に約24時間入れる。成熟した実は下へ沈み、未熟なものは水に浮かせて選別

2.果肉除去
水洗とともにチェリーを果肉除去機に通し、それぞれ外皮や果肉と種子を分離させる。

3.発酵
種子を発酵槽に導き、半日〜一日間貯蔵し発酵させると、取り残した果肉も発酵して豆から離れ、同時に豆の粘着物質も溶かし去られる。

4.水洗作業
コンクリートの水洗場で充分に水洗いする。

5.乾燥
数日間の天日乾燥(または室内乾燥、乾燥機による熱風乾燥)を行う。ここまでが「パーチメント・コーヒー」と呼ばれるもの。

6.精選
輸出に際して、精選工場で脱穀機にかけ、パーチメント(内果皮)とさらにその下にあるシルバー・スキン(銀皮)を除去する。

7.格付け
形、大きさにより格付けを行い、袋詰めする(グリーンコーヒー)。豊富な水量を利用した処理方法で、設備と手間を要する代わりに混じり物が少なく、豆が綺麗に仕上がる。反面、工程が複雑な為不手際から異臭や味の劣化を招きやすい。また保存中の品質変化にも充分な注意を必要とする。ブラジルを除く、主に中南米諸国のアラビカ種・ケニア・タンザニアなどに採用されている。
コーヒーの風味として、酸味が強い傾向がある。
8.コーヒー豆の成分と効用
カフェイン
コーヒーに含有する成分上で最も大きな特色を持つカフェインは大脳の中枢神経に作用して精神活動を敏活にするので気分を明朗にし、識別力を増し、感覚を鋭くさせる。また、薬理的効果を特徴づける重要成分で、心臓の冠状動脈を拡張するので強心作用があり、利尿作用もあります。カフェインが風邪薬に不可欠なのもこのためで、頭痛にも効き目があります。カフェインはアルコール飲料のように麻痺、中毒など副作用はなく、習慣、蓄積作用のおそれがなく、約2時間で排泄されるので、毎日普通量を飲んで差し支えないでしょう。また、カフェインは、深煎りの豆では含有量が少なく、浅煎りのほうがかえって、多くなります。
9.コーヒーの味覚
苦味
コーヒーの成分の中で苦味を持っているのは、カフェインとトリゴネリン(いずれもアルカロイド)、クロロゲン酸。しかし焙煎が深ければ、苦味を増すことを考えれば、クロロゲン酸から変化するP-ビニルカテコール重合物や、たんぱく質の熱変化からできるジケトピペラジンという苦味成分も、コーヒーの苦味に大きな役割を果たしているらしい。

酸味
酸味というのは、酸の解離でできる水素イオンの味。生豆を焙煎すると、クロロゲン酸とショ糖が熱反応して、各種の有機酸ができる。酸の総量は焙煎が進むほど多くなるが、コーヒー液に浸出する遊離酸の量はミディアムぐらいが最大値。つまり、このあたりが酸味が最も強く、深くなるほど酸味は弱まる。
煎り豆にできる酸のうち、クロロゲン酸、リンゴ酸、クエン酸なとは、コクを感じさせる芳醇な味、ギ酸、酢酸などは単純で刺激的な味。これらの酸の含有比で、コーヒーの酸味の質が決まる。

渋味
渋味というのは、舌のしびれで、コーヒーの場合は、タンニン(クロロゲン酸)がこの原因になる。良質のタンニンはかすかな甘味を持っているが、沸かし直しをしたものや、高温で長時間かけたコーヒーでは、タンニンが変質し、悪性の渋味に変化する。

甘味
タンニンの他にコーヒーの甘味を出す成分はショ糖がある。焙煎するとショ糖は減少するが、果糖やブドウ糖(還元糖)、カラメル化糖になり、微妙な甘味を与える。


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