No.26 /2005.10

『 身 欠 に し ん 』

「しりべしiネット」より転記
http://www.shiribeshi-i.net/area/?iwanai

 
○にしんのうんちく(第1回)〜『にしん』とは〜
 
ニシン目ニシン科の海水魚で、地方名(北海道)で、「カド」、「カドイワシ」、「ハナジロ」、「ハナグロ」とも呼ばれる。
  漢字では、「鰊」、「鯡」、「青魚」、「春告魚」などと書かれる。
  北太平洋・北大西洋に分布する寒流域の回遊魚で、体長は、30〜35cmほど。体色は、背側が青黒色で腹側が銀白色で、近縁種のマイワシとよく似た形態であるが、ニシンの体側に黒点がないのが特徴である。
  名前の由来は、さまざまな説がある。
 たとえば、「日本沿岸 ( 西の海 ) で獲れたから、東北なまりでニシンウミが転訛してニシンになった」という説、「寒冷な北の大地で人々が生存できるのは、ニシンのお陰でこの恩は二親(両親)と同じ」という説、「身欠きニシンは、身を二つにさいて乾かしてつくられるので、二身(ニシン)」という説、「両親の長寿を祈って食べる魚なので、二親(ニシン)」という説などがある。


○にしんのうんちく(第2回)〜『にしん』の栄養について〜

 「にしん」は、北海道を代表する魚で、春が旬の魚であることから「春告魚」とも呼ばれる。
  「にしん」は、脂質が多く、鉄、ビタミンB2・B12・D・Eのほか、EPAやDHAが豊富に含まれている。特にEPAは、動脈硬化・心筋梗塞・脳血栓などの血栓症予防に役立つといわれ、DHAは、頭の働きを良くするといわれる。 ただし、カロリーは若干高め。
  また、「にしん」の卵である「数の子」には、親魚である「にしん」の約2倍もDHAが含まれている。

 

○にしんのうんちく(第3回)〜『身欠きにしん』について〜
 
岩内町の「身欠きにしん」の生産量は、日本一を誇る。
  明治時代は、背肉だけをとって乾燥する「一本採りみがき」として製造される方法が主流であったが、現在は、腹部の肉を除かずに乾燥する「外割りみがき(二本採り)」が主流となっている。
具体的には、「にしん」のえら、内蔵を除いて、4〜6尾ずつ口腔部をつなぎ合わせて水洗いし、乾燥する。次いで、尾の部分をつなぎ三枚におろして背骨を取り、これをさらに乾燥させる。この工程を終了すると、「身欠きにしん」となる。
  戦前は、乾燥工程においては天日干しが主流であったが、現在では機械除湿乾燥が主流となっており、最後に行われる乾燥日数によって「本干し(1か月ほど)」、「七分干し(1週間ほど)」、「生干し(24時間ほど)」などの製品になる。
  また、「身欠きにしん」の出荷先は、東北地方(漬物や山菜との炊き物用)と関西地方(佃煮や甘露煮用)が中心となっている。


○にしんのうんちく(第4回)〜『糠(ぬか)にしん』について〜

 
「糠にしん」とは、にしんを米糠と食塩で長期間漬け込んだものである。  食べ方としては、糠を水でよく洗い流したうえで調理する。焼いてもよし、三平汁にしてもよし。
  参考までに、三平汁の作り方(地域や家庭によって異なります)。          まず、糠にしんを水洗いし、さっと湯通しする(臭みを逃がすため)。次いで、一口大に切った野菜(岩内地方では、ジャガイモ・大根・さやいんげんが主流)を昆布だしで煮る。そして、ジャガイモ等が柔らかくなったら、湯通しした糠にしんを1〜2cm程度にぶつ切りにして一緒に煮る。最後、塩で味付けを調整して出来上がり。
  あとは、お好みで七味唐辛子などをかけて召し上がれ。


○にしんのうんちく(第5回)〜にしんの歴史について〜

 
春、産卵のために「ニシン」の大群が日本海沿岸に押し寄せ、誰でも手づかみで捕れるといわれるほどであり、「群来(くき)」という表現もされた。
  「ニシン」の漁獲の最盛期は明治時代で、北海道全体で100万トン近い漁獲量が記録されている。このころ、岩内町の人口も過去最高を記録し、37,000人(現在、17,000人弱)を超えた。
  また、「ニシン」漁の繁栄に伴い日本海側には、いわゆる漁場建築による「鰊番屋」が数多く建設され、財を蓄えた漁師による豪華な「鰊御殿」が建設されたりと栄華を極めた。
  さらには、本州へのニシンの出荷に伴い、衣類・米・砂糖・塩などの品々と同時に数多くの文化の流入もあった。
  しかし、「ニシン」による繁栄は長くは続かず、昭和30年を最後に、「ニシン」の漁獲量は激減し、これと比例するように各漁場・町も衰退の一途を辿った。岩内町も例外ではない。
 現在、岩内町は、「身欠きニシン」生産量日本一を誇る。また「タラコ」は高値で取引されるほどのブランド力を有し、その他水産加工品も数知れない。
  これもひとえに、「ニシン」漁で培われた加工技術の賜といえるかもしれない。

W.Y