バスタイム


「にいさん、背中流そうか?」
「おう、たのむ」
 安ホテルの、(それでもシャワーが個室に付いているだけでもまし)隙間だらけのシャワールームのドアを開けると、もうもうと立ちこめる湯気の中、にいさんが背中を向けて立っていた。
「わりいなぁ、」
「うん」
 洗ったばかりの金髪からはまだ滴がしたたっている。その髪を左手でかき寄せ、前に流すと うなじから背中にかけての白い肌が僕の前にさらされた。
「お前も後でちゃんと拭かないと錆びるぞ。ま、そんときゃ俺も手伝うからさ。」
「うん、」
 にいさんの肌は、いつ見ても綺麗だよなぁ、よく見ると細かい傷はあちこちにあるし、しっかり筋肉が付いているのに、肌が白くてすんなりしている。男の人の背中ってこんなだったかな?
「…?アル?」
「ご、ごめん、ちょっと考え事してて。」
 いけない、いけない、変なこと考えそうだ、違うこと考えなきゃ
「にいさんさ、かあさんの錬成後、はじめてお風呂に入った時のこと、覚えてる?」
「ん?あぁ、」
 一生懸命、他のことを考えながら背中をタオルでこすった。
「片腕、片足じゃバランスも悪くて、一人じゃ入れなくてさ。」
「うん、」
「そのころから、にいさんは色気付いちゃっていて、ばっちゃんや、ましてウィンリィに手伝って貰うのを凄く嫌がってさ。」
「う、うん、」



『絶対一人でやるっ、できるって、大丈夫だよ!!』
『そういったって、バランス悪いんだから、後ろにひっくり返ったりしたら、起き上がるのだって大変だろ?』
『でも、ぜってーやだ!』
『なによ、見栄っ張り。どうせたいした体じゃないんだから、そんなに恥ずかしがることないじゃないのよ!』
『なんだよ、ウィンリィのすけべ』
『なによ、あんたの体なんかに興味ないわよっ、そんなおこちゃま体型!』
『うっさい!そっちこそ扁平胸のくせにっ!』
『やらしいのはどっちよ!どこみてんのよ!まったく!』
『二人とも、お風呂の件はどうなったの?』
『アルッ?あんたが手伝えばいいのよっ!』
『ええぇっ』
『バカ言うなよ、こいつが濡れたら、錆びるだろっ』
『だって、アルだって普通に生活していれば汚れるんだから、手入れは必要でしょ?お風呂から上がったら、今度は二人でアルの体を磨いたらいいじゃないの。』
 ウィンリィの言うことはもっともだった。
『・・・んじゃ、アル、たのむぜ。』
 手足をなくしてから、にいさんは僕にその傷口をあまり見せたがらなかった。傷のひどさに僕が何も喋れなくなるから。
『う、うん』
 いいのかな?にいさん、気にしてないかな?

 だけど、一緒に入ってみて、本当に 一人じゃ絶対に無理だと思った。
 片足だと、立ちっぱなしは無理。座るとシャワーのコックに手が届かない。お湯を出しっぱなしだと、石けんがつけた側から流れていってしまう。一度座ってしまうと移動することもままならず、片腕じゃ体を洗う時、全部には届かない。無理をするとバランスを崩す・・・
 あまりにも無惨で、言葉をなくしてしまう・・・
 なのに、にいさんは僕の心配ばかり
『お前、血印だけは濡らすなよ?鎧と完全に融合しているから、そう簡単には消えないはずだけど、万が一って事もあるからな』
『うん、気をつけるよ。』
 ばっちゃんも万が一のことを考えて、血印には大きめにビニールを貼り、周りをしっかりテープで留めてくれたんだ。



「にいさんの体を洗いながら、僕はこんななりでも、にいさんの側にいても良いんだって思った。それまで、これから先のことや、感覚のない自分を我慢できるのか凄く不安だった。僕がいることで、にいさんには負担になるかもしれないし、いっそ、死んじゃった方がいいんじゃないのかなって思ったりもしてたんだけど、」
 僕はにいさんの背中を流す手を止めた。にいさんは振り向くこともせずに、僕の懺悔の様な告白を黙って聞いてくれた。
「こんな体でも、にいさんのためにできることがあるなら、ここに、にいさんの側にいても良いんだって思った。にいさんをフォローするために僕はいるんだって、思った・・・」
「・・・あたりまえだろ」
 静かで、優しい声だった。
「・・・うん!」
 にいさんは、直球で、いつも僕が一番欲しい言葉をくれるんだ!
「い、いて、いててて、」
「ご、こめん、」
 すっごく嬉しくて、にいさんを洗う手に力を入れすぎた。肌が少しピンク色になってしまった。




自分がお風呂で背中を流して欲しいなぁと思った時、兄弟ならイチャイチャしながら入るんだろうな?と想像してしまいました。
続き、あるかも・・・もう少しイチャイチャしてほしいし・・・そのうちにv