「裕太!」
「え?」
「裕太!!」
兄がただ、名を呼ぶ、
「な、なんだ?」
「呼んでんじゃないか?先輩。」
隣で桃城が見下ろしている。きょとんとその瞳を見返していると姉と母にに背中を押されてグランドの端まで押し出された。
「な、押すなよ、いやだ、ヤメロって」
抗った時、もう一度兄の呼ぶ声が聞こえて反射的にグランドに視線向けると 手を伸ばして微笑んでいる兄がいた。
「おいで、裕太!」
優しく手を差し出す兄の姿を惚けたようにじっと見つめる。
「ほら行ってこいって」
最後のとどめに桃城に背中を押されてバランス崩し、よろめきつつ兄の元まで歩み出た。兄の視線に吸い寄せられるように
差し出されてる手を取るときゅっと握り返された。
「いくよ?」
「あ、ああ、」
いきなり走り出した兄に負けないように全力で走り出すと、先にゴールを目指していた数学の先生を引っ張っている選手を
軽く追い抜き一着でゴールした。走ってる間中繋がれている手に意識を集中しながら…
兄は借り物の指定の紙を審査員に見せてから、裕太の手をひっぱって差し出して見せ、審査員の納得を得て、
一等賞のカードをもらっていた。
「だぁー、疲れた…、なんなんだよ、一体…って、なんて書いてあったんだよ、紙に…」
寝起きでいきなり走らされ、肩で息をつきながら、なぜ自分が走らなきゃならなかったのかの疑問を兄にぶつけてみる。
「ん?見たい?これだよ。じゃぁ、僕は戻らなきゃいけないから行くね。ありがとう。裕太」
にっこり笑って渡された紙を持って息を整えつつ兄の背中を見送ってから、手の中の紙に視線を向ける。
「なっ!!」
紙の文字を読んで思わず赤面し、手の中の紙を握りつぶした。
「お帰り、不二先輩の借り物、何て書いていたんだ?」
シートへ戻るとちゃっかりと家族に混じって弁当を食い始めている桃城が向かえてくれた。
「べ、別に、なんてことねーよ。」
握りつぶした紙はポケットにねじり込まれている。
「弟、とか書いてたのか?でも、弟がいない人にあたったら、持ってこられないしな。何て書いてあったんだよ。」
口いっぱいに弁当のおかず詰め込みながら、言いよどむ弟に不思議そうな視線送りつつ、それでも興味は食い気に勝て
なかったらしく、それ以上の追求はされずに済んだ事に胸をなで下ろした。
(冗談じゃねーよ、言えるわけねぇだろっ、あんな内容!)
内心毒づきながら、書かれていた文字に見覚えある事にも気付くこともなく、本日一番の目的だった豪華スペシャル弁当の味も
十分に味わうことなく、手に残る兄の手の感触を意識しながら黙々と食べ続けた。
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グランドの中心で愛を叫ぶ 3