ぬくもり

「あーあ、兄さんってば、またお腹出して寝てるよ、しょうがないなぁ」
「かっかっかっ、アルはすっかり保護者じゃのぉ、」
 
ピナコばあちゃんは笑ってるし、
ウィンリィがさりげなくタオルを兄さんにかけてくれたからいいけど、
ホント兄さんにはお手上げだ…
自分がどんなにかわいいか、
まるっきり自覚がないんだから!
体のない僕だって、どきどきするのに、
大佐や中佐の前でもこんなだから、ほんと、見てらんないよ、
 
「ここに置いとくのもじゃまだから、部屋に持っていっておくれよ。」
…って、ぼくーーーーっ?
ばあちゃんとウィンリィの視線が当たり前でしょ?と言っている…
…えと、少佐は…
「何をキョロキョロしとるんじゃい!まさかそんななりして、このおチビを担げないなんて言うんじゃないんだろうね?」
「えっ、いや、その」
「んなこと言ってるよりも、叩き起こしゃいいんじゃないの?」
って、せっかくタオルかけてくれたのに、意味ないよウィンリィ、だから、スパナを振り上げないでよぉ、
 
「わかりました、…僕が連れて行きます。」
「最初からそうすりゃいいんだよ、うざったいね、まったく」
これって、いじめ?いじめだよね?ニヤニヤ笑わないでほしいなぁ…
「あ、そうそう、あたし三日!も徹夜してんだから、これから爆睡する予定なの!邪魔したら、ただじゃおかないからね?」
こ、怖いよ、ウィンリィ、目の下のクマが怖さに拍車をかけてるよ、はい、悪いのは僕たちです…
 
「はぁ」
これは荷物だ、兄さんじゃない、兄さんじゃない…
そっと体の下に手を入れると、なんのことはない、フワリと持ち上がる。
僕の腕では…兄さんの体温も感じない…
昔嗅いでいたはずの体臭も今じゃ思い出せない…
柔らかそうな肌の感触も…感じることはできない…
 
「熟睡しとりますな、アル君を無事に治すことができて安心したんですな。私だとて、
教えてもらえればアル君を治してあげることも不可能ではなかったのに、なんとしても自分で治すと譲ってくれんかったからの。」
「すみません、少佐、そのせいで少佐にも大変ご迷惑を」
「いやいや、どっちにしろ、護衛は必要でしたからな。気にすることはない。
弟想いの良い兄ですな。」
「おやすみなさい」
僕は一礼して、開けてもらった部屋のドアをくぐった。
 
兄さんは、僕のことをとても大切にしてくれている…でも、それは、
僕に対しての罪悪感なの?
「…ん…アル…」
あのとき、僕たちは一緒に禁忌に手を染めていたんだよ、
僕は兄さんの手伝いをしていたわけじゃないんだ、
そしてたまたま全身を持って行かれたのが僕だったってだけで、
それはもしかしたら兄さんの方だったのかも知れない…
そうなっていたら、果たして僕に兄さんがしてくれたように
命を代償として兄さんの魂を錬成できたかどうかわからないんだよ。
 
「兄さん」
僕の手が軽く触れただけで、やわらかくへこむ頬…
…触れたい…感じたいよ、
「んぁ?…なにやってんだ?」
「兄さん…」
鎧の手じゃ感触を味わうこともできないけど…
少しでも感じたくて、頬から耳たぶをくぐって、首筋を撫でてみた…
「んなっ!」
びくりと兄さんが跳ねた
「な、なにやってんだよ!そのでかくてむさい顔を近づけんじゃねーよ!」
「うわっ」
あっという間に、機械鎧の左足が僕のお腹を蹴り上げた
ドンガラガッシャーン!!
部屋中に僕が転がった音が響く…ひぇっ
バタンッダンッダンッダンッ
恐ろしい足音が…
「なんだ?」
バターンッ!!勢いよく開く扉!
「兄さん!ふせて!」
「うわわわわわわっ」
兄さんの上にスパナの雨がスコール並の勢いで降り注いだ
「何すんだ!殺す気か?!」
「今度やったら…マジ殺す!」
目、目がマジにすわっている、殺人者の目だよ、あれは…
ダンッダンッダンッと来たときと同様に足を踏みならし、彼女は部屋に帰っていった…
 
「なんなんだよ、ったく」
「ごめん、兄さん」
「…ったく、どいつもこいつもうるせぇなぁ、」
ため息を付いて、兄さんはもぞもぞと動いている。
「体が直った途端にこれか?いくつになったと思ってるんだよ。」
「えっ?」
「一人じゃ寝れないんだろ?入れよ、」
「に、兄さんv」
「その代わり、寝返り打つなよ!狭いんだから、」
「ありがとう兄さんv…あれ?…」
もう寝てる…
 
早く体が元に戻せるといいな。
そしたら、一番はじめに、力一杯兄さんを抱きしめて、キスしよう!
それまでは、このぬくもりで我慢するよ。
確かに感じるこのぬくもりで…
「温かいよ、兄さん…v」

       

 初鋼です。アニメを見ては妄想してます・・・