瞳にうつるもの 2
はじめてアルを見た時、俺はなんて綺麗な物があるんだと思った。
ちっちゃくて、金色でふわふわでいい匂いがして、すっげードキドキしたのを覚えている。
「エドワード、あなたの弟のアルフォンスよ。」
「もう、お兄ちゃんだな。アルフォンスのこと、大切にしてやるんだぞ。」
父さんも母さんもすっげー幸せそうに笑っているから、俺もすっげー嬉しくて、ワクワクしていた。
そのとき俺は、アルフォンスは両親から俺へのプレゼントだと思っていた。
だって、「弟」の意味なんてわからなかったし、「お兄ちゃん」って言葉もほめ言葉だと思っていたし、
「あなたの弟よ。」「大切にするんだぞ」なんて言われるから、てっきり俺にくれたモンだとずーっと思っていた。
アルは結構世話の焼ける「弟」だった。
とにかく、よく泣いた。腹減った、おむつ濡れた、眠い、暑い、寒い、暇だ、と昼夜を問わずだ。
ある日、父さんが出て行ったきり帰ってこなかった。母さんに聞いても、理由が良くわからなかった。
ただ、母さんが大変そうだったから、「弟」の面倒は出来る限り俺がした。
ミルクを飲ませたり、遊んでやったりだ。
力一杯泣いているのに、ミルクの瓶を見せると「ぅー、ぅー」と手を伸ばして口を尖らせる。
口にいれてやると、涙をいっぱいためた目を大きく開いて、必死で吸うんだ。
(おもしれぇ・・・)
こんなジュースみたいな物を飲んで、腹一杯になるのが不思議だった。
一度、味見がしてみたくて、弟の口からミルクを抜き取って俺の口に入れてみた。
「おぇっ、」
あまくて、どろっとして、くさい・・・
「ふぎゃ〜〜!!」
「やべっ、」
「どうしたの?」
アルの尋常じゃない鳴き声にかあさんがすっとで来た。
「な、なんでもないよ、へへっ」
慌ててミルクを弟の口へつっこんだけど、かあさんにはばれたみたいだ。
「ん〜〜?」と、腕組みをしてすごまれた・・・
うぇ〜〜、口の中がイヤな感じだ、あとでうがいしてこよう。
飲み終わった弟は、腹がいっぱいになって、満足そうだ。なんか、う〜う〜いっている。
「ごめんな。」
ふわふわの頭をそっと撫でたら、不思議な声できゃらきゃらと笑った。
やっぱ、かわいいv俺の宝物だ!
「ん〜、ん〜」
「ん?」
なんだ?・・・うっ!
「かぁーさーん、」
「なあに?」
「アル、うんち出たー!」
そのうちに、弟はうごくようなになった。その移動方法は、俺たちと違って、手も使って移動するんだ、
近所の猫みたいに。
初めはとろかったけど、そのうち格好なスピードでついてくるようになった。面白くて、良く逃げ回って遊んでいた。
はじめて立った時は、人間らしくなってきたことに感動した。
今まで、うーとか、あーしか言わなかったのに、「にーちゃ」なんて、発音した時には思いっきり抱きしめたっけなぁ、
どこに行くにもついてきて、何をするにもまねをして、毎日がすっげぇ楽しかった。
庭の木にぶら下げてあったブランコに一人で乗れるようになると、弟は自己主張するようになってきた。
そのころからよくケンカはしたが、根本的にアルは俺のモノで、とても大切な弟だった。
ある日、かあさんが倒れた
親父が出て行ってから、かあさんは必死に働いていたから、疲れが溜まったんだと思う。
働きすぎたんだ。少し休めば、また元気になるさ。
俺の足も手もがくがく震えた。医者やピナコばっちゃんが深刻な顔をしていたから。
ありえない、ありえない、かあさんがいなくなるなんてことない。
「にいちゃん?」
目の前に今にも泣きそうなアルがいた。
「大丈夫だ、大丈夫」
自分に言い聞かせながら、大切な弟をぎゅっと抱きしめた。
不安に押しつぶされそうな夜。俺たちはずうっと抱き合って眠った。
何日たっても、かあさんは元気にならなかった・・・
そして、俺たちの前から、かあさんはいなくなってしまった・・・
かなしかった、けど、泣いてばかりいられない。泣いていたって腹は減る。
「にいちゃん、お腹すいたよ。」
俺にはアルがいる。かあさんがいなくなった今、俺が一人でアルを守って行かなきゃならないんだ。
俺がしっかりすれば、家を追い出されることもない。アルと離されることもない。
ピナコばっちゃんが俺たちに助力してくれた。
大丈夫だ、やっていける。アルフォンスがいるかぎり、俺は大丈夫だ。
勉強には目標を持った方がいい。俺は、もっとも難しいと言われている人体錬成を目標にした。
アルがいるなら、何だって出来る気がした。
そうやって、必死になっている時、アルが突然とんでもないことを言い出した。
「ウィンリィってかわいいよね。」
爆弾を投げつけられた気がした・・・
大人達が俺たち向かって言う言葉とは、意味が違うように聞こえた。
・・・・アルが俺のモノじゃないということに気づかされた瞬間だった。
足下から何かが崩れていく感覚。
その場にいたウィンリィに激しく八つ当たりしてしまった。
頭の中を色々なことがぐるぐると回り始める。
アルは俺の・・じゃない・・・なぜ?なんで?今まで俺のアルだったのに・・・
飯なんか食っている場合じゃない!
何がどこで間違えたのか、どこから修正すればいいのかじっくり考えなければならない。
・・・・考えれば考えるほどに、根本的な間違いに俺は気がついた。
アルと俺は兄弟だ。アルは弟で、一人の人間であって、俺のモノではなかったというだけだ。
修正なんてする場所もない・・・このままアルは、俺の宝物は・・・俺の手から、こぼれてしまうだけ・・・
アルはそのことに気づいているのだろうか?一個人として、好きなように生きていいんだと言うことに・・・
気づいていないのなら、もうしばらく気づかないでくれ。お願いだから・・・
俺は錬金術に没頭した。見え始めた事実に蓋をして。
アルはついてきてくれた。今までと同じように。
まだ行ける。アルが側にいてくれる限り、まだ行けるんだ。
周りを見ないでくれ、昔のままの、その瞳に、俺だけを映していてくれ。
そのためなら、俺は、何でもする。なんでもするから・・・
「アル?」
かあさんの錬成途中で俺はアルを見失った・・・
「アルッ!!」
そんなわけない・・・
「アルフォンス!!」
持って行くな!俺から「弟」を奪うなんて誰であろうと許さない!!
「・・・アルは俺のモノだ・・・等価交換が必要なんだろっ!他ならなんだってくれてやるっ!!
だから!あいつだけは返せよっっ!!!俺のたった一人の「弟」なんだよっ!!!」
俺は、俺のエゴで、アルの大切なものを奪ってしまったのに、俺はあいつに、たった腕を一本しかくれてやれなかった。
・・・俺は一番大切な宝物一つ守れなかったんだ・・・
「元の身体に戻る方法もあるいは・・・」
軍の狗がやってきて、可能性を提案してくれた。
俺が守れなかったものが万が一にでもまだ取り戻せる可能性があるのなら、なんとしても取り戻す。
お前が存在する限り、俺は何でも出来る。何でもするさ。
だから、一緒に居てくれ・・・アル・・・
| なんか、最初に考えていたモノと、違うモノが出来てしまった、あれ? 書きたいことが消化されていないので、たぶんまた続きます; |