孤高の空


「ソレデェどこまでイッテンノ二人の関係ワ?」
「ブーッ」
「ち、ちょっと、なに言い出すのよ、こんな所で!」
「汚いナァ、ちゃんと拭いてよ、モウ!」
 クリスマスだというのに、つい昨日破滅招来体が出現したために残務整理に追われている
XIGの面々は、ようやく夜中近くにクリスマスパーティーとはいかなくても、
小さな宴会を開いていた。
 いつもの食堂では食べられない料理に我夢はわき目も振らずに食べまくっていた所に
そっとジョジーが近づいてきて、いきなりのとんでもない発言をしたから思わず我夢は吹き出した。
「あっこだって、いつも気にしてたジャナイ」
 だからって,こんな所で確かめることないじゃない、と肘でジョジーを小突くと、
周りの視線がこちらに注目しているのに気がついて首を竦めた。
「な、なにを言い出すんだよ、いきなり」
真っ赤になってイスからずり落ちそうになりながら、大慌てまくりの我夢に自分からバラしている
ようなものじゃないかと、この場にいたほとんどのものがゴクリと口の中のものを飲み込んだ。
事実、昨日も破滅招来体が、二人のウルトラマンによって倒されたあと、我夢だけが帰還がおくれていた。
「我夢!おまえ、まだあいつと、」
 藤宮がしたテロリスト行為は破滅招来体に騙されていた為だと理解はしたものの、
もとアルケミスターズだったというだけで我夢が藤宮と懇意にするのを梶尾は気に入らないのだ。
「わわっ梶尾さん、目、据わってますよっ」
 北田と大河原に止められるのもかまわず、ハーキュリーズの面々と飲み比べを
始めていた梶尾はすでに出来上がっている。
「お前にはぁ前から一度、ガツーンと 言ってやろうと、思ってたんらぁ」
「いっつも言ってるじゃないですか、あ、足元、危ないですよ」
 梶尾を気遣いながらも我夢はイスから腰を浮かせて後ずさる。
 よろめいた梶尾を北田がすかさず受け止めた。
 すでに潰れている志摩を横目に、ここまでなるまで止めなかった責任を
吉田はしくしくと感じていた。
「北田、大河原、」
 会場にコマンダーの声が響き、全員の体感温度が一気に下がった。
コマンダーは顎で、梶尾を連れて行けと、出口をさす。半泣きになりながら、
二人は暴れる梶尾を両側からはさんで連行していった。
「ジョジーが余計なこというから!」
 敦子に睨まれてゴメンと片手を挙げて謝るジョジー。
 針の筵の状態で我夢は、残りの料理を食べ続けた。
 
 
「まずいですよ、コマンダーがいるところで高山さんに絡んだら。それでなくとも彼、
コマンダーのお気に入りなんですから」
 二人に引きずられながら、北田のセリフに梶尾のこめかみが引きつる。
「おい、どこに行くンら」
「部屋に戻ってください」
「冗談じゃらいぞぉ飲み足りらい、そうら、おおはわら、お前のへやれ飲みなおしら、」
「何言ってんですか梶尾さん、もう十分飲みすぎですって、」
「うるひゃい、こんなときれもないと、お前らの部屋なんて見ることもないんら、いくぞぉ」
 やれやれと、溜息をつくと北田は反対どなりの大河原が赤くなったり蒼くなったりしているのに気がついた。
「どうした?大河原」
「えっ、やっ、あの、そんな、」
「?」
 程なくして大河原の部屋の前に来ると一向に開けようとしない部屋の主に北田がごうを煮やした。
「早く開けろよ、」
 いくら自分たちよりは細身とはいえ大の男を一人抱えてはそう長い時間絶えれるものではない。
ましてや時折暴れ出すのだから。
「あの、梶尾さん」
「なんら、はやくしろ」
「散らかってるんですけど…」
「そんなもん承知だ、」
 赤く潤んだ瞳に見上げられて(梶尾は睨んでいるつもりなのだが)大河原の喉がゴクリと上下する。
 えーい、ままよ!と、コードロックを解除すると、待ちに待ったドアが開いて
梶尾と北田は一歩足を踏み入れて、硬直した。
「う、うぇ」
「梶尾さん、大丈夫ですか!しっかり、」
 いきなり口に手をあてて梶尾が屈み込んだので、あわてて北田は梶尾を部屋から引きずり出した。
「なんだ、っぷ、あの部屋は!」
「来るって分かっていれば片付けたのにぃ、」
「普段から片付けとけ!」
「高山さんの部屋よりは片付いてますよ」
 あ、ばか、と、北田が思ったが時すでに遅く、
「あいつは頭をふる活用しているから他に気が回らないんだ、普段頭を使っていない
お前は他の事に気を使え!大体なんなんだ、あの臭いは!死体でも隠しているのか!? 」
 一気にまくしたてたのと、臭いを思い出してさらに吐き気を催し、口に手を当てて、こらえる。
「随分前に実家から“くさや”が送られて来たんすけど、あんまり臭いがきつくて食べられないんですよ、
捨てるに捨てられなくて…」
 泣きそうな大河原に二人ともため息をつく
「もう、おとなしく自分の部屋で寝てくださいよ、」
「ふっふっふっ、こうなったらお前の部屋も見てやる北田!」
 有無を言わさずに梶尾はよろめきながら一歩を踏み出した、
「いいんですか?俺の部屋になんか入って、知りませんよ、」
「あんか言ったか!」
 北田のつぶやきは大河原にもよく聞こえなかった。
 
 
「おぉ、キレイじゃんか、大河原、見習えよ」
 北田はベットに持たれ掛けさせるように梶尾を置くと、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターの
ペットボトルを開栓して渡した。
「大河原、お前、部屋を片づけに行け、」
「えっ、」
「俺はここで、もう少し飲む」
 会場では梶尾のお守りのためにほとんど飲めなかった自分と大河原のために
飲みなおそうと思ってビールを出していた北田の手が止まる。
「それって、あんまりですよぉ梶尾さーん」
 大河原の泣き言に梶尾も折れて、それ以上は言わなかった。
二人ともほっと、胸をなでおろす。二人の思いはびみょーにずれてはいたが…
 
 
 三人は、部屋の主が買い置きしていたビールを飲み尽くし、秘蔵のワインを飲み、
ウイスキーのボトルを開けて…要するに北田の部屋にある酒と呼ばれるものは全て飲み尽くしていた。
 部屋の中央に置かれている一人用のテーブルからあふれている空き缶や空き瓶を
資源ごみとして袋に詰めながら北田は酔いつぶれて床に転がっている二人を見つめて、溜息をついた。
 北田も同じほどにアルコールを取ったのに、いや、わざといつもよりも多めに飲んだはずなのに
頭の芯が冴えて酔えないことに溜息をついていた。
 いくら空調が効いているとはいえ、床に転がっていたら風邪を引くかもしれないと、
毛布を二枚引っ張り出し掛けながら、大河原は大丈夫だろうな、などと失礼なことを考えつつ、
細身のリーダーには丁寧にくるんでやった。
 カーカーと、鼾をかきながら眠る姿は、どう見ても色っぽいとか、かわいいなどと言う感じでは
ないはずなのに、自分はこの人物に惹かれてやまないことを自覚している。
 きつく睨みつけるあの瞳の強さは誰にも負けないだろう。しかし、その瞳も今は量の多い
長い睫に隠されて見えない。
 安心しきって眠っている寝顔にチリチリと、苛立ちが芽生え始めた。
 あのきつい、力強いまなざしを苦痛に歪めさせたい、快楽に乱れる姿をみてみたい、
 押し殺していた雄の欲望がキリキリと目を覚まし始める。
 ぐっすり熟睡している梶尾の両手首をつかみ、薄く開いた唇にそっと口付ける。
 初めて触れる男相手の唇は思っていたよりも柔らかく、理性の糸を切るには十分だった。
 何の反応もしないで眠り続けるその唇を割り、中に侵入し口の中を貪る。
 舌に自分のを絡めて強く吸い上げると、さすがに息苦しさに目を覚ましたようだ。
 喉の奥からくぐもった声が漏れる。
 覚醒の瞬間の驚愕したその瞳が見たくて、目を開けたままにさらにその口内を侵す。
 自分を息苦しくしているものを無意識に押しのけようとして叶わないことに梶尾の意識が覚醒する。
「むっむぅぅっ」
 あまりの近さに、相手が誰なのかわからず、なぜ自分の口が塞がれているのかもわからずに
闇雲に梶尾は足をばたつかせた。
 北田は自らの舌に噛み付かれる前に片手できつく梶尾の顎を下から鷲づかみにし、
いったん顔を離した。
 案の定、北田を目にした梶尾の瞳が大きく見開かれる。
「なっ北田、お前」
 いつもの北田と様子の違う瞳に梶尾の背筋にゾクリと寒気が走る。
 一体なんなんだ、これも破滅招来体の仕業か?前に敦子が操られたように今度は北田が?とか
いろいろなことが梶尾の頭の中を巡る。
 操られていたとしてもこんな行為に出るのはおかしいとまでは考えれなかったのだが…
 解放された手をついてずり上がると、顎をつかんでいた指がいきなり口の中に入り、口が閉じるのを拒んだ。
「なにを、はなせ、」
 回らない口でしゃべり、口に入っている手をどけようとひっぱるが、びくともせずに、そのまま押し倒された。
「梶尾さん、好きです、あなたが、」
「んがっ」
 ショックを受けて、何か言おうとしたその口に北田はまた口付けた。
 口の中をぬめぬめと動き回る感触に梶尾の全身が総毛立つ。
 思わず力を入れた歯に北田の指の感触を感じて、あわてて力を抜いた。
「気にしないで、噛んでください、なんなら、食いちぎってもかまいませんから」
「出来るか!指はパイロットの命だぞ!」
 北田には梶尾がそう言うのを分かっていた。
 梶尾は、とことん仲間を大切にしている。自分の命を代わりにしてまでも守ってくれようとするところが
あるから。自分らの怪我を本気で怒ってくれている姿を見ているから。
 涙目で自分を叱咤する梶尾を心底愛しいと思った。
 動けない梶尾をいいことに、怒りにふるえる唇を唇で何度もはさみ、顎に口付け喉元まで
唇を這わせると梶尾の喉がゴクリと上下した。
 開いているコンバーツの下に着ているTシャツを捲り上げ、胸の突起に口付ける。
もう片方を指で摘むとびくりと体を竦めて、梶尾は身をよじりだした。
「やめっ、北田!」
 ウエイトの差でいくら梶尾がもがいても北田はびくともしない、
「やめろー!」
 梶尾の大声にさすがの大河原も目を覚ました。こんな情けない姿を大河原に見られるかと思うと
恥ずかしさで爆発しそうだったが背に腹は変えられない、北田を何とかしてもらうために
大河原に助けを求めようとした。
「あー北田さん、抜け駆けはずるいですよぉ、自分もまぜてくださいぃ。」
 半分寝ぼけたような間の抜けた声に一瞬何を言ったのかと、梶尾は耳を疑った、
「大河原、大河原、まさか…よせ、」
「大河原、梶尾さんが暴れるんだ、腕を押さえてくれないか?」
 寝ぼけた状態の大河原を刺激しないように声のトーンを抑えて、北田が指示を出す。
「はーい、うわぁ梶尾さん、手首華奢ですねー力入れたら折れちゃいそう 」
「いっ、つぅーばか大河原、目を覚ませ、」
 梶尾がいたみに顔を歪めた時はさすがに北田も冷やりとしたが手近にあった手拭タオルを
器用にその手首に絡め、梶尾の頭上できつく縛り上げたときにはほっとした。
「梶尾さぁん」
 夢うつつ幸せそうな顔をして、上から梶尾の口に自分の顔を近づけていく大河原に、
梶尾は本気で引き攣り、北田もあせった。
「すまん大河原」
「悪い大河原」
 二人の声が重なって、下からのアッパーと正面からの平手突きに大河原は後ろにひっくり
返って壁に頭をぶつけ昏倒した。
「北田、きさま、ただじゃおかねーぞ!」
「はい、わかってます。でも、もう止まらないんです、止めたくない…」
切ない告白にあっけに取られた梶尾は再び口に入ってきた指に我に返った。
 縛られたままの腕で被さって来る北田を殴るけど、大河原にやったような下から突き上げるのと
上から叩くのとでは力の入り具合が違う。
 力ずくで絡み付いてくる舌に逃げるのに必死で声も出せない。ふと、北田の右手が梶尾の
ベルトにかかっていることに気がついて、喉から悲鳴じみた声が上がった。
 北田が顔を離してみると悔しさいっぱいに梶尾は目に涙を浮かべていた。
 ゾクリと北田の背中に何かが走る。
「ごめんなさい、梶尾さん、」
「いやだ、やめろー」
 ベルトを外し、ジッパーを下ろすと下着の中に手を滑り込ませ、竦んでいる梶尾自身を一気に握り締めた。
「ぁっ」
 全身をこわばらせて縮めている梶尾に再度口付けをしてゆっくりと手を動かす。
やんわり揉み扱いてみたり、先端を指で柔らかく摘んでみたりするうちに梶尾が腰を引き始めた。
「や、めろ、って、北田、頼む」
 かみ締めれない唇の変わりにきつく瞼を閉じているその両側から涙が流れ落ちている。
 北田は自分の唇をチロリと舌で舐めると、力ずくでズボンごと下着を下げ、
顔を下に埋め梶尾を口に入れた。
「ば、ばか、やめろ、」
 ねっとりと生暖かい感触が梶尾の全身を駆け巡る。舌で敏感なところをなぞられ、
ヒクリと喉がひくついた。
「放せ、やめろって、北田、やばい」
「大丈夫です、いいですよ、出してください」
「で、きるか!はな、せ」
 くわえられたまま喋られて、梶尾の体がビクビクと、引き攣る。
 無意識にかみ締めていた指から血の味がして、梶尾がわれに返った。
 強情だなと、さらにきつく吸い上げ上下に扱くと、思わず緩めていた口から甘い声が漏れ
北田の口の中に梶尾は己を解放していた。
「ばか、やろ、」
 梶尾が詰めていた分の息を大きく呼吸すると、北田はゆっくりと口を放し、
舌を伝わらせて梶尾が放ったそれをさらに奥に流した。
「な、なに、」
 力の抜けた足をかかげ、塗りつけた後ろに指を這わせると、ビクリと体を竦ませる。
「傷、つけたくないです。だから、拒まないでください」
 ぬれた舌で、下っ腹からゆっくりと舐め上げ、胸の中央を登りのど元に
きつく吸い付いた北田にゾクリとして、身動きを忘れた。
 ぬれた指がぬるりと、梶尾の中に入り込む。
「や、北田、いやだ、あっ、くぅ」
 ゆっくりと、細く節ばった長い指が根元まで入り込み中で指先が器用にうごめく。
「や、だ、」
 下を向いて、きつく目をつむりその異様な感覚に耐えていた梶尾がぴくりと動きを見せた。
「ここ、ですか?」
 感覚を頼りに先程の場所をもう一度探ってみると、驚くほどに梶尾が反応を見せた。
 子供がするいやいやの様に首をふって後ずさるが、北田は執拗にそこを攻めあげる。
 梶尾は一瞬理性を手放せば楽になれるのかと思うほどにそこは、自分ではままならない場所だった。
「ん、ぁあ、やっめ、ろ、やぁ」
 次々と、こらえきれない嬌声が上がる。跳ね上がる自分の中の荒波に涙がとまらなくなった。
先程果てた梶尾自身がもう一度形を変え始めたのを見て、ゆっくりと出し入れしながら
指を二本にふやす。
「やめ、入んねっくぅっ、」
「だめです、力抜いて、」
「無理、だ、ばか」
 梶尾を傷つけたくなくて北田は、動かすのをやめた。ガチガチに硬直している体から
力が抜けるのを待つつもりでいるのだ。
「抜け、」
「それは出来ません」
 この状態で引き抜いたとしても傷つける事に変わりはない。
 一呼吸して動けるようになった左足で、梶尾は思いっきり北田に蹴りを入れた。
 ガツンと肩にあたり、北田は少し顔を歪めたが指を離そうとはしない、逆に梶尾のほうが
泣きそうな顔で、もう一度足を振り上げた時、北田はそれを右手で受け止めた。
「そんな、辛そうな顔をしないでください」
「だったら、こんなことやめろ」
「出来ません。これで、最後にしますから、受け入れて、」
 最後の方の言葉は梶尾の口の中に消えた。ゆっくりと、味わうようにしっとりと重ねられる
切ないほどの口付けに梶尾の抵抗も降参していた。
「んっ」
 口付けを続けたままに、ゆっくりと北田の指が動きを再開する。
「んっ、あっむ、」
 口を離して逃げようとする梶尾を追いかけ口付ける。次第に競り上がる快感に
梶尾の瞳が切なく北田を見つめた。早く解放して欲しくて、北田に懇願するしかなかったのだ。
 縛り上げていた両腕を解放すると、あちこちにすがり付こうとしてもがいている手を自分に絡みつかせ、
指の変わりに北田のそれを梶尾の中に侵入させた。
 しかし、すでにはちきれんばかりになっていたものをよういに受け入れれるはずも無く、
梶尾の喉からくぐもった悲鳴があがる。
「ごめんなさい、梶尾さん、ゆるして、」
 痛みに反り返る梶尾の体を抱きしめると、ゆっくりと最奥まで押し入った。
 ヒクリと、梶尾の体が嘶く。
「梶尾さん、梶尾さん、梶尾さん」
力なくあえいでいる梶尾の体を大切に抱きしめていた北田の背に梶尾の両腕が絡まる
「早く、終われ、」
 耳元で、かすかに梶尾が囁いた。
 この人のプライドは常に空高くあるのだ、と北田は泣き笑いのような表情で梶尾に口付ける。
その口に梶尾がゆっくりと答えてきて、北田は目を見開いた。
 睨みつけるような瞳のままで、梶尾が瞼を閉じる。北田は梶尾の快感を追い立てるように
ゆっくりと梶尾を突き立てていった。
「は、あ、」
 ゆっくりと、しかし、容赦なくつき立てられて、梶尾の喉がひくつく、
「んんっ、やっ」
 うつろに開いた瞳がかわいいと思う。
「梶尾さん!」
 自分の限界を感じて、硬く息づいている梶尾のそれを握り解放へ向けて手を動かす、
「はあぁ…ぁあ」
 胸をぬらす梶尾を見て、北田も梶尾の中に自分を解放した。
 脱力した体を北田は、いつまでもいとおしそうに抱きしめていた。
 
 
 目が覚めると見慣れない感触のベットにガバリと起き上がろうとして、激しい頭痛と
下腹部に残る鈍痛にそれは叶わなかった。
 それでも頭を振って周りを見回すと、ベット脇に黙って梶尾を見つめる瞳に気がついた。
「北田!、お前!」
 自分の身に起きた事を思い出し、一気に頭に血が上って、北田を殴るべく、もう一度起き上がろうとし
叶わず、バランスを崩して、ベットから落ちそうになった所を北田に抱きとめられた。
「お願いですから、もう少し横になっていてください。」
 北田の悲しそうな表情と声が、梶尾の癇に障った。
「歯を食いしばれ!」
 顎を引いて黙った北田を懇親の力をこめて梶尾は殴りつける。
 身を引くでもなく、甘んじて梶尾の怒りを受けた北田は、そのまま崩れそうになる梶尾を抱きとめていた。
「なんで、お前はっ!」
 殴った方が、泣きそうな様子で拳をにぎりしめる。
「すみませんでした。こんなことになれば、梶尾さんを傷つけてしまうのは分かっていたのに…」
 北田は目を閉じ、俯いて歯を食いしばっている梶尾を見ないようにした。
「今期付けで、自分はエリアルベースを降ります。」
「なにっ」
 顔を上げ目を見開いている梶尾に北田はゆっくりと柔らかく笑った。
「もう、申請はしてあります、安心してください」
「きさまは、そこまでして俺を裏切るのか!」
「えっ?」
 思ってもみなかったセリフにあっけに取られた。怒りに梶尾の拳が震えている。
「この状況の中、お前は俺に、見ず知らずのヤツとチームを組めというのか!」
 まるで血を吐くのかと思うほどに、梶尾は苦しそうに叫んだ。
 違うと、そんなに梶尾を苦しめたい訳じゃないのにと、北田は、梶尾を抱きしめたくなる。
しかし、この孤高の魂の持ち主はそれを許さないだろう
「ですが、こんなヤツと一緒に、あなたは戦えますか?もしかしたらいつまた、こんなことを」
「認めない!許さない!」
 北田のセリフを梶尾が遮る。
「エリアルベースを降りることも!XIGをやめることも!チームライトニングを抜けることも!
こんなばかげた行為も!!この俺が許さない!!」
 梶尾の声の大きさに、大河原が目を覚ました。
「リーダー、北田さん、一体」
 梶尾が、ベットから降りようとしてよろめいた。支えようとした北田の手をきつく弾き飛ばす。
「梶尾さん、大丈夫ですか?」
「さわるなっ」
 ぐらついている梶尾に駆け寄った大河原は梶尾の勢いに体を竦めた。
「…悪い、お前も部屋へ帰れ、」
 一瞬部屋の入り口で立ち止まり、よろめきながら梶尾は部屋を出て行った。
 
 
「北田さん、大丈夫ですか?」
「あ?あぁ、おまえも頭のたんこぶ大丈夫か?」
 梶尾に殴られた口の端を左手首でそっとこすりながら北田は言った。
「えっ?あー、ほんとだ、いつのまに」
「冷やしといた方がいいぞ」
「そうっすね。俺も部屋に戻ります。」
 なにも聞いてこない大河原に感謝しながらその背中を見送って、
少しだけ嬉しそうに口の端を上げて溜息をついた。
「いてて、」
 口の端は切れてるし、かなり内出血をしているようだったが、北田はやっぱり
笑みを止められなかった。
 我夢に聞かれるだろう怪我の言い訳を考えつつ、今更申請の取り消しがきくのか
不安に思いながらも出勤までの短い時間の睡眠をとった。



  
  
北田×梶尾シリーズです。かなり長くなりますが、
おつきあいいただけると幸いです。