狂気と現実の狭間で・・・


アルッッ!!」
 機械仕掛けのバネのように兄がベットから跳ね起きた。
「ん?にいさん?」
 全身から汗を流し、荒く息をつく兄に隣で寝ていた弟も目を覚ます。
「アルッ!!」
 弟の声に兄ははじかれたようにその体に飛びついた。
「!」
 こんな事は初めてではない。ほぼ毎夜繰り返される哀しい行事
「!!っっっ、アルー!!」
 すがりついてくる兄の肩をきつく抱いて、金色の髪に優しく頬をすり寄せる。
「大丈夫だよ。僕はここにいるから。ね?大丈夫。」
「アル・・・」
 兄の腕が、指先が何度も確認するように弟の背中をかき抱く。
「僕はなんともないよ。にいさんが戻してくれたんじゃないか。」
 優しい瞳が、ね?と兄の瞳をのぞき込む
「アル・・・」
 今にも涙のこぼれそうな瞳に優しく唇を寄せて、そっとその涙を吸い取る
「また、怖い夢をみたの?」
「・・・」
 兄の吐き出す息がふるえた
「ゴメンね。いつまでもにいさんを苦しめて。」
「・・・大丈夫か?なんともないか?」
 体を元に戻すための旅を続けていた時とはまるで違う人物のように、弱々しく兄がつぶやく。
「なんともないよ?ちゃんとにいさんを感じてるし、匂いもわかる。」
 抱きしめた指先に力を込めて兄の体をなで上げる。
「ん・・・」
 ひくりと動いたのど元に顔をすり寄せて大きく息を吸った。
「・・・にいさんのお陰ですべての感覚を取り戻したよ。」
 のど元に優しく唇をつけて、耳の下までそっと口づける。
「あ・・・」
 兄の唇が小さく震え出す
「こんなににいさんがやわらかかったなんて、知らなかった。」
 髪の中に指を入れ、頭を支えながら耳の中に優しい言葉をそそぎこむ。
「ふ・・・ぁ」
 唇で優しく耳をはむ
「昔かいでいたにいさんの匂い。凄くなつかしい。」
「・・アル」
 弟の息の暖かさ、体を預けても揺るがない力強さに飛び跳ねていた兄の心音が緩やかさを取り戻してきた。
「・・ほんと夢みたいだ・・・」
 何気なく言った弟のたった一言で一気に地獄に突き落とされた。
「アルッ!!」
 一瞬にして体をこわばらせた兄の地雷を踏んでしまったことに気づく。
「夢じゃない!!夢じゃないだろっ!!」
 狂気を持った兄の瞳に悲しみがよみがえる。兄を苦しめ続ける自分
「これは、お前は夢じゃないんだろっ!!」
 現実につなぎ止めようと兄の指先が弟の背中に食い込む。その背中には、そうやって何度もつけられた傷が治るまもなく毎夜増えていく。
「うん、夢じゃないよ?」
 兄に与えられる苦痛に眉を寄せながら、また、弟もその肉体を実感する。
「アルッ」
「にいさん」
 すがりついてくる狂気の兄を悪夢から救えるのは弟の愛情でしか無かった。
 
 口づける。キスなんて生やさしいものではなく。お互いに存在を食べ尽くすかのごとく激しく深く。
 どんなに深く口づけても、兄の瞳は更に懇願してくる。
 差し出される舌にかみつき、歯をぶつけ合わせ、血が流れるまでむさぼり尽くす。
 兄の手が確認するように弟の両頬を包み込み、金色の瞳からは絶え間なく透明な涙を流す。
 優しくなんて出来ない。
 めちゃくちゃにして欲しいとその瞳が訴えるから、どんな弟の行為もすべて欲しいと訴えるから・・・
 あちこちに血が滲むまでかみついて、なるべくひどく兄を扱う。
 痛みを感じるほどに今このときが夢じゃないと実感出来るから。
 愛しい弟の腕の中で、離れざるおえない日常にもどる前にこのままでいたいと、死さえ望んでしまう・・・
「にいさん・・・」
 弟の手を兄が自らの首へ導く
「アル・・・」
 弟を元に戻すという目標を淘汰したというのに、何故兄は壊れてしまったのか?
 毎夜繰り広げられるこの惨事に弟の精神も引きずられそうになる。
「そんなに、苦しまないで」
 楽にしてあげたい・・・そんな感傷に飲み込まれ、手の中にある兄の首に一気に力を込める。
「く・・・は・ぁ」
 ギリギリと音を立てて兄の生命の糸を断ち切ろうと力がこもる。
「・・・」
 呼吸のかすれる音さえも出ない状況で、とても嬉しそうに兄の瞳が笑った・・
 瞬間に我に返ってその手を放す
「ひゅっ、」
 開いた口から妙な音をたてて、次の瞬間激しく兄が咳き込んだ。
「ご、ごめん、にいさん!ごめんなさい!!」
「げほっげほっげほっ」
 追いつめているのは兄の方。
「息なんて、吸わなくていい・・・お前と、離れたくない・・」
 白い首に残る鬱血のあと。嬉しそうに弟の首にすがり付く兄の体を抱きしめて、弟もまた涙を流す。
【僕がしっかりしなきゃダメだ。にいさんをこんなにしてしまったのは、僕なんだから。】
「くるしかった?ごめんね。」
「気持ち・・よかった・・・」
 とろけそうな程しあわせそうに兄が笑う。そのまま弟に口づけようとしが、弟はそれを避けて、のど元に唇を這わす。
「アル、」
 口づけが欲しくて、甘えた声を出す。
 かまわず弟はのど元に歯を立てた。
「んぁ、」
 軽い感嘆の声が上がる。
 胸の飾りを指先でつまむと細かく上半身をふるわせた。
 その小さく堅くなった先端に爪先を突き立てると痛みに体を跳ねらせる。
「は・・ぁっ」
「きもちいい?」
「ん、」
 噛みしめた唇が苦しそうにふるえた。
 のど元から唇を滑らせ、反対側の胸の飾りに小さく吸い付くと舌先で軽くつついたあと、いきなり強く歯を立てた。
「い!ああぁっ!」
 痛みと快感に体全体が跳ね上がる。
 弟の口の中には血の味が広がった。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
 痛みの中に混ざる快感を追って兄の中心が立ち上がる。
「ん、待ってね。」
 更に体を沈めると兄のもっとも敏感な部分をつまみ、それをも口に含んだ。
 次々と上がる兄の嬌声に休むことなく舌を這わせる。
 根本を指で扱き先端に舌先を潜り込ませると限界に達していたものが口内に飛び出した。
 一気に脱力した兄の手がゆっくりと弟の頭を捕まえる。
「なに?」
 自分の口からしたたる兄の体液を指先ですくい取りながら兄を見つめる。
「・・・ほしい、・・おまえ」
「ん、わかってるよ?」
 膝の裏に手をかけて、兄のvq左足を掲げると息づく秘孔に中指を突き入れた。
 毎夜の行為でなれたそこは、なんの迷いも抵抗もなく、弟の指を招き入れる。
「!!」
 一気に奥まで押し入った指を腸壁をこすりながらギリギリまで引き抜く。
 次は指を2本増やし、そのまま奥の更に奥まで突き上げる。
「うぁっ!!」
 激しく何度も突き上げる行為に入口が切れて血を流し、更に指の動きをなめらかにする。
 激しく水音のなる中、兄の両腕が弟の体を求めてのばされた。
 求められるままに、兄の体を抱きしめて、激しく口にかみついたまま、兄の体に弟自身を埋め込んだ。
 わざと激しく傷つけるように体を動かす。今の兄が求めているものは優しく包み込む真綿ではない。
 質量のある肉体が、きつい血の香りが、現実を認識できる痛みのみが兄を引き留めておけると感じるから。
「にいさん、にいさんが僕を元に戻してくれたように、僕もにいさんを元に戻してあげるから。あきらめないから。必ず!」
【絶対に負けない!にいさんの見ているその悪夢から、絶対に引きずり出してあげるから!!】    
 狂気と現実の狭間を漂っている兄の耳に果たしてその声は届いていたのか、定かではない




狂っているのは私の頭かもしれません・・・