正しい休日の取り方遊び方 2

「ちょっとまてよ、荷物じゃねーんだから、放せよ!普通に歩かせろっ」

 小脇に抱えられたままでは、人目が気になって仕方がない。
 何気ない仕草でタクシーを止め、エドワードを先に放り込む。
「いてっ」
「お姫様だっこの方がよかったかね?」
 ずいっと寄った満面の笑みにシートの上を思わず後ずさった。
 できた隙間にすかさず大佐が座り込む。
「イーストパークまでたのむ」
「へい、」
 衝撃もなくスーっとタクシーが走り出す。
「いーすとぱーく?」
「やはり知らないか?噂では花火も見たことがないと聞いたものでね。
行ったことがないんじゃないかと思って、誘ってみた。」
「なんだよそれ」
「まあ、たいしたことはない、ただの遊園地だ。」
「はぁ?」
「ここ、イーストシティの唯一のデートスポットってところかな?」
 えらくご機嫌そうな大佐の笑顔をみてエドワードの眉間に皺が寄る。
「そう、嫌そうな顔をしなくてもいいだろう?社会見学だと思ってつきあってくれたまえ。」
 眉間に渋い皺を寄せたままのエドワードを乗せ、程なくしてタクシーは遊園地の前にたどり着いた。
 
「大人一人と子供一人分の一日パスポートを」
「うおい!!」
 抗議の声をあげようとしたが、まあまあと、押し切られた。
 販売員のお姉さんもちらりとエドワードを見たが、疑問もなく子供用のパスポートを寄こし、
付け方を教えてくれる。 更に一言
「身長制限付きのものもございますので、ご了承ください。」
「誰が豆だぁー!!ふごご、はむぁふぇー」
 見境いなく飛びかかろうとするエドワードを羽交い締めにして口を押さえ、大佐が売り子さんに
お礼と笑顔を振りまいて入口に姿を消した。
「ちょっと、ちょっと、今の人、カッコよかったわよねぇーvあんなに大きい子持ちには全然見えなかったわー!」
「えー、養父なんじゃないの?」
「お稚児さんだったりして!」
「「きゃー!!」」
 …かなり盛り上がっていたりする…
 
「誰が子供だよっ!!」
「おや?違ったかね?」
「俺は15だ!!子供料金は14までだろうがっ!!」
「たいした変わらないではないか。身体的には、十分だ」
「なんだとっ、」
「ほらほら、後ろがつかえている。早く乗りたまえ。」
「えっ?うわっ」
 半ば押し込まれるように一番手近な遊具に押し込まれる。
「な、なんだこれ、」
「しっかりとシートベルトを締めてください」
 乗り物の扉がかちんと音を立てて閉められる。狭い空間に二人で閉じこめられたのだ。
「しっかりつかまっていたまえ。」
「おわっ」
 がくんっと大きな振動の後、モーター音を響かせながら、閉じこめられたカプセル状の乗り物が
どんどん上昇し始める。
 体にかかる重力がどんどん向きを変えて、真っ逆さまの状態でいったん止まった。
「ど、なっ、ちょっと、なんだこれ、」
「喋っていると、舌をかむぞ。」
 隣の大佐はやけに楽しそうに横目でエドワードを眺めている。
 パニック寸前のエドワードの表情がかなり楽しいらしい。
 いきなり体が座席に押しつけられた。
「どわぁー!!」
 登り切ったものが落ち始めたのだ。さらに、カプセル自体が横に回転しながら軸を中心に回りだした。
 すでにどこが上でどこが下なのか解らない状態である。
「ぎゃぁーーー、とめっとめっとめっ、うぎゃーーーー・・・・」
 ひとしきり悲鳴を上げたかと思ったら、途中で静かになった。
 隣からのぞいてみると、見開いた目には涙が浮かび、奥歯をぎっちり噛みしめていたのだ。
 
 
「大人2人、子供1人の一日パスポートを」
 明らかに不審そうに係員が中尉の後ろに並ぶ鎧姿のアルフォンスを見つめる。
「おいくつですか?鎧着用ではとう遊具はご使用になれませんが、」
「ぼ、僕は14才です。えと、いいです、・・・乗りませんから・・・」
「では、お子様は入場券で?」
「いいえ、パスポートで!!」
 係員のトゲのある声に、中尉がぶち切れた。
「でも、中尉、」
「遊具以外にも楽しめるところはあります!早くくださいっ!!」
「「はいぃぃ!!」」
 銃を向けそうな気配にアルフォンスまで返事をしてしまった……
 
 
 程なくして、乗り物はゆっくり止まり、カプセルの蓋があけられた。
「お疲れ様でしたー」
 係員の人がエドワードのシートベルトを外す。
「くっくっくっくっくっ、」
「お客様?」
「だ、大丈夫か?はっ、鋼のっ」
 大佐の笑いが止まらない。
 係員の声に、反応も返さず、エドワードは硬直していた。さっきの表情のままで…
「あっはっはっはっはっ!!」
 笑いの止まらない大佐に引きずり出された後、エドワードはベンチでのびた。
「した、かんら」
「くっくっくっくっくっ、だから言っただろう?どうだったね、スペースコロニーの乗り心地は」
「金出して、乗りたがるやつの気が知れねー。俺はもう乗らねーからなっ」
 巷では夏休みに入ったせいか、遊園地はかなりの家族連れでにぎわっていた。
 そんな中、近くで子供が怖いと大泣きしていた。
「鋼のも、そんなに怖かったのかね?」
「ば、か言うなっ、お子様じゃねーって。」
「じゃあ、どんどん乗ろう。時間が勿体ないぞ、多分、追っ手も近くまで来ているだろうしな。
みんなで楽しもうではないか。」
「追っ手?なんだよそれ。こんなとこに来るんなら、アルを連れてくりゃ良かったじゃんかよ。
あいつなら、多分こんなとこ好きだと思うぜ。」
 引っ張られながら喋って、更に舌をかみそうになった。
 次に乗ったのは比較的静かな乗り物だった。川の上にレールが引いてあり、4人乗りの小さいトロッコで進むのだ。
 途中登り下りがあったが、たいしたスピードも出ず、少し水をかぶっただけで一周してきた。
「さて、次は」
「あ、にいさん!」
「アル?」
 声に振り向けば、人混みの中に頭一つ飛び出した弟の姿が見えた。
「きたか、よし、次はこっちだ。」
「えっ、ちょっとまてよっ」
 合流しようとしたエドワードの手を引いて、大佐は駆けだした。




蒸気機関車しかない時代に遊園地があるわきゃないだろー!!とは、
つっこまないでくださいね。あったら、楽しいだろうなぁ、って思ったんです(汗)


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