正しい休日の取り方と遊び方 3
二本の大きな木の間に係員のお姉さんがいる。
その人にパスポートを見せながら大佐は木の奥にエドワードを引き連れて入って行った。
中はたくさんのフェンスに仕切られており、そのフェンスには蔓状の草やたくさんの花が括り付けられていて、
フェンスの向こう側が辛うじて見える状態である。
頭上に屋根はなく、青い空が晴れ渡っていた。
「何だよ、ここ。」
先ほどまでのような遊具もなく、狭い通路が続いているだけ…
物珍しげにエドワードは辺りを見回した。
通路は所々枝分かれしていてどこまでも続いており、どちらへ進めばよいかも解らない。
「ここは、順調に歩いても出口までは二時ほどかかると言われている、巨大迷路だ。」
「はぁ?何でンなとこに入るんだよ。延々と歩かなくちゃならねーってことだろ?」
「人目も気にせず、手を繋いで延々と歩けるんだ、デートには欠かせない所だろう?」
「冗談じゃねーよ。んなの、俺たちに関係ないだろ?!つきあってられるか、」
パン、と両手を合わせた。
「言っておくが、錬金術は禁止だ。迷路を崩したら、他のお客様の迷惑だろう?下手をすると出られなくなる人も
いるかもしれん。」
「んだよ、くそっ」
「すみません、20代後半で、黒髪中肉中背、金髪の少年を連れた人は入りませんでしたか?」
「お探しの方かは解りませんが、そのようなお二人は先ほど中の方へ進まれましたが。」
「ありがとう。さぁ、私たちも入るわよ」
「えっ?入るんですか?出口で待っていれば、そのうち出てくるんじゃ」
その方が確実である。
「…追っ手が来ないと判ったら、人目のないところでエドワード君に何をするかわからないわよ。」
「えっ?えぇぇっ?」
危ないって、にいさんが危ないって、そういう意味なの?!
「にぃいいぃさあぁぁん!」
「お客様ー、迷路は壊さないでくださいねー」
はたして、派手な音をまき散らしながら走り去るアルフォンスに案内嬢の言葉が届いていたかどうか?
「にぃぃさぁぁぁ… 」
「んぁ?アルの声だ。あいつもここに入ってきたのか?物好きなやつだな。」
「…いくぞ。」
「なんでだよ、どうせなら一緒に」
「ふむ、ずいぶん先に入ったのに、追いつかれでもしたら、何を言われるかわからないぞ。身長がないと、先が見渡せなくて
不利なのか?とか、コンパスが短いから、歩くのも遅いんだとか…」
この俺様なわがまま暴れん坊にそんな命知らずな暴言を吐けるモノがいるとは思えないのだが…
「うるせー!!んなことあるかっっっ!!トロトロしてるなよっ!!先に行くぜっ!」
扱いやすい、と鼻で笑った大佐の声にもエドワードは気づかなかった。
迷路の中をガシャンガシャンと鎧の大きな音が響き渡る。
ここに入ってすでに一時は過ぎていた。思ったよりも長く込み入った作りになっていて、どこを歩いているのかさえわからない。
「あぢー、壁に遮られて風も入ってこないから、無性に暑いなぁ、あー、たばこ吸いてぇ」
もちろん遊具内は禁煙である。すでに少尉はあごを出していた。
疲れも暑さも感じないアルフォンスが先に走っては行き止まりを調べてくるのだが、さっぱり進んでいるようには思えない。
たまに大佐とエドワードの姿を見つけるが、フェンスの向こう側で、手出しすることもできない。
どういう訳か、エドワードもアルフォンスの姿を見つけると走って逃げるのだ…
「にいさん、何で逃げるの?」
「逃げてなどいないさ。君たちよりも早いと言うだけだ。」
バカにした様なにやけ大佐に中尉が切れた。
「大佐、いい加減に観念してください。」
フェンス越しに中尉が銃を構える。
「やめてください!!にいさんに当たったらどうするんですかっ!」
大佐に向けて本気で発砲するはずなどないのに、条件反射でとっさにアルフォンスは銃口を上に向けた。
………青空に銃声が響き渡る………
「…っぶねぇー、」
ハボックがフェンス際で引きつった。
銃声に驚いた他のお客が、まるで蜂の巣をつついたように悲鳴を上げながらてんでバラバラに非常口を見つけては逃げ出していく。
「おぉ、観客もいなくなって静かになったな、どれ、鋼の、ここらでデートらしく、いちゃついてみないかね?」
「はぁ?誰がデートだ、ばっ、やめろ、この、放せよ。」
いきなり大佐がエドワードの両手首を捕まえて、アルフォンスたちのフェンスとは反対側に押さえつけた。
もちろん、錬金術封じのための拘束である。
「必要以上の抵抗は可愛くないぞ。」
「ばかいってんじゃねー!!はなせーっ!!」
「に、にいさん、」
ガシャンとフェンスに掴み寄るが、大佐の背中でエドワードはまるで見えない。
覆い被さる大佐に何をされているのやら。
とっさに大きめに葉を見つけ、錬成陣を書く
「やめろー!!」
「おおっと、」
フェンスを抜けて数本の蔓が大佐に向かって伸びてゆく。が、からみつく寸前で大佐が間一髪よけた。
勢いを止められない蔓は大佐の影にいたエドワードに巻き付いていた。
「ほほう、これはなかなか良い眺めだな。鋼の」
またしても大佐は楽しそうである。
「うわっ、に、にいさんっ!!」
後ろのフェンスをも巻き込んで、まさにエドワードはがんじがらめである…
「アルッ、く…くる…し」
「に、にいさん、ごめん、ごめんなさいっ」
すかさず錬成陣を書き直して蔓をもとにもどした。
「このっ!お前らなんかに、つきあってられるかっ!!」
「あっ」
っと言う間にエドワードは両手を合わせてフェンスを細いはしごに変えた。
ビヨ〜ンと伸びたはしごは大きくひのって巨大迷路の外まで続く。
あれよあれよという間にそのはしごを登ってエドワードは迷路の外へと姿を消した。
「鋼の、待ちたまえ!」
大佐が後を追ってはしごに登るが、細いはしごは大佐を支えることが出来ずにグニョリと曲がって下に落ちてきた。
「ちっさい大将だから登れたんっすね。」
つぶやいた少尉は「誰が豆だー!!」のセリフに備えて両手で頭をガードしたが、その反撃は来なかった。
………すでに声の届く範囲にはいないようである………
小さいが、破壊力の大きなお子様の放し飼いに、誰の胸にも一抹の不安がよぎった………

はぁ、やっと続きです。
豆が解き放たれました〜〜〜!さぁ、何してあーそぼっ! |
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