正しい休日の取り方と遊び方 6
「僕はやだよぉ、」
「なんでだよ!ふん・・・あ、そ、んじゃ、俺一人で行ってくらー。あっちこっち錬成して遊んでこよーっと!」
んじゃなぁ、と弟に手を振って中に入っていこうとする兄の背を弟は慌てて追った。
「だめだよ、にいさん!にいさんが錬成するとろくな事にならないんだから!!」
「なんだよ、それ!どういう意味だよ!そんなに言うんだったら、お前も一緒に来て俺を止めてみろよ。んじゃなきゃ、
俺がここのホラーハウスをもっと改造してやるぜっ」
「あ、待ってよにいさん!!一人で行かないでー!」
やかましい兄弟を少し離れたところから見ている人影があった。
「ふむ、こんな所にいたのか、楽しそうなイベントだな。鋼のの怯える顔でも覗いてみるか。あいつらは人一倍怖がりだから、
ここまで追ってはこれまい。」
大佐は案内のお姉さんに愛想を振ることを忘れずに 兄弟の姿を追って大きな古い洋館の中に入っていった。
薄暗い洋館の中は一本道ではなく色々な部屋があり、出口は一度三階まで登り切ったら反対側の階段で下りる仕組みになっている。
二階三階に上る階段はどこかの部屋にあるため、階段に出くわすためにはすべての部屋を覗いて見なければならない。
「こちらのヘットホンをおつけください。この建物の説明と音響効果がたのしめます。」
この洋館は過去に実際使われていた建物だった。
入るとまずは大きなホールが広がっていた。頭上には大きくきらびやかなシャンデリア
『ここはたくさんの貴族達が華やかな宴を催したりと社交場として使われておりました。』
突然耳にはめたトランシーバーから女性の声が流れ、昔の人が踊ったであろうワルツの曲が流れ出したかと思うと照明が薄暗くなり、
ホールに数組の貴族達が優雅にダンスを始めた。
「ひぃえぇぇぇぇー」
「なっ!!びっくりしたぁー、いきなり変な声出すんじゃねーよ!」
「だっ、だって、いきなりゆ、ゆうれいがっ」
「はぁ?あれのどこが幽霊なんだよ!よく見ろよ!スモークに映し出されたグラフィックだよっ!しっかし、お前のその姿、笑えるな!」
渡されたヘットホンを耳もないのに耳の位置に着けて、しゃがんで縮こまっているのだ。
「うるさいやい!怖いんだから、仕方ないでしょ!」
「はいはい、こんなんじゃ先が思いやられるな、はい、次行くぞ、次!」
「えぇっ、こんな所を通るの?」
「あたりまえだろ?部屋は向こうに続いているんだから」
他の部屋への入口はホールの左右と正面にあった。どのドアを通るにも、一度ダンスをしている映像の近くを通るのだ。
笑いながらダンスを続ける貴族達の横を通り抜け、まずは右のドアに手をかける。
情けない声を上げながら弟も必死に兄の後を追う。
重たいきしみ音を上げながら、ドアが開いた。
「厨房じゃん、すげっ、匂いの効果まであるぜ!うまそー!」
「そうなの?僕にはわからないなぁ」
厨房には人の姿はなかった。ヘットホンから奥のコンロの上で大きな鍋かぐつぐつと煮立つ音が聞こえてくる。
見たところ、この部屋に階段はなさそうだ。
ホールに戻ろうときびすを返したところで、いきなりガシャガシャーン!!と大音響がなった。
「ひえええぇぇっ!!」
弟が兄にすがりつく
「びっくりしたぁ!心臓に悪いぜ。・・んだよ、鍋が落ちただけじゃねーか、ほら、」
見ると、棚の一つがぱたりと倒れていて、その上に上がっていた鍋が崩れ落ちていた。
黙って見ているとそれらは数本の透明な糸で繋がっており、その糸が引かれて鍋と棚は元の位置にもどっていった。
「こった作りだなぁ」
「ふいいぃ、にいさん、もう、帰ろうよー」
「泣くなばーか、次行くぞ次!!」
ホールに戻ると、ダンスパーティはまだ行われていた。
「にいさーん、」
兄がとっとと、向かえ側(入口から見て左側)の扉に向かおうとすると、弟の情けない声に呼び止められた。
「待ってよ、行けないよぉ」
ちょうど、ダンスでターンしてきた映像が兄と弟の間に入っている。
「しょうがねーなぁ、ほらっ」
映像を踏み越えて兄が戻ってきて手を差し出した。
「怖かったら目をつぶってろよ、引っ張っていってやるから」
「う、うん、」
鎧に目をつぶれと言うのもおかしな話しである。
兄に引っ張られながらホールを横切るとドアを開ける。
中は様々な鎧や武器が並べられている部屋だった。
「なんか、アルの仲間がいっぱいって感じだな」
ほこりの積もった鎧たち。兄は楽しそうに部屋の中を見て回った。
カタカタカタカタ
「ひっ!」
兄が部屋の真ん中まで行った頃、部屋中の鎧や武器が小さく貧乏揺すりをはじめた。
ガガガガガ、ガッガン
「にいさん、危ない!!」
何かのはずれるような音がして、兄の上に何かが降ってきた、
ガシャーン!!
弟の声に慌てて振り向いた兄の視界には覆い被さってくる弟の体・・・
「・・ぃってえー・・・」
「にいさん、大丈夫?」
「大丈夫じゃねーよ、いだだだだ、ほら、よく見ろよ、」
起き上がって指さされるままに振り向けば、先ほどの厨房と同じような仕掛けで、倒れてきた大きな手斧がキリキリキリと音を立てて
元の位置にもどってゆくところだった。
「脅かすだけで、ぶつからないようになってるんだよ、ったく、お前のせいで二カ所もこぶが出来たぜ、」
ミラーハウスで押されてぶつけた額のこぶとは反対側に押し倒された時にしたたか床にぶつけた後頭部のこぶ。
「こ、ごめん、」
「ん、もう、いいよ、」
小さくなる弟にため息をつく。兄の身を案じて取った行動には間違いないし。
「けど、この作りはあぶねーよな、万が一この線が切れたら、マジで怪我するぜ。」
ほんものの刃はついていないものの、結構な重量がありそうだ。
兄は両手を合わせると、鎧の持っている手斧に手を当てた。
「これで万が一あたっても、大丈夫だろ?この部屋にも階段は無かったから、次行くぜ、次!」
楽しそうにドアを開けながら差し出してくる兄の左手に 弟は一瞬だけ怖さを忘れてしっかり握り返していた。


| ホラーハウスは書いててすっごく楽しいですvなんか長くなりそう・・・ |
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