正しい休日の取り方遊び方 

 鋼の兄弟が鎧部屋に入った頃、入口からヘットホンをつけたマスタング大佐が入ってきていた。
「これはこれは、美しいご婦人方がおそろいで。ぜひ私とも一曲踊ってはくれませんか?」
 グラフィックと一目でわかってはいたものの、つい乗りで手をさしのべてみたりした。
 あたりまえの話しだが、ご婦人は口元にほほえみをたたえたまま、大佐を素通りしてしまう。
 見ている人もいないのだが、見事にフラれた大佐は乾いた笑い声を発して、出した手を引っ込めることもかなわず、
そのまま右にある厨房部屋のドアの中に入っていった。
 ちょうどそのときに鋼兄弟が鎧部屋から仲良く手を繋いで出てきて、迷うことなく最後のドアへと入って行った。
 
「廊下だ」
『こちらはこの洋館代々の当主の肖像画が展示されております。』
 ヘットホンから説明が流れる。
 ここもさっきみたいに仕掛けがしてあるんだろうな、と身構えつつ、兄は弟の手を握ったまま歩き出した。
 隣の棟への渡り廊下なのだろう、突き当たりまで両側にドアなどは見あたらなかった。
 ただ、両側から、数メートル置きに肖像画が飾ってあるだけだ。
「に、にいさん、」
「なんだ?」
「肖像画って、こんなに怖かった?」
「怖く描いてんだろ?怖くなきゃホラーハウスの意味がねーじゃん、」
「そ、そうだよね。ひぃっ!」
「なんだ?」
 引きつった弟に足を止めてみる。
「こ、こ、こ、この絵!目、目が僕を見たっ!」
「んあ?」
 見てみると金髪の紳士が綺麗に着飾っていて、うっすらと開いた瞳は斜め下を見ていた。
「なんともねーじゃねーか、」
 怖いと思っているからそう見えるんだよ、と言ってきびすを返そうとしたとたん、肖像画の目がこれでもか!!
というくらいに大きく見開いて兄を見た。
「ひぃぃぃぃっ」
 その姿を見て弟が情けない悲鳴を上げる。
「ばっかやろう、こんなのはな、こうしてやりゃいいんだよ!!」
 止めるまもなく、肖像画の目の部分に兄の手刀が決まってしまった・・・
「にいさん、だめだよっ、アルバイトの人が怪我するよっ」
「だったらいちいち怖がるなよっ」
「だって、せっかく脅かしてくれてるんだし、少しくらいは怖がってあげないと」
 しかも、アルバイトと決めつけてるし・・・
 アルバイトの人にごめんなさいとわびを入れ、手を繋いだまま兄弟は先に進んでいった。
 いきなり降ってわいた災難に肖像画のアルバイトさんは意地でも声を出さずに、止めることの出来ない涙を流したままうつむいていた。
 
 
 廊下の突き当たりでドアに手をかけようとした時、ドアの向こう側から、「わーっ」とか、「きゃー」とか、「どひぇぇぇ」という
何とも情けない声がどんどん近づいてきていた。
「なんだ?」
 そして、ドアを開けるのと同時にドアの向こう側から何かが雪崩のように押し寄せてきた。
「にいさん!!だいじょうぶ?!」
「だ・・いじょ・・うぶじゃねぇ、ぐるじい・・・早くよけろ・・・」
 兄の上に折り重なるように乗っていた複数の人物をひょいひょいとのけるとその顔ぶれに驚いた。
「リザ中尉!ハボックさん達も、先に入っていたんですか?」
「アルフォンス君、、、、と、エドワード君」
「悪かったな、どうせ豆粒みてーにちっさくて、目ン玉の隅っこにもはいりませんでしたよー!!」
「ごめんなさいね。怪我はない?ちょっと慌てていたものだから・・・」
 みると、全員顔色が悪い。ブレタとフェリーは抱き合ってふるえていた。
「なんでもどってきたんだ?そんなに怖かったのか?」
「こ、怖かった・・・のもあるんですが、二階の階段で、」
「・・・階段でぇ?」
 階段という言葉に恐怖を感じたらしい弟が震える声で聞き返す。
「階段の窓から大佐の姿が見えたので、とっつかまえるために戻ってきたのよ。」
「んで、これ幸いとみんなして、全力疾走してかえってきたという訳だ」
「だって、めちゃくちゃ怖いんですよぉ」
 フュリーはすでに泣いている。
「だったらこんなとこに入らなけりゃいいじゃねーかよ!」
「けどね、大将。古い洋館と来れば、すこぶる美女の集まる所じゃないっすか?大佐なら、必ず顔を出すと思ったんですよ。」
 唯一頼りにされて、みなにぶら下がられ、引きずるように歩いていたのだろう、ハボック少尉はすでに疲労困憊していた。
 話しながらホールまで戻ってきた一行は、すでに慣れたグラフィックを通り越えた時、鎧部屋から激しい物音がして、
慌てて部屋のドアを開けた。
「大佐っ!!」
 鎧部屋の中央に見慣れた人物が倒れている。
「大丈夫っすか!!」
「う、っっっ」
「何だよ、大佐っ、鎧見て倒れたなんて洒落になんねーじゃん、まったく、怖がりにも程があるぜ!!」
 ハボック少尉が朦朧とする大佐を起こしてやろうと近づいた時、がたがたがたっと周りの鎧が振動しはじめた。
 みなが、あっ!!と言うまもなく、大佐を抱えて立ち上がった少尉の頭に何かが振り下ろされた・・・
 がいーん!!
「うぎっ!」
「ハボック少尉っ!」
「大佐っ!」
 あまりの衝撃に大佐を支えきれず、ハボックは大佐もろともその場に崩れた。
「うぁっ、やべっ、」
 おちてきたものは・・・
「あれ?これ、さっきと形が違うような・・・」
 フュリーのセリフにみな上を見上げ、そのままエドワードに冷たい視線を向けた。
「あ、あははははは・・・わりぃ、直しとくよ。」
 二人の後頭部を殴りつけたものは先ほど兄が錬成した張り扇だった。
 鎧の持つ斧を錬成したため鉄の張り扇になってしまっていたのだ。しかも、先が扇上に広がっているため、
斧よりも射程距離が広く、大人の頭には当たる高さになってしまっていた。
「まったく、すべて自分の身長に合わせてつくるんじゃない!」
 大佐が気がついた。この度は100%エドワードに責任があるので文句も言えない。
「ごめんなさい、」
 アルフォンスも一緒に謝った。


 さてさて、一気に人数の増えた一行は入口から戻るのかと思いきや、怖いもの見たさと、人数が増えた心強さで
ホラーハウス探検は続くのでありました。


 
   
ホラーハウス、打っている時、どことなくうすら寒いです。
ちょっとした音にビクついたりしてました。


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