正しい休日の取り方遊び方 

 鎧部屋を出た一行はもはや見慣れて怖くも何ともなくなったホールを抜け、肖像画の廊下へと足を踏み入れた。
 と、そのとき兄、エドワードの右手に触れるものがあった。
「何だ?」
 触れたものを目の高さまで持ち上げてみると、もれなくブレタ少尉がついてきた。兄の眉間に皺が寄る。
「・・・なんすか?」
「へ、へへへっ、いや、アルフォンス君が手を繋いでいたから、いいのかなぁー?と思って。へへへっ」
 確かに兄の左手にはいまだに弟の手が握られている。
「気色悪いことしてくれんなよっ!怖いんだったら、大佐に繋いで貰えばいいだろう?上司なんだから!俺の手は、アル専用なんだよっ」
 さらりと凄いことを言ってのけたのだが、いつものことで、皆気にもとめない。
「あれぇ?」
「どうしたの?フュリー曹長」
「ここの廊下、さっきより、全然怖くない気がするんですが・・・気のせいですかね?」
「人数増えたからじゃねーの?」
 皆一様に周りの肖像画を見回した。言われてみれば先ほどと雰囲気が違うのだ。
「どうちがうのだ?」
 ここが初めての大佐に違いがわからないのも無理はない。
「そういやぁ、みんなうつむいている気がするっすね。」
 そうなのだ、肖像画が全部うつむいているのだ。
「さっきなんか、手が伸びてきたりしたんですよ?絵の中から」
 フュリーがブルルッと体を震わす。
「どうしたのかしら?」
 みな不思議がる中、兄と弟が視線を合わせる。さっきの一発が効いているらしい。
肖像画役のアルバイター達は、自分に火の粉が降りかかるのを極力防いでいるのだ。仕事なんていっていられない。
 兄が、にやりと笑ってみせると、弟も肩をすくめて見せた。
 

 さて、次のドアから先は兄弟も未踏の地である。
「こっから先は、めちゃめちゃ怖いですよ?」
「何だ、お前達、ここへ入ったことがあるのか?」
「ついさっきですけどね。」
「途中で大佐を見つけて、それを理由に逃げてきたんだってよ」
「に、逃げてなんかいませんっ。任務ですっ」
 ホークアイ中尉が反論したが、声がちょっぴり裏返っていた。
 どれどれと、大佐を先頭に(押しやり)一行は階段へと出た。
 そこはえらく風通しが良く、(窓が抜けていた)石造りの古ぼけた階段がコの字型になっていた。
 外はすでに日が暮れて、窓の外はおあつらえ向きの林になっていた。
 バサバサバサッと、一行の頭上を複数の黒い影がかすめていった。
「きゃー!!」
 ホークアイがかわいらしい悲鳴を上げた。
「うわっ、中尉、お姉さんらしい声も出るんだ!」
「どういう意味ですか!それは!」
「わりいわりい、冗談だよ。」
 ホークアイは懐から出した拳銃の弾丸を本気でチェックしている。
「どうするつもりですか?」
 そんなものだして・・・と恐る恐る弟が聞く。まさか、にいさんを!とも思うが、ありえない。
「もちろん、今度来たら、すべて打ち落とすわ!」
 おいっ!とみんなでつっこむが、中尉はいたって本気である。冷静なふりして、じつはかなりパニクっているのだ。
「はいはい、これは没収。」
 兄がやんわりとその手の中から銃を取り上げた。
 ほっとしながら、階段をゆっくり上っていくと、上の方でがさがさと何かのうごめく音がした。
「やぁ、美しいお嬢さん。今一度、会いに来てくれると信じておりましたよ。」
 何ともキザったらしい声のした方を見上げると黒いマントを着た人間が逆さづりになっていた。
 テカッたオールバックに整った目鼻立ち。病的に色白で、薄くて真っ赤な唇からは長い牙が2本はみ出していた。
「大佐を見つけた直後にも居たんですよ、いきなり降りてきて、うわっ」
 半泣きのブレタ少尉が言い終わらないうちに、一見バンパイヤが身軽におりてきた。
「かわいらしいレディも連れてきて頂いて、感謝いたしますv」
 優雅に片足を後ろに引いて、中尉の前で会釈をした。
 どこにかわいらしいレディ?と、皆で顔を見合わせていたが、全員の視線が兄の所で止まった。
「誰がみぢんこ嬢ちゃんだー!!」
 あっという間に右手を刃に変えた兄を弟が両手で持ち上げる。
「にいさん、本気にしないで、」
「ここは、私にまかせるがいい」
 一歩出た大佐の右手には、いつの間に発火布ー!!
と、こちらもハボックに取り押さえられる。
「イベントッすっ!!大佐まで、マジにならないでくださいよっ」
「冗談だ」
 といいつつぱちんと鳴らした指先からとんだ火の粉がにやついたバンパイヤの左のこめかみを焦がしながらすりぬけ、
後ろのコンクリートの壁で爆発した。
 ヒクリッと引きつっているバンパイヤの横を一行は慌てて通り抜け、階段上のドアを開けた。
 

 目の前に広がるのは薄暗い墓場だった。十字の墓標が無数に立ち並ぶ。
 全員いや〜な顔をする。墓場に出てくるものといったら、おきまりである。
 ぞろりと、何かを引きずる音がして、あちこちに、ゆっくりと動き始めるぼろ雑巾。
 地の底からうめくような声を立てながらゾンビが無数に動き出した。
「い、やぁぁぁ!!」
 悲鳴と共にホークアイが二つめの銃を取り出す。
「うわわっ、やめてください!!中尉、ゲームじゃないんだから!!」
 引き金を引いたのと、アルフォンスがおさえたのは同時だった。 数発の玉が天井に当たり、数回床との間をはね回る。
この大人数の中、誰にもあたらなかったのが奇跡のようだ。
「消し炭になりたくなければ、こっちへ寄るんじゃない!」
 右手を掲げたままで、大佐の声がうわずっていたとしても、この場は誰も笑えない。みな、本気で、寄ってくるなと祈るしかなかった。
 ゾンビと軍人の団体がじりじりと一定の間合いを取ったまま移動する。
 何とかゾンビ役のアルバイトさんを焼き殺すこともなく、出口へと辿り着いた一行は、ドアを開けたところで、イヌのグラフィックに出会う。


「あら?」
 大きさはブラックハヤテ号よりも、二回りほど大きくて、灰色をしていた。
「可愛い子ね。」
 ホークアイがグラフィックに手を伸ばす。
 可愛いか?どうみたって、オオカミじゃねーか?と、皆でつっこみたい。
 後ろでドアが閉まると、うおぉぉぉぉん、と遠吠えが聞こえだした。
 先ほど出した二つ目の銃も危険だから取り上げたのだが、何となくまだ不安である。
 もはや、ホラーハウスが、別の意味で怖かった。どうすれば、負傷者をださず、器物損害させずに出られるか、必死である。
 オオカミがホークアイの横に寄り添って歩き出した。
 ここの部屋は、比較的大きくて、左右に二つドアがあった。
「うがあぁぁ!!」
 部屋を横切って、右のドアへ手をかけようとした時、先ほどのグラフィックが横の草むらに消え、そこから、口のでかい狼男が飛び出した。
 予測していたこととはいえ、その容姿と出現の仕方に皆の心臓が飛び跳ねる。
 瞬間的にハボックが大佐の右腕にぶら下がって火葬するのを食い止めた。
「うがぁぁぁ!!」
 一番手近な中尉に今にも食い付きそうに覆い被さった時だった。
「おすわりっ!!」
 厳しい声に狼男があ?と首をかしげる。
「なにをしているの!座りなさいっ!!」
 素早く上着の裾をまくったかと思うと、小さめの銃を取り出して、狼男の脇に威嚇の一発を発砲した。
一瞬にして動きを止めた狼男は、万歳のままお座りをした。
「そうよ、やれば出来るじゃない。いい子ね。」
 スリラー系にはめっぽう弱いホークアイ中尉だが、ことイヌ科になると話しは別らしい。 狼男をすっかり手懐けてしまった。
 開けようとしていたドアに手をかける。
 ヒョォーーーッと風が吹き抜けた。そこは、外だった・・・
 一応転落防止のため、全面に柵がついてはいるものの、一瞬血の気が下がる。
「あっぶねーなぁ、俺たちが後ろから全員でつっこんでりゃ、落ちてるぜ。」
 ぱん。と両手をならし、そこに壁を錬成してからドアをしめた。
 それもどうかと思うけど・・・とその場の全員が思ったが、落ちる危険性よりはましだった。
 
 最後のドアを慎重に開けると、そこは上に続く・・・はしごだった。



たのしいたのしいv打っている時はとても楽しいんですvが、読み返してみると・・・
たいしたことないですね?もう少し続きます;


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