守りたいもの
「藤宮博也、」
突如現れた未確認飛行体に青いウルトラマンが倒され、ガード国際フォーラムが破壊された。
ライフゲージを破壊され、力尽き人間体に戻った藤宮を迎えにきたのは柊准将だった。
「柊…」
「俺にお前の力を貸せ」
立ち上がる力も残っていない藤宮の体を抱えて、有無を言わせず車に連れ込んだ。
藤宮は、何度か面識のある柊を本能的に嫌っていた。
軍人特有の偉そうなものの喋り方や、全てを見下しているような態度が、特に気に入らないのだ。
「力?今更俺に何をしろというんだ。」
「おまはガードの中の最重要危険人物のリストのトップに上がっている。」
それがどうしたとでも言うように、藤宮は柊を見る事もない。車はその場を逃げるように急発進した。
「ガード内部ではお前が青いウルトラマンだということは知れている。が、ガイアが誰なのか、まではまだ知られていない。
それを調べる組織が今動き始めている。」
「…」
「人類は今、ウルトラマンを必要としている。しかし、この戦いが終った後、お前らは最重要危険人物として身柄を拘束される事は
必然だ。今は水面下で動いているガードも、総力を上げお前らを狩りだすだろう。そうなってからでは、逃げ切る事はできない。」
「…くだらない、」
「お前にとっては、そうかも知れないが、ガイアにとってそうなる事が、くだらないと言い切れるか?」
藤宮はきつい瞳で柊をにらみつける。
我夢の笑顔が藤宮の脳裏をかすめた。特別視をされ続け、疎外感に苦しみ続けていた我夢。
「ふん、お前は、XIGのある隊員と、懇意にしているそうだな。」
意味ありげなセリフに言わんとしている事がどういうことなのか理解して、藤宮は唇をかみ締めた。
「直接そちらに聞いてもいいのだが、」
「お前らは、汚い!!」
ガンッと音を立てて、藤宮はダッシュボードを殴った。
「俺に、…何をしろというんだっ!」
「俺と一緒に戦うんだ。」
「何?」
「俺には守りたいものがある。ガードの連中は全てをXIGにまかせ、まともに戦おうともしない。
事の成り行きに身を任せているだけだ。俺には我慢できない。自分の大切なものは、自分で守る!!」
「ブリッツブロッツが現れました!!」
「ライトニング、ハーキュリーズ、作戦に取り掛かれ!」
待機中のライトニングが出撃準備にはいる。
「梶尾さん!」
「なんだ!」
ファイターに乗り込む直前に梶尾は北田に呼び止められた。
大河原はすでに乗り込んでいる。この緊急時に何だ!?と、振り向けば、必死の北田の瞳にぶつかった。
「!」
そのまま、止まることなく、まっすぐに梶尾の顔に向かって北田が接近し、除けるまもなく口付けられた。
「!!、っむ」
こんな時に、何をしているんだと、怒りが爆発したが、頭を抱え込まれて避ける事もできない。
「っっっぶはっ」
力任せにひっぺがした。
「っのばか!この緊急時になにやってるんだ!!」
肩で息をして梶尾が怒鳴る。
「梶尾さん!!必ず、帰ってきてください!!」
「何?」
「無事に!」
この時北田は、言い知れない不安に襲われていた。普段出撃のときには感じない嫌な胸騒ぎ。
戻ってくるのは当たり前の事と思っていたのだが今日に限って、梶尾を放したくはなかった。恐怖が体を駆け巡る。
それが何なのかはっきりしなくて、余計に不安になった。
「…当たり前だ。お前のほうこそ」
すがり付いてくる北田の瞳に、なんとも言えず、言葉を飲み込んだ。
「大丈夫だ。必ず戻る。」
振り切るように、コックピットに向かう。北田も奥歯をかみ締めて、2号機に乗り込んだ。
(この不安は、なんなんだ!)
泣きたくなるような胸苦しさに、北田はコンバーツの胸元をきつく握り締める。
「ファイター1、スタンディングバイ!」
「ファイター2、スタンディングバイ!」
「ファイター3、スタンディングバイ!」
「ライトニング、発進!!」
北田の声が、震えていたのに、梶尾は気がついた。
「行くぞ、気を引き締めろっ」
発進してからも、無線で喝を入れる。
未確認生命体は前に青いウルトラマンを倒したことのある、ブリッツブロッツと名づけられたやつだ。
今までの怪獣とは違い、高い知能を持っているように見られる。前回の戦いを教訓に、作戦が立てられていた。
ライトニングの空からの攻撃に気を取られている隙に地上からのハーキュリーズの砲撃が炸裂する。
隙間無い砲撃にいらだった怪獣が、旋回してきたライトニングめがけて飛び上がり、梶尾のファイターSSを力任せに殴りつけた。
機体が激しく損傷し、炎をあげながら、急降下していく。
『梶尾さん!!』
北田と大河原の絶叫が響く。その後ファイターSG二機も、後ろからの攻撃を避けきれず着弾し、急降下していった。
「ライトニング全機撃墜されました!!」
「なにっ!」
コマンドルームに衝撃が走る
「北田機、大河原機、不時着に成功。」
ジョジーの冷静な声には、2名の名前しか上らない。
「梶尾はっ!」
コマンダーが怒鳴る
「応答…ありません」
敦子が消え入りそうな声で返答した。
「梶尾さん、梶尾さん!」
不時着したファイター2号機から北田がはい出して、梶尾の墜落した場所めがけて歩き出した。
しかし、歩いて行くには、距離がありすぎる。それでも北田は、体を引きずりながら、歩きを止めなかった。
隊長機の機体から立ち上る真っ黒い煙を頼りに…
「俺たちだけで、がんばるぞっ」
「おうっ」
ハーキュリーズのスティンガーの砲撃が、激しくなる。
その時、激しい振動が一面辺りに響き渡り地底怪獣が姿を現した。
「なぜあいつがここに…」
車からバズーカを降ろした柊が地底怪獣ティグリスの出現に言葉を失った。
「あいつにはあいつのするべき事があるんだ。」
柊の質問に藤宮が答える。
ティグリスは必死に戦っていた。
ブリッツブロッツに殴られても蹴られても怯むことなく噛み付いていく。が、力任せに一本の角を折られ、
痛みに思わず口を離し激しく咆哮を上げた。
「怪獣が!何を守るというんだ!!」
持っていたバズーカを掲げると、柊はブリッツブロッツの目に標準を合わせ打ち込んだ。
それは見事に的中し、ブリッツブロッツが痛みにのた打ち回る。
ティグリスの瞳が、庇ってくれた柊を見つめた。
その時、ファイターEXが二人の上空を飛んでいった。
「我夢…」
EXは上空を旋回し始めた。
突如現れたガイアがブリッツブロッツに飛び掛る。
スティンガーが、ガイアの援護にまわる。
しかし、ブリッツブロッツの戦闘能力はガイアを上回っていた。
ガイアの放った攻撃が全て返される。
吹き飛ばされたガイアにブリッツブロッツがとどめを刺そうとしたその時、ティグリスが咆哮を上げ全力でブリッツブロッツに体当たりをした。
残っている片方の角がブリッツブロッツのわき腹に刺さった。
たまらずブリッツブロッツはティグリスに向き直り、激しく攻撃を加えた。
その隙を付いて、ガイアが立ち上がる。
今までの攻撃をすべて吸収していたブリッツブロッツのエネルギータンクが隙間無い攻撃に耐えかね、容量オーバーで破裂した。
「いまだ!」
藤宮が叫ぶ
「打て!ガイア!!」
押し殺した声で柊が言う
懇親の力を込めたガイアの必殺技が炸裂し、ブリッツブロッツは粉々に飛び散った。
梶尾は、草むらを必死に歩いていた。
「…俺は…こ…んなところで…」
火を噴くファイターSS機から、何とか抜け出し、少しでも離れようとしていた。
燃料タンクに火が付けば、激しい爆発が起きるはずである。
「…死ぬわけにはっ、いかないんだ!!」
激痛が体全身を駆け巡る。引きずる左足にはすでに感覚がない。片腕は焼けるように熱く、指先を動かすだけで
口から悲鳴が上がるほど激痛が走った。
「約束、…したんだ、戻ると、」
息を吸うたびに、脇腹から胸、背中に痛みが走る。肋骨もいっているな…と、かすむ頭で考えた。
突然、後ろで激しい爆発が起こった。衝撃に梶尾の体が吹き飛ばされる。
「うっくぅ」
激しく体を打ち付けたが、下が草藁だったために何とか助かったようだった。が、それ以上体は動かなかった。
(誰かに必要とされると、簡単には死ねなくなりますよね。)
我夢の言葉が蘇る。
「…北…田…」
無意識に、その名を口にしていた。
「梶尾さん、梶尾さーん!」
北田は梶尾のSS機の残骸が見えるところまで来ていた。
SS機はかなりの勢いで火を吹いている。もしあの中にまだ居たとすれば助かる見込みはない。
出撃前の胸騒ぎが、胸を締め付ける…
北田は必死で叫びながらSS機に向かっていく。途中にぼろぼろのヘルメットが落ちているのを見つけた。
「梶尾さん!梶尾さん!!梶尾さん!」
ヘルメットがあるということは脱出しているはず。北田は痛む足も気にせず辺りを走り回る。梶尾の気配を探して、
「梶尾さん、梶尾さん!!」
視界の端にボロ布のようになって横たわっている梶尾を見つけ、駈け寄り抱き起こした。
揺さぶり、悲鳴のような声で梶尾を呼び続ける。
「き、ただ…」
ゆっくり梶尾が瞳を開けた。
「梶尾さん!」
夢中で梶尾の体を掻き抱くと、北田は声を上げて泣き出した。
「梶尾さん…梶尾さん」
(俺は、生きているのになんでそんなに泣くんだ?もし俺が死んだらおまえは、一体どうなってしまうんだ…)
壊れたように、梶尾の名前を呼びながら泣き続ける北田に梶尾はぼんやりとそんな事を考えていた…
「か、梶尾さん?梶尾さん!なんで?!梶尾さん!!目を開けてください!起きてっ梶尾さん!!」
抱いていた梶尾の体からすうっと魂が抜けるように力が抜け、北田の腕の中に崩れた。
北田が全霊をこめて、梶尾を呼び戻そうとする。
「北田さん、落ち着いて!!」
叫び続ける北田をシーガルでたどり着いた神山が押さえつけた。マイクルに後ろから羽交い絞めにされ、
北田の腕から梶尾が引き剥がされる。
まるで人形のように力なく横たえられる梶尾を北田は体中の血が凍っていくような感覚で見詰めた。
神山が梶尾の首に指をあて脈を見る。体を点検する神山の動きが、まるでスロウモーションのように見えた。
「マイクル、北田隊員の手当てを」
神山の低い静かな声音に北田が我に返り、マイクルの腕を振り解こうとあばれた。
「前にも言ったじゃないですか、梶尾さんは、思ったよりも頑丈に出来ているみたいだって、」
振り返って神山が微笑む。
「大丈夫ですよ。脈もしっかりしているし、血圧も安定しています。きっと、あなたに会えて、安心したんでしょう。
気を失っているだけです。」
シーガルから下ろされた担架に乗せられる梶尾を見て、力の抜けた北田も、安心して意識を手放していた。
「二人ともこれだけの怪我をして、よくここまで来れましたね。」
北田の体を担ぎ上げるマイクルに松尾が声をかける。
「そうだな。」
「それにしても、よかったですね。」
しみじみと言う松尾の言葉に二人ともああと、やさしく頷いた。
ティグリスは、ブリッツブロッツからの最後の攻撃を受けた後、立ったまま死んでいった。
「勇敢なる戦友に敬礼!」
柊の声が夕日に照らされるティグリスへ向けられる。
藤宮の所に戻ってきていた我夢も一緒に敬礼する。
「…死ぬまで頑張らなくても、良かったのに…」
辛そうにつぶやく我夢に、藤宮が声をかけた。
「あいつが命を掛けてまで守りたかったものが何なのか、解かるか?」
やさしい声に我夢が藤宮に視線を向ける。
「お前だ、我夢」
柊も藤宮に視線を向けた。
「そんな、なんで、なんで僕なんか?」
「お前は地底怪獣にいつもやさしかった。俺がゾンネルを傷つけたときも、地底に戻してやったのはお前だ。
暴れ出したシャザクの気持ちを理解したのもお前だ。お前はいつも怪獣にやさしく接していた。」
柊が、目を見開いた。
「ガイア、」
柊の薄い唇が、その名を呟く。視線が、ゆっくりと我夢に向けられた。
我夢は視線を藤宮から離さない。
「俺がブリッツブロッツと戦ったとき、やつは出てこなかった。しかし、お前が対峙しなければならないとき、あいつは現れた。
たぶん、地底怪獣全てが、同じ想いだと思う。
もし、ティグリスが倒れた後もブリッツブロッツを倒せていなければ、次の地底怪獣が出てきていただろう。」
やつらは、…お前を守りたかったんだ。我夢
「そんな…それなら!それならなおさら、死んでなんて、欲しくなかった!僕にどれほどの価値があるって言うんだ、
怪獣だって、そんなに簡単に死んでいいわけないんだ!」
血を吐くように叫ぶ我夢の顔が悲痛に歪む。怪獣の想いを知らなければ、我夢はこんなに苦しむ必要はなかったのだが、
藤宮には今あえてそれを言わなければならない理由があった。
「この戦いが終った後、もしも我夢に何かしたら、お前ら人間は、すべての地底怪獣と俺を 敵にまわすと思え…」
「ふ、藤宮?」
話の展開に付いていけないで、我夢が戸惑う。
藤宮が、柊を睨み付けた。
柊は拳を握り締め踵を返し、車に乗り込んだ。
ウルトラマンガイア、奥が深い特撮ものでした。
同人要素てんこ盛り。素敵な男の子てんこ盛り。アニメ以外で萌えた初めての番組でした。
続きのファイルどこやったかな?あれ?
|