芽生え
今日は朝から雨が降っている。
もう、まともに食事を取れなくなってから何日が過ぎただろう・・・
お腹が空いて眠れない。
食事を取ろうとすると怪物が現れて邪魔をする。
鏡がないから自分は良くわからないけど、にいさんの頬はかなりこけてきた。
木のうろに溜まった雨水で顔を洗うと、怪物に殴られた頬がズキズキと痛んだ。
体中青あざだらけだ。
「う〜ん、・・・アル?」
「おはよう、にいさん、」
「ずいぶん暗いけど、もう朝か?」
「結構な雨が降ってるよ。昨日屋根を作っておいて、良かったよね。」
洞窟に雨水が入り込まないように、入口に昨日一日かけて、木の枝や蔓に大きめの葉っぱを何枚も絡めて屋根を作ったんだ。
「いってててて、」
起き上がったにいさんもあちこち打撲だらけだ。
「今のうちに雨を浴びてきたら?こんな朝早くなら、あいつも来ないだろうし。」
「そうだな。」
海に入ってばかりだったから、髪も体中も塩が付いてガビガビになっていた。
にいさんが雨のシャワーを浴びている間に僕は近くで蛙を探す。
雨の日は比較的大きな蛙の姿が見られた。大きな蛙は動作が鈍くて、つかまえやすいんだけど、
殺す時の抵抗が大きくてたまらない・・・
「ごめん、」
何度も謝って、何度も誓う。無意味なことは絶対にしないから。君の命のありがたさを胸に刻むから。
たき火にくべて焼き始めると、にいさんが体を拭きながら戻ってきた。
ここ数日で明らかにやせた体。
「ごめんな、やらせて。」
にいさんも、命の大切さを学んだ。生きていくために殺さなければならない命がそこにあることを・・・
「うん、風邪を引かないうちに髪を拭いて。もうすぐ焼けるから」
「あぁ、」
雨音と、パチパチという薪の焼ける音だけが僕たちの周りに響く
「雨がやんだら、キノコを探しにいこうよ」
「そうだな。」
焼けた蛙を半分に割って、隣に座ったにいさんに渡す。
調味料なんかなくても、貴重な命はとても美味しかった。
「なかなかないね?」
「明らかに食えなさそうなーのなら、あるんだけどなぁ、」
昼過ぎには雨も上がり、太陽に照らされて、濡れた森が蒸し蒸しと湯気を立て始めた。
寒くはないが、ヤブ蚊なんかが多くてうるさい。
こんなに小さい虫も栄養を採るために命がけなんだ。
何個か色々なキノコを採って見たけれど、果たして食用にできるのがあるのだろうか・・・
匂いを嗅いだりしてみたけれど、さっぱりわからない
「しょーがねぇ、一個ずつ焼いてくってみるしかねーな。」
帰ろうかと立ち上がった時、全身の毛が逆立つほどの殺気を感じて僕とにいさんはその場をはね避けた。
避け損ねたキノコを入れていた葉っぱのかごが宙に舞う。
『ごがあぁぁ!!』
咆哮と共に僕たちがいたところに棍棒が打ち下ろされる。
『ふしゅ〜〜〜っ』
息を吐き出しながら僕たちをぐるりと見回した怪物は、飛び散ったキノコを見つけて、中の一つを手に取り、口に入れた。
「このやろぉ〜!!」
跳び蹴りを食らわせるにいさんを腕で一払いすると、怪物はさっき食べたキノコと同じ物だけを口に入れて、むしゃむしゃと食べ尽くした。
『うおおぉぉ〜!』
「うわっ、」
「ていっ、」
だいぶ棍棒の直撃は避けられるようにはなってきたものの、いまだに相手には致命的なダメージを一つも与えることはできない。
朝から蛙一匹しか食べていない体はすぐに疲労でうごかなくなる。
「アルッ!!」
気づいた時には息もつけない衝撃が腹に当たって、僕の体は激しく吹き飛ばされていた。
一瞬目の前が暗くなり、気が付いた時には目の前に棍棒が振り下ろされる瞬間だった。
「やめろぉ〜!!」
僕の視界がにいさんの背中で塞がる。鈍い殴打の音がした。
「に、にいさん・・・」
にいさんが両腕を顔の前でクロスに組んで振り下ろされた怪物の棍棒を受け止めていた。
ぎりぎりぎりと、にいさんの体がきしむ。
『ふしゅ〜』
二人の間でしばらくにらみ合いが続いたが、やがて怪物は棍棒を持ち上げて、にいさんから離れた。
油断なく睨んでいると、怪物はすっかり戦意をなくしたかのようにこちらには見向きもしないで、寄ってくる虫を手で祓いながら、手近のくさを手でちぎると、2、3回口で咬んで、草の汁を肌に塗りつけた。
とたんに見た目にもわかるほど虫が怪物の周りにいなくなったのだ。
僕たちは、怪物がいなくなるのをじっと見ていた。
「大丈夫か!!アルッ!!」
「う、うん、にいさんこそ、腕は?」
「いてーけど、大丈夫だ、それより見たか?」
「うん、」
にいさんは、両腕をぶらりと下ろしてからちょっと振って、さっき怪物がちぎって咬んだ草の葉を手に取ってみた。
「香草だ。虫が嫌う匂いなんだな。」
新たな葉っぱを咬むと、その葉をにいさんは自分の腕に塗ってから、僕の腕にも塗ってくれた。
「この種類のキノコは食べれらるみたいだよ。」
食べ残された歯形の付いたキノコを僕が拾ってにいさんに見せた。
「何を考えているのかいまいちわからねーヤツだよな。」
僕たちは、食べられるキノコと、たくさんの虫除け草を摘んで帰った。
夕方にキノコをたらふく焼いて食べて、その後、虫除けの葉っぱを石で潰して体に塗った。
塗ったところがひんやりしたから、怪物に殴られた後の打撲にも塗っておいた。
太陽が落ちてくると、蒸発しきれなかった雨水が冷えて、僕たちの体温を奪ってゆく。
塗った香草が湿布のような効果で体中が余計寒くなってカチカチと歯の根が震えた。
「アルッ、こ、こっちこいよ!」
「う、うん、」
にいさんも震えるあごで僕を呼ぶ。
ここに来て、寒い夜は抱き合って眠ると温かいと言うことに気が付いた。
大きい葉っぱを蔓でつなげて掛け布団にする。たき火に虫除け草をくべたら、虫がまるっきり来なくなった。
「キノコでは、あまりお腹はふくれないけど、虫がいなくなったお陰で、今晩はゆっくり眠れそうだね。」
「あぁ」
腕の中でにいさんはすでに眠りに落ちかけていた。
この小さな体のどこに、あれほどの強さがあるんだろう。
怪物の攻撃を受け止めてなお、その戦意をなくさせるほどの気力。
小さな寝息を立て始めた兄の腕をそっと持ち上げてみた。
棍棒を受け止めた時の内出血が腕の内側に大きく広がっている。
無意識に、僕はその腕に口づけていた。
「う、、、ん、」
感触ににいさんがうごめいた。慌てて腕を元の位置に戻してあげる。
起きる気配はないみたいだ。
近くにある、その頬にも擦り傷が幾多にも重なって付いている。
そっと舐めてみた。
つーんとした虫除けの香草の匂いがする。
もぞもぞと動いて、にいさんは僕が舐めた頬を手でこすっていた。その仕草が可愛くて、思わずくすりと、笑ってしまう。
傷だらけの僕の天使
思わずあちこちにキスをしたくなってしまった・・・
今度は僕がにいさんを助けられるように頑張るから・・・
翌日
「あれ?なぁ、やっぱあの草、効かないんじゃねーか?」
顔を洗い終えたにいさんが首をこすりなから言った。
「なんで?」
「ここ、赤くなってねぇ?顔を洗っている時に水に写ってたんだけど・・・」
わはは、
「にいさんよりも大きな虫がいたんじゃない?」
「んなものいるかーーー!!誰がみぢんこどちびかぁーーー!!」
アルエド天使祭り2の主催者様のくーりんさんより、駄文「芽生え」のイメージイラストを頂きましたv
う、うちの弟兄(アルエド)をこんなに可愛らしくイメージして下さいまして、ありがとうございますvv
感謝ですv
イメージイラストはこちら→←クリック
アルエド天使祭り2開催おめでさうございますv
うちのサイトの兄弟は、天使と呼ぶにはデンジャラス過ぎると思われますが、受け取ってください(*^_^*)