績 罪 3


 兄の態度は変わらなかった…
 しかし、例の件がすぎてから一週間も経とうとした頃から、兄の行動に異変を覚えた。
 眠らない…確かに調べることがたくさんあって、今までも睡眠時間が少ない事はあった。
 が、それは手がかりを見つけた時や、時間のない時、集中した場合のみだったから、
その期間が過ぎれば兄は爆睡をして充電した物だった。
 今はそれほど重要な手がかりもなかったはずなのに、兄は眠らない。
 あの事件の前から、うなされていて熟睡していなかったから、もう2,3週間はまともな睡眠時間は
取れていないはずである…
 
 何故だろう?
 
 今までの弟なら、ここまで来る前に何が何でも休養を取らせたと思うのだが、
今の兄は眠ることを極端に怖がっているように見えて仕方がない。
いろいろな理屈をこねて長い睡眠を取ろうとしないのだ。
 あの悪夢のせいなんだろうか?自分の出てくる悪夢のせいで兄は眠ることができないのだろうか?
 
もう一つ気になることがある。
 実の兄の濡れ場を目撃したためなのか、兄の姿が気になって仕方がない。
 調べ物をしている時の後ろ姿、三つ編みの隙間から見えるうなじ
 人と話をする時の横顔
 先を歩く時の姿勢
 振り向いた時のちょっと困った顔
 自分を呼ぶ時の少し甘えたような声、口元
 意志の強そうな金の瞳、だけど、それは自分を見る時だけ優しい色に変わる

 兄のパーツすべてが、愛おしい…
 愛おしいのだ
 兄に害なす、すべての物から守りたい…
 傷つけるすべての物から遠ざけたい…
 この両腕で抱きしめたい…
 
 ぞくりと鎧の内側に寒気が走った…
 兄を苦しめている一番の存在は………自分………



 
 
 今まで弟とはずいぶん触れあって、時には傷つけあったりもしてきたはずなのに、
あの時に捕まれた左腕がいまだにじんじんと甘い痛みを訴える…
 あの状況で、怒りにまかせた弟の指が自分の腕に食い込んだ時でさえ、ゾクゾクと全身をふるえが走った。
 そのまま引きずり倒されて、組み敷かれたいと涙がでそうなほど願った…
 
 …つくづく、俺は腐っている…
 
「にいさん、」
 びくりと全身がこわばった。
「もう、横になったら?」
 小さく静かな声がする。
あれ以来、弟の様子がおかしい、
 あたりまえだろ?実の兄のあんな姿を目撃しちまったんだ。今まで通りになんて、あるはずがない。
「効率が悪いよ、少し休んでから続けたら?」
まるで腫れ物に触るように喋っている。
 実際、いすに座り込んで何時間経ったのだろう。この頃は腹も空かない。
引きずり込まれそうな闇にいつもあらがっているだけ…
「すこし、な」
 立ち上がり、二、三歩横のベットに倒れ込む。ここまで来るともう夢も見なくてすむだろう。
「僕は、少し出てくるから、ゆっくり休んだ方がいいよ。」
「!」
 いきなりの発言に驚いた。
弟は眠ることがない。だから、兄が寝入ったら、はっきり言ってやることがない。
が、しかし、今まで寝入る兄を一人にしたことはなかったのだ。
突然、何故?

 弟は、兄が夢でうなされていることを知っている。ただ、夢の内容までは辛うじて、ばれてはいない
弟がいない今なら、夢の中で思いっきり弟に甘えても誰も気づきはしないだろう。
 ただ、今寝入って、果たして夢を見られるか…
 
 



「あれ?鎧のにいさん、いつの間にでかけられたんすか?」
「え?」
 弟が帰ってきたのは兄を置いて出かけてから5時間はたったころだった。
 
 



「にいさん、にいさん、」
「ん、」
 一気に眠ったので時間の感覚がわからない…
しかし、弟が起こすと言うことは、何かあったか、かなり時間が経ったかのどちらかだろう。
「…どうした?」
「疲れてるね。」
 確かに眠り足りない、と思う。体がだるかった。
「そんなに無理しなくてもいんじゃない?」
「…おまえ、」
 一言で気が付いた。
「さすがだね。そう、やっぱり会いたくて、来ちゃったよ。にいさん。」
「やめろっ、お前が兄と呼ぶな」
「ひどいなぁ、傷つくよ、そんなこと言われちゃ」
 目の前で、鎧の弟が真っ黒な長い髪の少年に変わる
「…あの時は…利用して悪かった。」
「かまわないよぉ、お互い様だしね。やっと、あの用心棒が離れてくれたんだからさ、また、」
「もうしない!」

きっぱりと言い切った兄に、目の前の少年の表情が消える。
「アルと約束した。あんなのは、ただの誤魔化しにしかすぎなかったんだ。
俺はあいつを裏切ることは出来ない。…悪かった。」
「……ふぅ〜ん、弟君に操立て?」
 にやりと底冷えのにする微笑を見せる。
兄の本能が警戒音を鳴らしていた
「あいつをあんな体にしたのは俺なんだ。…裏切れない。」
「…なんか、ムカつくなぁ、あんなに淫乱に弟にすがりついていながら、
今更聖人君子づら?出来るわけないじゃん、」
 くっくっくっと喉の奥で笑い、音も立てずに黒髪の少年が人型の弟に変わる。
「やめろっ!」
 優しいはずの弟の笑顔が見たこともない残忍な笑いに変わる。
 後ずさった兄に飛びかかり、全身を乗りあげ、手足を押さえつける。
「嫌なら、もっと抵抗してみなよ、に・い・さ・ん」
 両手首を掴み輪を作らないように両腕を後ろに回し、手の平が合わせられないように
ベルトでぎっちりと縛り上げた。
「おちびちゃんはこれさえ防げば楽勝だもんね。」
 目の前で懐かしい人型の弟が黒髪の少年に戻る。

「な、放せっこのっ」
 元の姿にもどったことで、やっと兄が我に返ったが、両腕が使えないままでは
容易に立ち上がることも出来ない。
「口では嫌だって言ってるくせに、弟の姿になると抵抗しなくなるんだから、笑わせるよね。
すっげーむかつくから、このままでしてやるよ。」
声のトーンが一気に変わった。
「やめろっ!」
「騒ぐと外に聞こえるよ。僕はかまわないけどね。
そういえば、まだ自己紹介していなかったよね。僕の名前はエンヴィー、
嫉妬って意味さ。
名前の通りものすごく嫉妬深いんだよね。あの、でくの坊な弟のことしか考えないおちびちゃんに
マジむかつく。」
 口元は笑っているのに目が怒りの色をあらわにしていた。
 何とか上半身を起こし、足だけで後ずさる。
「いいもの見つけた!これをしていたら、力一杯声を上げても大丈夫だよ。」
 昼間、弟が洗って干したタオルがベットの縁にかかっていた。
 エンヴィーが楽しそうにそれを手に取ると、兄の表情がこわばった。
 腕をほどこうと必死になっていて、黒髪の少年の動きに一歩出遅れたのだ。
 全身をはねらせ、ベットから逃れようとした兄の顔にタオルが掛かる。

 逃げる獲物と襲いかかる獣


「そんなに、本気で逃げなくてもいいじゃん、ま、その方がこっちは楽しいけどね。
心底楽しそうにつぶやく口元からはこらえきれない笑いがこぼれる。
 きつく巻かれたタオルが 兄の口に食い込んだ。
「キスできなくて、ちょっと残念だけど、しかたないよね。」
 にやりと笑ったまま、そむける兄のあごを捕まえてタオルの上からかすめる程度に口づけた。
「いいじゃん、楽しんじゃいなって、」
 
自分は一体どのくらい眠っていたのか、
今にでも弟がそのドアを開けて帰ってくるのではないか?
その思いだけで兄は気が気ではなかった。
 エンヴィーの指が上着の襟止めをはずし、あらわになった肩に唇を這わせ、細い指が襟から首筋をなで上げる。
「むう、うぐぐっ」
 身をよじって声を出すが、案の定、声はタオルに吸収されてくぐもった音にしかならない。
 ひやりとする指先が鎖骨を滑り、肩から腕を舐めるように撫でると背筋を鳥肌のような物が駆けめぐり、
全身が固まった。
「結構、感度いいんだよね。」
心底楽しそうな声を出す。
ゆっくりと尖った舌先がのど元を舐め上げると、兄がきゅっと息をのんだ
その隙に、前の金具をはずし、ズボンにするりと手を忍び込ませる。
「は、あぅ、んむぅ」
体をよじり、腰を引いて拒むが逃げ切ることが出来ない
「なんだ、嫌がっている割には体はちゃんと反応しているよ?ほら、」
「んー!」
 先端を指先でくるりとつままれ、目の前に火花が散った。
「体は正直だね、誰かさんと違ってさ。
この前はもっと素直だったじゃない、そんなに弟が怖いの?」
 濡れてきた先端を水音がするまでこね回す。
兄の体が小刻みに震えだした。
「このまま、弟が帰ってくるまで待っていようか?」
 刺激と不安に涙を浮かばせる金の瞳をのぞき込みながら、空恐ろしいことを口にする。
「いいじゃん、そしたら三人でしようよ、きっと楽しいよ?」
 この場面に弟が入ってきたらどうなるのだろう。
前例があるから、これも同意の上だと勘違いされるに決まっている。
この前のことで明らかに態度の変わってしまった弟に、これはとどめを刺すだろう。
一気に血の気が引いてゆく。
「そのときは、僕も弟になってあげるよ。ねぇ、にいさん、」

 
 


 ここの宿屋は出入をする時、必ず主人の仕事場の前を通るのだ。
出入りする人間を管理するためでもあるから、出かける時は必ず声をかけなければならない。
 その主人がおかしな事を口走った。
「いつの間にでていったんすか?さっき帰ってきましたよね。アレ?見落としてたかな?」
弟が出かけたのはもうずいぶん前だ。むろん、途中で帰ってきてなどいない。
「おっかしいな、そんなにでかいなりしてるんだから、見落とすはずは、」
しきりに首をかしげる主人を無視して、階段を駆け上った
「にいさん!!」
 考えられることは一つしかない、偽物の自分がここを通ったのだ…





  
縛り…に、なってますかねぇ。
私としてはこの兄は完璧にM入っていると思うんですね。
もっと嫌がれよ、楽しくないだろぉーってな感じですかね。あぁ、 誰か私に文才を下さい…


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