しあわせの行方

 ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、
 にいさんの息づかいが荒い
「にいさん、少し休もうよ、ね、」
 もう何度目かの僕の台詞
「いい、って、言ってるだろ」
「だって、昨日も一日歩きっぱなしで、たいした休みも取らずらに。今日なんて、今期の最高気温を
更新してるんだよ、休まないと熱中症になっちゃうよ!」
「次の町で、重要な手がかりがつかめそうなんだ、ゆっくりなんかしてられるか!!」
 にいさんは僕の体を治すことを何より最優先してくれる。
 時には信じられない無茶まで平気でおかそうとする…
 それは今回だけじゃないし、その気持ちが嬉しいけど、でも!!
「だからって、そんなに無理をしていたら、本当に死んじゃうんだよ、にいさんは生身の体なんだから!
次の町までもう少しだから、少し日陰で休んで涼しくなってから歩こうよ。」
 にいさんの足下がかなりふらついていて、言った傍から地面の小さな突起に蹴躓き、
前のめりにつんのめった。
「言わないこっちゃ無いよ、効率も悪いし、ほら、」
 よろつく体を支えて、木陰へ促す。
「…悪いな、アル」
「にいさんのばか」
 座らせて、冷えた水の入った水筒の口を開けてあげる。
 
「…暑いなぁ、」
 額に脂汗が浮かんでいる。
 まったく、無茶ばかりするんだから…
「ちょっと休んだら、すぐに出発するから、少しだけ待っててくれよな。」
 にいさんは、あの日から、ずーっと僕に罪悪感を持ち続けている…
 …にいさんだけせいじゃないのに…
 

 僕もにいさんの隣に座って木により掛かった。
 不意に、にいさんの手が僕の手に重なる。肩に、コトンと頭が乗ってきた。
「…いいなぁお前は、すぐに体が冷えて、」
 金属の僕は、日に当たるとすぐに熱くなるけど、木陰に入るとすぐに冷たくなるんだ。
 にいさんはきっと体がかなり熱いんだろう…
「にいさん、こっちにおいでよ」
 ひょいと抱きかかえて、僕の正面ににいさんを座らせる。小さい体はすっぽりと僕の胸に納まった。
「くっついていなよ、そのほうが涼しいでしょ?」
「あぁ」
 端から見ると、異様な光景かも知れない…
 この炎天下、全身鎧を着込んでいること自体、普通は考えられないのに、その鎧が木陰に座り込んで
少年を抱いて休んでいるんだから…
「あははは、」
「…、何笑ってんだ?」
「なんでもないよ、」
 こんな変なことでも、僕にとっては凄い幸せだって事、にいさんは知らないんだろうな。
 にいさんは早く僕の体を元に戻そうと必死になっているけど、僕にはそれが大きな
不安要素でもあるって事、解らないだろうね、
 
 
 僕の胸に寄りかかって、すうすうと小さな寝息を立て始めたにいさん。
 僕は、にいさんと一緒にいられて、とっても幸せなんだ。けど、この体が元に戻ったら、
そこから先はこうして一緒に旅をすることも無いんだろう…
 にいさんは今まで出来なかった自分のしたいことを見つけて、僕とは別の人生を歩いていく
 そのうち、かわいいお嫁さんをもらって、かわいい子供達に囲まれて暮らしていくんだ。
 お嫁さんは、もしかしたらウィンリィかもしれない。彼女が一番にいさんのことを理解してくれているから…
 僕は?リゼンブールに家を建てる?にいさんとウィンリィの家の近くに?
 
 …無理だね。きっと耐えられない…
 幸せそうに笑うにいさんを見てはいられない
 だって、その幸せは、僕がにいさんに与えた物じゃないから…
 別の誰かの物だから…
 
 一緒にいる今でさえ、にいさんには苦悩しかあげられていない
 それでも、先のことを考えると僕は!
 
 …いつまでも、この鎧のままで…にいさんと一緒にいられるなら…
 
 それじゃぁ、にいさんがいつまでも幸せにはなれないって、わかっているのにね
 …だから、にいさん、そんなに急がないでよ…
 どうせ、いつかは離れて行かなくちゃいけないんだから、そんなに急がないで。もう少しゆっくり傍にいて…
 
 …体が無いのに、胸が痛む…
 
「どうした?アル。お前も、疲れたのか?」
 寝ぼけ眼で聞いてくる。…大好きだよ…
「ははは、僕の体は、疲れないよ…」
 でも、心は少し、疲れたのかもね…
「まってろ…もうすぐだから、もうすぐ…」
 うん、ごめんね、
 
「心身共に休ませてやれるからな。そしたら、一緒に寝ような?」
「!!!」
 
 いきなり僕の胸に、眠い顔をすり寄せてきたにいさん!
 可愛いすぎるよ!どうしよう、僕、どうにかなってしまいそう!!
 そっか、一緒に寝てくれるのか!!
 そうだよね。僕が離さなければいいんだ!にいさんの手を!
 体が戻っても、僕だけのにいさんにしてあげるから!!
 誰が手放すもんか!!どんなことしたって!ゆずらないから!!
 




前に寒い日バージョンがあったので、今度は暑い日バージョン。それにしても、うちの兄さんはへたれですね(滝涙)
落ちも一緒だし、そろそろ違うものを書きたい・・・