「今直してやっからな、アル」
「うん、」
 錬成の光が僕を取り囲んで、その光が消えた頃には僕の鎧が元に戻っていた。
「だいじょうぶか?」
「うん、バッチリだよ、ありがとう兄さん」
「ほほぅ、みごとなもんですな。」
「んじゃ、肩慣らしにいっちょやるか?」
「O.K、あ、でもその前に、今晩、二人っきりで話したいことがあるんだけど、いい?」
兄さんが隣にいる少佐を見上げた。
「久々に故郷に帰ってこられたのだ、つもる話もあるだろう。我が輩の方から、ロックベル殿に話を通しておこう」
「すまねぇ、少佐」
「よろしくお願いします。んじゃ、始めようか?兄さん」
「おうよ!」



「んで?話って、なんだよ。」
 今日からベットで寝られる僕のために兄さんがもらってきてくれたシーツを僕が整えていた時、待ちきれなかったのか、兄さんから切り出した。
「うん。まずは、体を治してくれてありがとう。」
「なんだよ、いまさらだろ?」
「うん、でもね、それはそれとして、僕はまだ兄さんのことを許していないから、」
 うっ、と兄さんが何も言えずに声を詰まらした。

 この体で、表情もないから、口に出して言わないと周りの人には僕の感情なんかまるで解らないだろうけど、たぶん兄さんには僕の機嫌が悪いことくらい気づいていたみたい。だからきっと兄さんも話がしたいと思っていたはずだ。
「兄さんは、あの時、僕を捨てようとしたよね。」
 僕たちの体がスカーに壊されたとき
「な、何言ってんだ、あのときはっ!」
「もう、この体になってから4年がすぎたのになんの手がかりもないし、マルコーさんに信じられない話ばかり聞かされて、もう、疲れたんだ。だから、逃げようとした。」
「ちがうっ!あのままじゃ、二人とも殺されて…」
 兄さんが、僕から目を逸らした…


「実を言うと…あの時、あいつがおまえに見えたんだ…あいつの痛みがおまえの痛みに思えた。あいつの憎しみの狂気に満ちた目に、おまえの叫びが聞こえた。なら、俺があいつに殺されれば、その苦しみから少しでも解放されるんじゃないかって、楽になるんじゃないかって思っちまったんだ。」
「それで?殺された後、僕が第二のスカーになるんだね、」
「だ、だから、ごめん、悪かったよ!確かに、考えなしだった。」
「そうだね、兄さんがあの時死んでいたら、きっと僕の体は少佐に直してもらっていただろうね。」
「ア…ル?」
「そして、一番はじめにすることは、少佐も大佐もすべて皆殺しにするんだ。無理だなんて思わない、言わせない。なんとしても東方司令部を壊滅させる。軍の狗なんかにさせて、いいようにこき使って、あげくの果てにスカーの逆恨みの巻き添えで兄さんが殺されるなんて、許される事じゃないよ?でも、一番許せないのはこの僕だよね。僕なんかがこんな体で生きているから、兄さんを追いつめたんだ。だから、すぐになんか兄さんの後を追わせてやらない。一番苦しむ方法で僕は僕を殺すよ。」
「アルッ!!」
「僕がこんな体で生きているのは、兄さんがいてくれるからであって、こんななりで一人でなんか生きていれるわけない。考えてみなよ、肉体のない鎧が町中をうろうろしているんだよ。ホラーだよ。兄さんが作ってくれたんだ。なんて言ったところで、ばけものにかわりはないよ。無理だよ、一人で生きるなんて。」


 目を見開いたまま、兄さんは涙を流している。その泣き顔を見ても、僕の心は罪悪感も感じない・・・あの時、体と一緒に、僕の心の一部が壊れたのかもしれないよ。
「そんなに僕から逃れたかった?」
 何か言いたげに大きく口を開けたけど、兄さんはそのまま顔を大きく何度も振った。
「僕は、許さないから。僕から兄さんを奪おうとするものを。」
「アル、アルフォンス!!」
 大きな声で呼ばなくても聞こえているよ。
「それが、兄さん自身であっても、ね。」
「な、アル、や、」
 逃げないでよ、なんで逃げるの?
「アル、どうしたんだよ、」
「兄さんこそ、なんで逃げるの?」
 伸ばした手をすり抜けた。なんで、警戒するの?
 後ずさって、自分のベットにしりもちをついた。視線がどうやってそれを乗り越えようか、考えている。
「兄さんは、スカーからは逃げなかったのに、僕からは逃げるんだ。」
「あ、」
「あんなに、逃げてって、言ったのにっ!僕があんなに力一杯頼んだのにっ!!」
 衝撃とともに視界が塞がれる。
「どんな気持ちで叫んだか!わかりもしないで!!」
「ごめん、ごめんな、アル。」
「・・・許せないよ、とっても・・・とっても怖かったんだから・・・」
 ベットを足場に兄さんは僕の頭に飛びついてきたんだ。
 視界が兄さんでいっぱいになる。
「わかるよ、そん時の気持ち。お前は俺の頼みを聞いてくれたから、ここにいるんだもんな。俺が悪かった。だから・・・泣くな。」
 涙なんて流れないのに、兄さんは僕の頭を抱きしめて、目の下に唇を寄せた。
「お前に泣かれると、どうしていいかわかんねー」
 一生懸命顔をすりつけてくる。まるで子供みたいに。
「・・・もう、二度と・・僕から、離れないで・・・」
 ・・・僕を捨てないで・・・
「あぁ、絶対、約束する。」
 額を僕の頬にくっつけて約束してくれる。
「・・抱きしめてもいい?」
「俺はもうしてる。」
 兄さんにそっと腕を回すと、つま先立ちしていた足先が浮き上がる。
「・・・誰よりも、愛してる。」

「・・・うん・・・」
「・・・兄弟としてじゃなくて・・・だよ?」
「・・・ああ、」

「・・いいの?」
「わかってる。・・・顔、あげろよ。」
 顔を兄さんに向けたとたん、鎧の口に兄さんが口づけをくれた。
「こんな意味だろ?」
「・・・うん、でも、鎧だよ、」
「何いってんだ、アルはアルだろ?」
「うん!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・僕のものだよ、兄さん・・・・・・・・・・・








許されざる罪

本当は途中までアルを暴走させようとかんがえておりました。が、とんでもなく暴走しそうなので自主規制をかけました。もし、暴走アルが見たい、見てやろう!!という方がいらっしゃったら、メールでお知らせ下さい。
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