何故ドラマ?
ドラマを演じることが「癒し」につながるのは、声や感情を出したり、心の中を表現することで心身の浄化的作用が起こるからであると考えられます。現実の自分を直接、表出・表現できない場合でも「役」というものの後ろに隠れると(あるいは役を手段として使うと)、それが可能になる。パラドックスのようですが、これがドラマセラピーの基本的で重要なセオリーであり、魅力です。
またドラマには、その体験を通して現実を味わうことができ、また希望を叶えた満足感などが、現実の体験と変わらない効果を持たせる力があります。
このような、「ドラマ(劇)」というものが本来持つ、いわば「癒しの力」を意図的に用いて、心を癒したり、あるいは内面的な成長を促したりしようというのが、ドラマセラピーです。
ドラマセラピーの効用
(ほんの一部の効用です)
1.感情を吐き出して、心の癒し・カタルシスを得てもらう
これは、普段出せずに抑えていた感情(特に怒り・不満・悲しみなどのネガティブなもの)や他人に面と向かって言えないことをドラマの中で表出させることで、心をスッキリさせてもらおうということです。また自分でない別の人になる楽しさもあり、「素」の自分では表現できないことを役になることで表出することができるのです。
これをリラックスした雰囲気の中で、できる限り「楽しみながら」行なうということが大切ですね。その有効な方法の一つがドラマセラピーなのです。
またドラマというバーチャルリアリティーの中で現実生活で出来ないこと(あるいは出来なかったこと)を実現し、気持ちが晴れたり、心が癒されて、それが実際の現実生活に良い影響を及ぼすことがあります。実際に自分の身体を使い、せりふを喋って演じることで具現化させるドラマは、時に強力な効果をもたらします。現実には物理的に不可能なこと(例えば、もう二度と会えない人にどうしても言いたかったことがある、とか、時間を戻すことができたなら、こうしたかった、など)をドラマの中で「実現」させることで、長年のわだかまりがなくなり、心が癒されていく人もいます。またビジネスに応用すれば、過去の仕事の失敗の原因を探ったり、未来の仕事の「リハーサル」を行なうこともできます。

2.自己表現力を高める
心が癒されれば、癒されるほど、人は心が開かれ、表現能力も増すと思います。自己表現力を高めたい人は、先ず自分の心を癒すことにトライして見てください。もちろん問題の大小もあるので、一朝一夕で癒されるのは難しいこともありますが、その糸口を布石したいと思っています。
今まで年齢、職業、状況、目的などが違うさまざまな対象にドラマセラピーのセッションを実践してきて、心の癒しと自己表現力が連動していることを、強く感じてきました。癒されると表現することが楽になり、表現できると癒される、という相互作用が起きるのです。

3.役割トレーニング
演劇においてディレクターが、俳優がうまく役をこなせるように指導するように、一般の人が現実の人生の中でより良い役ができるように指導することは、ドラマセラピストの大事な仕事の一つです。考えてみれば私たちは、皆いくつもの役を持っており、いわば実人生の中で「演じて」生きているんですよね。しかし、その中でも不得意の役があったり、しなければならないのに出来ない役があって苦しんだりすることもあるでしょう。俳優は、例えば自分の本来の性格とまったく違う役を演じなければならないとき、一生懸命「役作り」をし、練習して本番に臨みます。ドラマセラピーにおいてもそれとまったく同じで、現実の今の自分と違う性格を身につけたい、苦手な役をこなしたい、というときは、それを身につけるべく練習しましょう。これが実生活の為の役割トレーニングです。
私のスタンス

芸術療法の一つであるドラマセラピー。もともと「療法」ではありますが、治療現場だけでなく、その他の多くの場でも応用が可能です。私が属する全米ドラマセラピー学会―The National Association for Drama Therapy (http://www.nadt.org/)のドラマセラピストたちの活動領域(対象者)は、医療(慢性精神病、摂食障害、アルコール・薬物依存症、虐待、心的外傷後ストレス性障害、ターミナルケア等)、福祉(身体的・あるいは発達障害等、認知症、グリーフケア、犯罪者等)、教育などさまざまです。
私は、これを日本に持ち帰り、病気の治療としてのドラマセラピーではなく、一般の方々の自己啓発や教育を目的として大学、企業、生涯学習の場など、様々なセッティングで実践しています。参加者にまず楽しんでもらい、結果として自己表現力が向上したり、ストレスが軽減されたり、また問題が解決に向かうなど、日々の生活の向上につなげてもらいたいというスタンスで、行なってきました。
さらに、治療も行っています。(依存症・被虐待領域など)

現代は、特に病気というわけではないけれど、人間関係や仕事のストレスなどがたまり、気分や身体の調子がすぐれない、「癒されたい」、という人が多い時代です。セッションの場がが、他人を受け入れ、また自分も受け入れられるところ、心と体を(時には頭も!)ほぐすところ――
ここで得た良いエネルギーを持って、またそれぞれの生活の場に帰っていく「癒しの場」にできたら、と思っています。ここでは、(言いたい人は)何を言ってもOK、(言いたくなければ/やりたくなければ)何をパスしてもOK、という基本的なルールがありますので、恥ずかしがりやの人もそうでない人も安心して下さい。「まったく初めて、演じることなんてしたことない」という人も大丈夫ですよ。心身をウォームアップしながら自然に入っていきますから、気がついたら演じてた、ということになるかもしれません(笑)。いずれにしても、仲間と一緒に体や心を動かすので、親密性が高まります。良い友人を作ることのできる場と考えていただいてもよいでしょう。楽しく進めていきたいと思っています。人間と人間が関わることの喜びを体験して下さい!

どんな人にお薦め?
・ 仕事や日常生活に生かすために、演技を通して自分を磨いてみたい人
・ 自分を見つめ、自他に対する「気づき」を通して内面的な体験を深めたい人
・ 今の自分にない「役」や「性格」を創造する(掘り起こす)ためのトレーニングまたは現実生活に必要な「リハーサル」をしたい人
・ 人間関係向上のための糸口を見つけたい人
・ 悩みや問題の解決に向けて、新しい視点がほしい人
・ つらい気持ち、イヤな感情を吐き出してすっきりしたい人
・ 表現力・コミュニケーション力・創造力を高めたい人
・ 普段の日常生活から心身ともに離れる時間・空間を持ちたい人
・ 共感を分かち合える友人を創りたい人
・ 自分を表現できる場がほしい人
・ 健康のため、身体(発声や軽いストレッチなど)や心(感情表現、役作りなど)を動かしたい人
・ 「演じて」みたい(みたかった)のに場所や機会がない人
・ 趣味や生涯学習の一環として
などなど…


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ドラマセラピーでは、基本的にドラマを(発表目的でなく)ツールとして使うだけなので、じょうず/へた、正しい/間違い、経験の有無などは全然関係ありません!product(できあがったもの) よりプロセスが大切なのです。自信を持って、自由にやってみて下さいね。そして演じること自体を充分に楽しんで下さい!
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