衝動的に殴ってしまったことを後悔はしていないが、完全な失敗であることに、ガイは気がついた。

「・・・もう、決めたんだっ・・・!」

 血を吐くような懇願が含まれた声で叫ぶルークの瞳には、喪失の焦りが浮かんでいた。
 わがままだの言われた時から、人の命を大切にするやつだった。
 人を殺めることを拒絶し、悩んできた幼いこどもは、だから人の命の重さと、死を理解している。

 それでも、自分の命を投げ出そうとするなんて。
 そう思っての憤りがガイを動かしたのだったが、それは同時に、ルークが必死になって失うまいと抱えるものが、命の重さよりも、死よりも、仲間の止める声よりも、はるかにはるかに、ルークにとって大事なものだということを証明する結果になってしまった。

 ガイもジェイドもアニスもナタリアもティアも、ルークにとっては大事な仲間だ。
 しかし、同列の仲間という位置でしかない。

 いつの頃からか、ルークの目は違うものを追い、焦がれ、取り縋るようになっていた。
 拒絶されても、何度も何度も。

 ルークの存在意義を証明できるものは、師であったヴァンだけだと思っていた。
 しかし、いつのまにかルークは・・・こだわり続けた存在意義すら小さなものになるほどに、『被験者』という存在に執着していったのだ。


 

 それは、まるで信仰に似ていた。

 

 

 

 


15.

 

 

 

 

 

「誰だ、だって?」

 ジェイドの言葉を反芻する彼の目は挑むようにして、自分の左手を掴むジェイドを見ている。

「俺は、ルークでもありアッシュでもある存在だ、と初めに言っただろう?」
「ええ。それに対して、私たちは・・・貴方が『アッシュ』であるという結論を出してしまった。」
 間違いでした、とジェイドは自分の非を認めた。
「大爆発という現象に拘るあまり、私は事実を見誤りました。本音を言えば、私は心の中で大爆発が起こらないことを願ってもした。しかし、コンタミネーション現象を止めることはできない。・・・そんな心情でいたから、あえて貴方が『アッシュ』だという結論を出してしまったんでしょう。」
 心というのはいくつになっても、自分の計算とは外れるものですねぇ、とジェイドは言った。
「間違っちゃいないだろう。」
 肩を竦めるように、彼が言う。
「あんたたちが言うように、俺はアッシュ、なんだろうよ。確かにルークの記憶を持っているが。」
「ええ。しかし・・・ユリアの譜歌を知っていたなら、話が違います。」
「?ルークの記憶の中に譜歌があったとして、それのどこか不思議なんだ?」
「不思議なのではありません。それによって・・・違う可能性がでてきた、という話をしているのです。」
 彼は眉を顰めたが、それは被験者であるほうの人物とそっくりの表情だった。
 話の展開についていけず、全員が不思議な顔をして、ジェイドの話の行方に耳を傾ける。
 ジェイドは全員に言い含めるようにして、いいですか、と言った。

「ルークは確かに譜歌を知っていました。2年前、ローレライを解放する時にも、すでに知っていたんです。」

 ヴァンと同じようにです、とジェイドが続けたのを聞いて、眉間に皺を寄せたのは、彼だけではなかった。
「ごめんなさい・・・わたくし、なにがなんだか。」
「俺にもわからない。説明してくれ、ジェイド。」
「思い出して欲しいのですが。」
 ジェイドは、一同を見回した。
「アブソーブゲートで、我々は一度ヴァンを倒しています。そうでしたよね?」
 そのことは、今でも全員、強烈に覚えている。
 今更、勘違いをしようもない事実に一同が頷く。
「・・・なのに、その後もヴァンは生きていた。それは、どうしてか。」
「ローレライを体内に取り込んだからでしょ?それによって地殻で体が乖離する前に生き延びて、戻ってきたんじゃなかったっけ?」
 そうです、とジェイドはアニスの言葉を肯定した。
「では、どうしてヴァンはローレライを捕らえることができたのでしょうね。」
「そうか!」
 合点がいったというように、ガイがぱちんと指を鳴らした。
「"譜歌"を歌ったからだ!」

 正解です、というようにジェイドはにこりと笑った。
「もちろん、ヴァンが我々に語った話に過ぎませんが、たぶん嘘ではなかったのでしょう。地殻に落ちて乖離しようという時、ヴァンはユリアの譜歌を歌った。それによってローレライが反応し、結果ヴァンはローレライ取り込んで再生した。そして・・・ルークも2年前、同じユリアの譜歌を知っていた。」
「つまりは・・・。」
「ヴァンと違って、ローレライを解放しようという時に、同じように地殻に潜っていったルークの体は・・・すでに乖離を起こしていました。彼は最期の時をすでに覚悟をしていたし、被験者を失い、その時にどのような心情でいたのかは計り知れません。けれど、もしかしたら"譜歌"を口ずさんだかもしれない。」
 ジェイドはそこで、赤い髪の彼を見た。

 

 

「・・・違いますか?ルーク。」

 

 


「・・違う。」
 赤毛の彼が、ジェイドから逃れるように一歩さがった。
 すでにジェイドは、彼の左手を離していたが、別段、捕まえ直す必要はなさそうだった。
「どこが、違いますか?」
「見てきたようなことを・・・。」
「見てはいませんが、そのようなことだったのではないかと推測はできます。貴方はローレライを解放する時、譜歌を歌い、その歌声にローレライが反応した。ヴァンを再生したように、乖離しつつあった貴方の体を、同位体であるローレライが再生するなど容易いことでしょう。」
 それに対して一歩さがり、彼は、違う、と繰り返した。
「お、俺は・・・。」
 見る者に罪悪感を与えるほど、なにかに怯え、驚いた時のひどく幼い表情で、ごくん、と息を飲み、彼が叫ぶ。
「俺は、ルークじゃない・・っ!」

 もう、その言葉で決定だった。
 高く通る少年の声も、大きく見開いた目のあどけなさも、彼の被験者のものではなかった。
 

「ルーク・・!?ルークでしたの・・!?」
「ルーク!」

「違う、違う!俺はルークじゃない!俺は・・・。」
 赤毛の長い髪を掻き毟るようにして、頭を振り続ける彼に、どうして拒絶なさいますの?とナタリアが心配そうに手を伸ばす。
 その手を振り払い、ガイの手を振り落とし、まるで追い詰められているかのように、彼は、自分はルークではない、と繰り返した。

「なんで?ルークでしょ?どうして認めないのよ!」
 その胸元に飛び込むようにして入り込んだアニスが、彼の顔を見上げながら叫んだ。
「・・・私、本当は最初に教会で見たとき・・・疑ってた。大佐から大爆発のことを聞いていたからありえないって思って。でも、あの時・・私には、ルークにしか見えなかったんだもん。」
 やっぱり間違ってなかったんだ、とアニスは言った。

 あの時、というのは、教会でハレルヤと斬り合いになった時のことだろう。
 その時、片方がアッシュだったと証言したのは、アニスだった。
 しかし、その時すでに、アニスは自分が目撃したのは、実はルークではないかと疑っていたということだ。

「本当は貴方自身、とっくに気がついていたのではないですか?」
 でなければ、この拒絶反応は説明がつかない。
 ジェイドの言葉に、赤毛の頭を抱えていた彼は、だったら!と叫ぶように反論をした。
「もし俺がルークだっていうなら、なんでアッシュの記憶があるんだよ?おかしいだろっ!被験者がレプリカの記憶を持ってひとつになるのが大爆発なんだろ?反対じゃないか!」
「それも、仮説があります。けれど・・・貴方はルークでなければならない。そうでなければ、ハレルヤのことも説明がつかない。」
「ハレルヤ?」
「えぇ?ハレルヤ様が関わってるんですか?」
 もちろんですよ、とジェイドが言った。

 

 

 


「ハレルヤの正体は・・・おそらくアッシュでしょう。」

 

 

 言葉の爆弾というものがあったなら、それはその場に落ちたに相応しい反応を、皆はした。
「ハハ、ハレルヤ様が!?」
「・・・アッシュ!?」
「おいおい、なんでそうなるんだよ!?」
 銘々の困惑と驚愕を余所に、発言者は、なにか可笑しなことがありますか?としれっとしている。


「いや、ちょっと待て・・・。」
 色々な事実が判明して、ついていけないというようにガイは、手をひらひらさせた。
「ハレルヤってのは・・・レプリカなんだろう?アッシュは人間じゃないか!」
「確かに色々な人が、ハレルヤがレプリカだと話しているのを聞いてますが、実際にレプリカだったという証拠はありません。ご存知の通り、レプリカは死ななければ、本当にレプリカであるかどうかは目視できません。レプリカであるかどうか調べのつく装置もありますが・・・導師候補だったハレルヤにそこまでしたかどうかは、疑問ですね。」
「まだ導師候補になっていない時分に、それこそ教会に来た時にでも調べたかもしれないじゃないか。」
 なんだかジェイドの都合の良い解釈にも聞こえる説明に、ガイが言い返すと、
「それももっともですね。では、この話は保留しましょう。」
 と聞き流される。
「しかし・・・確信はしています。きっとハレルヤはレプリカではない。」
 ジェイドは、カチリと眼鏡を直した。
 その奥には、いつもの思案をしている時のものではなく、人を説得しようというある意味での臨戦態勢に入った瞳が光っていた。
 その目がすっと、未だに俯いて唇を噛み締めている彼に注がれる。

「・・・ずっと、不思議に思っていたのです。なぜハレルヤの出現が今なのか。ローレライの鍵はなぜローレライの完全同位体のルークの手から消えたのか。貴方の記憶にはアムラジェはいないというのに、なぜアムラジェは貴方のことを知っていたのか。そして・・・超振動。」
 そのすべてはひとつの答えを示しています、とジェイドは言った。
「貴方とアッシュは・・・きっと一緒に帰還していたのですよ。いえ、もしかしたら、わずかにルーク、貴方の方が早かったのかもしれない。帰還した貴方はローレライの剣を持っていた。それがどうして貴方の手にあったのかは謎ですが、しかし、ほぼ時を同じくしてアッシュが帰還したのなら・・・貴方からローレライの剣が消えたのは道理です。ローレライの剣は元の持ち主に・・・ローレライから直接授けられたアッシュに戻っただけのことなのですよ。なにも新しいローレライの化身などというやっかいな存在を持ち出さなくても、それならば説得力がある。」
 ジェイドはいったん、言葉を切った。
「アムラジェも同様です。彼女がどのような経緯でアッシュと行動を共にしだしたのかは謎ですが・・・彼女はアッシュの顔を初めから知っていたのですよ。他ならぬハレルヤなのですから。アムラジェはアッシュにではなく、同じ顔をした貴方という存在に対して動揺していたのです。」
 赤毛の彼は、まるですべての言葉を拒否するように、両手で耳を塞いでいたが、ジェイドの言葉が聞こえていたのは間違いなかった。
 一同は、ジェイドが言葉を切ったのと同時に沈黙に入った。
 それは、それぞれの渦巻く胸中によるものに他ならなかったが、それでも頭を抱える彼に配慮をして、あえて口を開きはしなかった。
 まるで彼が出す答えを待っているかのように。


 やがて両耳を塞いでいた彼の手は、俯いた白い面を覆うものに変わった。
 しばらくして、その奥から、唸り声のような泣き声のような掠れた声が、しぼり出される。
「・・・アッシュ、は・・・。」
 彼のお腹あたりに纏わりついていたアニスが顔をあげ、はい、とジェイドが答えると、彼は言葉を選ぶように、ゆっくりと言った。
「・・・アッシュは・・・生きている、んだな?」
 たぶん、とジェイドが答える。
 それに対する答えは、そっか、というそっけない一言だけで、またしばらくの沈黙が訪れる。

 やがて、彼は手の上から顔をあげた。
 その目は、すっきりと緑色に澄んでいて、ビー玉のように丸く、縁取るまつげは赤く、それだけでいかに彼が高貴なものであるかが伺えるだけでなく、この世にふたつとなる純然なる魂が、そこに宿っていることを証明していた。
 思い出せば、いつでも彼という存在は、白く光る太陽のようなイメージで、それは目の当たりにしている今でも、変わりはない。
 
 ああ、ルークだ、と誰もが思った。
 
 今まで、アッシュと思いこんでいたことが信じられないくらい、彼は、彼らのルークに間違いがなかった。

 

 

 

 

 


 太陽が傾きかけた頃、気を失ったままのティアは、目を覚ました。
 ふと、自分がアルビオールの座席に眠らされていたことに気がつき、意識をなくす前のことを思い出した。
 自分が無事でいるということは、たぶん全員が無事なのだろう。
 体が重くおっくうで、ティアは彼女にはめずらしく、すこしぼーっとした状態でそんな事を考えていると、ふわっと扉の開閉する時の空気の流れを感じて、そちらに顔を向ける。

「あ。」

 様子を見に来た、という体の彼が顔を覗かせて、びっくりしたように自分を見ているその顔に、ティアは目をぱちぱちと瞬かせた。
「・・・あなた・・・。」
「・・・様子を見にきたんだけど・・・大丈夫か?」
 その声で、他の仲間たちが彼を認識したように、ティアも彼を間違えることはなかった。
「・・ルーク?」
「・・・あ、うん。」
 貴方だったの?と驚いたような顔をしているティアに、バツが悪そうに頬を掻きながら、ルークが近づく。
「うん・・・ごめん、ティア。」
「どうして謝るの?」
「嘘をついていた訳じゃないんだ・・・俺、アッシュの記憶があって。それで、自分がアッシュだと本気で思ってたんだ。」
「・・・そう。」
 ティアは言い、寂しそうに目を逸らす。
「ティア?」
 予想していたどれとも違う反応に、ルークは首を傾げてティアの顔を覗きこむ。
 その髪が肩からさらりと流れて、目の前にカーテンのように広がった赤い髪に、ティアは顔を曇らせた。
 ルークの長い髪を見るのは久し振りだ。
 なぜならば彼は、とある理由から、自ら髪を切ったのだから。
「・・・もしかしたら・・・貴方は私たちのところに戻りたくなかったのかもしれないわね。」
「え?」
 意外なことを言われ、ルークは目を丸くする。
「だって、そうでしょう?」
 ティアは、アルビオールの座席から立ち上がると、ルークから顔を背けるようにして、窓に向かって立った。
 頭の上を?マークでいっぱいにしたルークに、その状態で話しかける。
「私たちが貴方にしてきたことを・・・私、忘れてないわ。」

 この2年の間、旅のひとつひとつを思い出しては、何度、誰も受け取らない謝罪の言葉を口にしただろう。
 閉じ込められてきた7歳児に対しての思いやりのなさや、自分の無知が引き起こしたことを棚にあげて傷つけたことや、兄のこと。
 そして。
 一度は手ひどく突き放したこと。
 世界を引き換えに、命を差し出せと強要したこと。
 
 あの頃は余裕がなかったなんて言い訳は聞かない。
 どれをとっても、ルークに恨まれても憎まれても仕方のないことだ。


「・・・だから、貴方が無意識に私たちを拒絶したとしても、私たちには貴方を責める権利もないわ。当然だもの。」
 ティアは言い、その時、まるで自分が石のように冷たく固くなってしまったかのように感じた。
 その原因は、強張っている腕のせいだと気がつき、ゆっくりとそこをさする。
 その手の上から一回り大きな手が重ねられ、次には力を込めて引かれた。
「違うんだっ、ティア!」
 くるん、とルークの方を向かされたティアは、焦ったようなルークの大声に驚いて目を見開いた。
「そうじゃないんだっ!」
 ルークに対して褒められたことばかりの仲間ではなかったかもしれない。
 しかし、それでもルークは、彼らを心から愛していたし、それは今でも変わらない。

 ルークが、自分がアッシュだと思い込んでいた時にも。
 どんどんと元の自分に戻ってしまったほどに。


「俺・・・俺の代わりに、アッシュが死んだのかと思って・・・。」
「アッシュが?」
 そこでルークが、ジェイドが『ハレルヤはアッシュ』ではないかと言っていたと説明する。
「俺には・・・アッシュの記憶があるんだ。」
「・・そうね。」
「どうしてこうなったかは分からないけど・・・でも、俺、アッシュの記憶を見て、あいつの過去の様々な日々を見て、それで・・・っ!」
 感極まったようにルークの言葉はそこで途切れた。
 
 旅をしていた頃、毎回アッシュに罵られていたことを思い出す。
 時にはその事に腹も立てたし、悲しく思うこともあった。なによりも、申し訳なくって申し訳なくって。
 けれど、ルークのそんな感情なんて、まるで砂漠の一滴の水ほどもアッシュの心を潤せないほど、アッシュの世界は灰色に乾ききっていた。
 アッシュの世界は常に真っ赤だった。
 絶望の赤、怒りの赤、喪失感の赤、孤独の赤だった。
 ひとりの人間がこんなにも自分を呪えるのかと思うほど、アッシュは自分を嫌悪していたし、自分を一切愛さない世界に絶望を感じながらも、密やかに愛してもいた。
 そして、身を切り刻む痛みと引き換えにした、それが、アッシュの強さだった。


「・・・今度こそ、アッシュに世界を返してやりたかった。」
 今度こそ、正当にアッシュは世界に愛されて良い。
 殉教者のように世界に身を捧げたアッシュには、それだけの権利も価値もある。
 なのに。
「・・・なのに、あいつが死ぬなんて、絶対に間違っている。」
 しかも、その原因はレプリカが生まれたこと・・・つまりは、自分かもしれない。
 ルークは無意識にそのことに気がつき、そして。

 

 ルークでいることを拒絶した。

 

 
 『アッシュ』と『ルーク』が混じった存在なら良かった。
 もしくは『ルーク』の記憶を持った『アッシュ』でも。

 けれど、『ルーク』は駄目だった。

 レプリカである『ルーク』が被験者の『アッシュ』を取り込んで生き延びたなど。

 

 


 ありえない。

 

 


 ジェイドの指摘した通り、ルークは早い段階から、自分が『ルーク』であることに気がついていた。
 利き手は左手であったし、なによりも・・・魂には、それぞれの癖がある。
 その癖は、どちらの記憶を並べてみて、間違いなく『ルーク』のものに近かった。

 だから、無意識に自分が『ルーク』であることを、封印した。

 しかし、気持ちは正直で。
 仲間といると、どんどんとルークは嘘をつけなくなっていった。
 勝手に、心が昔に戻っていく。
 昔を懐かしみ・・・仲間を愛しく思うのを止められない。

 

 

 ルークの独白を、ティアは黙ってきいていた。
 なんの意味もない慰めの言葉もかけなかったし、なによりも気持ちが分かるなどといういい加減な相槌は、ルークを傷つけるだけだ。
 だから、ルークが自分の気持ちを吐露し、少しだけ楽になることを、そっと見守っていた。

「・・・そう。ハレルヤ様が、アッシュ・・・。」
「・・・どう思う?」
 様子を伺うように、ルークがティアに聞くと、ティアは、そうね、とほっと息をつき、
「納得できる気がするわ。」
 と答えた。
「ほ、本当かっ!?」
「ええ・・・。」
 
 以前、ハレルヤがルークではないか、と議論になった時、決め手に欠けるのは十分にわかっていたが・・・なによりも違和感を感じた。
 ハレルヤは、アムラジェの影に隠れて顔さえも見えなかったが、それでも独特の雰囲気を纏っていたし、なによりも導師にと選ばれるほどの威圧感というか、威厳というか・・・目には見えない、凛としたなにかを、布越しにでも感じることができる人物だった。
 あれが記憶もなにもなくしたアッシュだというのなら、ふと、パズルのピースが嵌るような納得感がある。


「私も大佐の意見に賛成よ。」
 ティアは言った。
「だから、安心してルーク。貴方は、アッシュを殺してなんていないわ。」
「・・・・・。」

 きっぱりと宣言されるかのようにティアに言われ、ルークは頷く。
 そして、今度はアルビオールの窓に顔を向けるのは、ルークの番だった。

 ルークの凝り固まった心は氷解し、ルークはティアの言葉を通して世界の慈愛に触れ、素直にほろほろと、涙をこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ハレルヤはルークではないと言いましたが、アッシュではない、とは一言も言っていません。(ヒキョーモノ)

 ルークが生き延びる方法は、ずっと前から考えていたものです。
 実は、偶然にも某有名サイトさまのご本と同じ解釈だったので、悩んだのですが、だからと言って他に思いつかなかったし。
 

(’10 9.17)